第39話 美少女JKのSNS事情
「あの~~? サンキューするのは神様に祈った『わ・た・し』にじゃないかな? ないかな?」
「もちろん、神様パワーを引き寄せてくれてサンキューな、桃香」
「えへへ〜」
だけど俺の一言で桃花はすぐに笑顔に戻った。
十中八九、怒った振りをしていただけだろう。
「そういやパフェってパーフェクトが語源なんだってな。正確にはフランス語でパーフェクトって意味のパルフェらしいけど」
「わっ! フランス語っていうだけで、おしゃれ度が青天井なんだけど~!」
「それな」
なんて友だち同士の、全然なんでもないやり取りをしながら。
俺たちは2人がけの向かい合い席が空いていたところに、ドンピシャで滑り込んだ。
早速、2人して限定パフェを注文する。
しばらくして運ばれてきたのは、イチゴやバナナだけでなく、マンゴーやらメロンといった見目鮮やかなフルーツが何種類も載った、キラキラ感満載の美味しそうなフルーツパフェだった。
山盛りフルーツの間にはさらに、クリームで作られた可愛らしいデフォルメされたクマの顔が、ちょこんと置かれている。
「わっ、すっごくいい感じ〜♪」
「クマがいるな」
「可愛いクマさんだね~♪ ウォンウォン♪」
「ウォンウォン? なんだそれ?」
「え、クマの鳴き声だけど。ウォンウォン♪」
「クマはそんな声で鳴かないだろ?」
「じゃあなんて鳴くの?」
「や、俺も詳しくは知らないんだが、赤ちゃんの泣き声のような声ってのは聞いたことがあるな」
「じゃあオギャーってこと? クマってオギャーって鳴くの?」
「さすがにオギャーではないと思うんだが、どうだろう……?」
「じゃあとりあえずウォンウォンでいいんじゃない?」
「まぁ俺は特に気にはしないから、それでいいぞ? 『ウォンウォン』がなんなのかを単に知りたかっただけだからさ」
なんて会話をしつつ早速、桃花がスマホでパフェの撮影を始めた。
角度や距離を微妙に変えては、見事なパフェを何枚も精力的に撮影していく。
俺はその間は食べずに、桃花の撮影が終わるのを待った。
先に食べていても、おそらく桃花は気にしないだろう。
だが美少女が楽しそうに撮影会をしているのを見るのも、それはそれで眼福というものだろう?
「SNSにでもあげるのか?」
あまりに熱心に撮影しているので、気になって尋ねてみる。
「ううん。グループラインで友だちと共有するの」
「そっちか。っていうかSNSはやってないのか?」
そういや桃花がSNSをやっているところはあまり見ないなと、ふと思い出す。
たまに見ていることはあるようだが、ファボしているくらいで、自分から発信している姿は一度も見かけたことがなかった。
「SNSは面倒が多いから、友だちだけフォローしてファボ専なんだよねー」
「面倒? どうして? SNSで発信なんて、そんなに面倒でもないだろ?」
それこそ文字を打って画像を選んで、投稿ボタンを押すだけだ。
老若男女問わず誰でも簡単にできる。
とはいえ俺は実を言うと、SNSはほとんどしていないのだが。
俺の場合は純粋に時間がないんだよな。
俺は凡人だから、時間をかけて努力しないといけないから。
しかし時間がないってだけの、突き詰めればどうでもいい理由の俺とは違って、桃花はかなり深刻な問題を抱えていた。
「そうじゃなくてね。変な男の人に絡まれちゃうから」
「ああ、そっちか。面倒ってそういう意味な。了解。まったく、女子は大変だよなぁ」
「あはは、まーねー」
特に桃花のようにとびっきり可愛い女の子ともなれば、なおさらだろう。
何気なく自撮り画像でもアップして、ストーカー気質のやばい男に見初められて、背景から家を割り出されて凸でもされたら、たしかに面倒だ。
というか下手したら命に関わる。
いや、今の口ぶりからするにそこまでのことではないにしても、過去に面倒な男に絡まれたことがあるのかもしれなかった。
可愛すぎてSNSすら普通にはできない桃花に、俺は少なくない同情を感じてしまう。
とはいえ、あまり深堀りして嫌な記憶を呼び起こすのもなんだと思ったので、俺はこの会話はサラっと流して終わらせることにした。
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