第42話 凄腕カメラガール桃花
「悪い、途中から聞き逃した。いっそのことなんだって?」
「な、なんでもないしー?」
「いや、なんか言いかけてただろ?」
「た、たいしたことじゃないから~!」
「そうか、了解。そうだ、せっかくだし俺もパフェを食べてるところを撮ってもらってもいいか?」
勝手知ったる男友達ならまだしも、まだ関係性の浅い桃花を相手に、嫌がることをあまり深堀りして聞き出そうとするのはよくない。
そう判断した俺はこの話は流して、別の話題を提案する。
「え、撮ってもいいの?」
「いや、俺がそれを聞いてるんだけど……?」
「あ、そ、そうだよね! もちろんいいよ。映えマイスターのわたしが、いっぱい撮って、最高に映え映えの写真を選び抜いてあげるから」
「そこまでこだわりないし、適当に2,3枚撮ってくれたらいいぞ? 俺も友達に送るだけだから」
「ううん! 最高の一枚を撮ってみせるから! そのためにも、いっぱい撮るからねっ? これはそのために必要なことであって、決してわたしがいっぱい写真をゲットしようとか、そういう個人的な願望じゃないんだからねっ?」
俄然やる気を見せる桃花。
気合を入れてやってくれるというのなら、俺に断る理由はない。
「じゃあ、よろしく頼むな。桃花の腕前を楽しみにしてる」
「任せて~♪」
桃花が早速、スマホで俺を撮影し始めた。
「うーん、ちょっと腕の角度が甘いかなぁ? ねぇねぇ、肘を少し上げてくれる?」
「こうか?」
「そうそう、いい感じ~! でも、うーん。正面もいいけど、斜め45度も悪くないんだよねぇ。とりま全部撮っちゃお?」
「了解」
「ねぇねぇ、前髪ちょっと整えてもいい?」
「構わないぞ」
「わっ、髪の毛さらさら! すごーい!」
「ははっ、なんかこそばゆいな」
「我慢我慢♪ うん、さらに良くなったし♪ あとは表情だよね」
「笑えばいいか?」
「笑顔もいいけど、クールなのもありかも? うん、これもどっちも撮っちゃうね。これも必要なことだからっ!」
などと終始ハイテンションなカメラウーマン桃花からあれこれ指示を受けながらポーズを取るのは、周囲の目も合って少し気恥ずかしくもあったのだが。
他でもない俺のためにやってくれているのだから、それほど気にはならなかった。
なーに、せいぜいバカップルがワチャついてるな、とかなんとか思われる程度だ。
そんなものはすぐに忘れることだろうよ。
そんな風にして、俺たちは放課後パフェを満喫したのだった。
ちなみに桃花からは1枚ではなく、選び抜かれた数枚の画像が送られてきたんだが。
そのどれもが、とてつもなくカッコよく映っていた。
「おお、すごい……」
俺はミスコンを総なめにした母さんのビジュアルがそれなりに遺伝しているのもあって、元も割といい方なんだが。
桃花の撮った写真に写る俺は、その外見の良さを100%、いや120%引き出された、それはそれは映える写真になっていた。
もちろん七五三などのイベントでは、獅童家お抱えのプロのカメラマンに撮ってもらうことも多かった俺である。
技術でいえばもちろんプロの方が桃花よりも上手い。
それは当然。
けどなんていうのかな。
桃花の写真は俺への理解みたいなものが強く感じられるのだ。
見た瞬間に心が強く揺さぶられる。
それが生まれ持ってのカメラの才能なのか、はたまた映え写真を撮りたい気持ちがなせる技なのか。
ともあれ桃花の撮った写真は実に素晴らしい出来栄えだった。
「上手に撮れたから、大事にしてね?」
「ああ、一生大事にするよ」
「もぅ、一生は大げさだしー」
「大げさなもんか。それくらいいい写真だって俺は思った。だから大切にする」
あとで鹿島さんに頼んで、現像に出してもらおう。
「うん……ありがと……。って、正道くんはそういうこと言っちゃう人だもんねー」
「別に俺でなくとも、いいものを褒めるのは当然だし普通だろ?」
「そうだけど、そうじゃなくて〜!」
「じゃあどういう意味だよ?」
「それは自分で考えてくださ〜い♪」
「なんだそりゃ?」
妙に嬉しそうな桃花の意図が掴めず、俺は小さく肩をすくめたのだった。
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