第40話 映えパフェを食べる桃花をパシャリ
「それで友だちからラインで反応はあったのか? あのクマはなかなかの可愛さだから、盛り上がってそうだけど」
多分男子でも盛り上がる。
なんなら悪ノリして今から食べに来たりするだろう。
それくらいによくできたパフェだった。
「あったけどー……」
しかし桃花は言葉を濁しながら、俺をジッと見つめてきた。
「なんだよ?」
「あったんだけどね? また正道くんとのことで冷やかしてくるんだよねー。デートじゃないって言ってるのにね? これじゃあ既成事実になっちゃうよ、もう。困っちゃうな〜」
パフェの画像に対してコイバナっぽい反応があったらしく、桃花が苦笑する。
だが『困っちゃうな〜』とか言っているわりに、なんだか声が弾んでいるような?
ああ、あれか。
自分がネタにされているとはいえ、友だちとコイバナで盛り上がるのはなんだかんだで楽しいんだろうな。
友だちと一緒に何かをするのは楽しい。当たり前だ。
なんなら今の俺がそうだ。
パフェの写真を撮る桃花を見ているだけで楽しいのだから。
「ははっ、クラスのみんなにも困ったもんだ」
だから俺は笑顔で同意した。
ここは勘違いされないための対策がどうのこうの、マジレスをする場面ではなく、友だちと一緒に盛り上がるシーンだろう?
「むー……!」
するとなぜか桃花が不満そうな顔をした。
「な、なんだよ?」
あれ? なんか思ってた反応と違うな?
困惑する俺。
しかし桃花はすぐに笑顔に戻ると、言った。
「はい、撮影終了ーっと。良い画像だけ厳選して、正道くんにも送っておくね。じゃあ食べよっか。待っててくれてありがとう、正道くん」
「どういたしまして」
はて、さっきの桃花の態度はなんだったんだろう?
俺の気のせいか?
「食べないの? 美味しいよ?」
「食べるよ、いただきます」
ともあれ撮影会も無事に終了し、俺たちは限定の映えパフェを食べ始めた。
俺達は専用の大きなパフェスプーンで、デフォルメのクマさんがこんにちはする映えパフェを攻略していく。
「フルーツがジューシーで美味しい〜〜♪」
「良いフルーツを使ってるな。それに生クリームも甘さが絶妙だ。生クリームはスイーツの命だからな。いい腕してるよ」
小さい頃から美味しい物を色々と食べてきた俺の舌が、このパフェは超一流の職人技によってつくられたものだと告げてくる。
「甘すぎず、甘くなさすぎず、絶妙だよね~♪ なんかね、フランスで修業した人がパティシエしてるんだって」
「なるほど納得、フランス帰りか。どうりで美味しいはずだ」
「スイーツの本場だもんね」
「まさかこんな駅前の普通の店に、これほどの職人がいるとはな。桃花についてきて良かったよ」
「えへへー♪」
逸品パフェを前に、俺たちのテンションは文句なしにアゲアゲだ。
「それにしても美味しそうに食べるな」
「ほら、最近はあんまりスイーツ食べに行けなかったから」
「ああ、そういうことな」
桃花の言葉に、俺は軽くうなずいた。
実家の町工場が大変でそれどころじゃなかったんだろう。
ぶっちゃけ遊ぶお金もなかったに違いない。
ああもう、俺って奴は本当に駄目だな。
それくらいすぐに察しはついただろうに。
俺んちに家事をしに来てくれた時に、美味しいスイーツを買ってあげればよかった。
俺はおおいに反省するとともに、心のメモ帳に「これからは毎回お礼スイーツを桃花に出してあげる」と書き留めた。
「あ、もしかして悪いこと聞いちゃったなとか思ってたり?」
「そりゃ、少しは思うだろ」
「今はもういつも通りだから気にしないでいいよ? なにより今があるのは正道くんのおかげなんだから」
まるで恋でもしているかのように、しっとりと熱を帯びた桃花の瞳が俺を見つめてくる。
「ならよかった」
しかし俺はそれを素知らぬ風で受け流した。




