第41話「さすがはライオネル・グループの御曹司、思ってたのの100倍くらいガチ寄りのガチだよぉ……」
桃花は俺に深く感謝をしている。
感謝を好意と勘違いするのはよくある話だ。
その深い感謝が自分でも気づかないうちに深い好意にすり替わる。
俺はそんな感情の誤認につけ込みたくはなかった。
「でもせっかくの映えパフェだから、食べるのがちょっともったいないかもー、っていいながら、食べちゃってるんだけどね。あはっ♪」
そう言った桃花は、デフォルメのクマさんクリームをまだ残している。
「これだけ可愛いと食べるのは躊躇するよな」
「だよね。可愛すぎるもんね」
俺はもう食べてしまったが、俺ですら食べる時にいくばくかの申し訳なさを感じてしまった。
可愛い物好きな女の子ならなおさらだろう。
「でもま、どこまで行っても食べ物だからな。映えパフェもきっと、桃花に美味しく食べてもらいたがっているさ」
「だよねっ♪ じゃあこのクリームクマさんも食べちゃおうっと!」
「ああ、食べちゃおうぜ」
桃花がデフォルメクマさんをスプーンですくってパクリと行こうとして、その動きがピタリと止まる。
「あ、そうだ! ねぇねぇ、食べてるところを写真に撮ってもらえないかな?」
「いいぞ。またラインで共有するのか?」
「うん、そーだよー」
「スマホはどっちの使う? 桃花のなら送る手間がいらないけど」
「正道くんのでいいよ。撮ったらラインで送ってー」
「了解。でもいいのか?」
「んー? なにがー?」
「また友だちから変に冷やかされるんじゃないか?」
俺がポケットからスマホを取り出しながら尋ねると、
「しょーがないけどー、甘んじて受け入れるしかないよねー」
笑顔で言いながら、桃花はクマさんとマンゴーを一緒に乗せた映え映えなスプーンを口元に持ってきた。
そのままパクリと咥えるのかと思ったら、そこでピタリと静止した桃花はキラリンとウインクを飛ばしてくる。
なるほど、このいかにも食べる直前のシーンを撮れと言うことか。
「何枚か続けて撮るな。その中から桃花が良いのを選んでくれ」
「うん、わかった」
「ただし腕は期待しないでくれよな? あんまりこういう機会はなかったからさ」
「とかなんとか言って、写真撮影も上手なんでしょ?」
「一応、カメラの専門家に構図の切り取り方とか、視線誘導の技術とか、そういう撮影の基礎を習ったことはある。できるかどうかは別としてだけど」
「さすがはライオネル・グループの御曹司、思ってたのの100倍くらいガチ寄りのガチだよぉ……」
なんて会話をしてから、ポーズを取ったまま返事をした桃花をフレームに収める。
スマホのカメラ越しでもその可愛さは色褪せることはない。
パフェを食べようとする超絶美少女の姿を何枚か撮影をし、桃花にラインで共有する。
それをさらに友だちと共有する桃花。
「わっ、いきなり『誰に撮ってもらったの?』だって。もぅ、わたしは映えパフェをみんなに見せたいだけなのにー」
「だから言ったじゃないか」
「また明日、学校で冷やかされちゃうかも。ごめんね、正道くん」
「俺は別に構わないよ。むしろ役得か?」
「そ、そう? 嫌じゃない?」
「彼女持ちでもなければ、桃花の相方男子と噂されて嫌な気分になる男子はいないさ」
そして俺に彼女はいない。
「う、うん……。あ、あのさ、だったらいっそのことわたしたち、付き合っちゃわない――」
桃花が急に小声になりながら、何事かを言い始めたところで、
「ふるーちゅぱふぇ、おいち~!」
近くにいた小さな子供が、お母さんに満面の笑みとともに大きな声で喜びの感想を言って、それが桃花の声に重なってかき消されてしまった。
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