第38話 放課後パフェデート
というわけで、俺たちは放課後デート――男女で遊ぶって意味だ――に向かった。
と言っても、主な目的は駅前のカフェで限定パフェを食べるだけなのだが。
なんでもアプリ限定の半額クーポンが今日までだから、桃花が使っておきたいらしい。
ま、半額はお得だよな、半値なんだから。
生まれてこの方お金に困ったことがない俺が言っても、ミリも説得力はないだろうが……。
(半額どころか値段を気にしたことすらない)
駅前のクレープ屋に向かう途中。
2人になってすぐに、桃花が謝罪の言葉を口にした。
「ごめんね、友だちが変なこと言っちゃって」
さっきの教室でのことだろう。
「別にいいってば。桃花は人気者だからしょうがないさ」
「人気者は正道くんもでしょ? あれ? でも男子はあんまり盛り上がってないよね? なんでだろ?」
「男子はおおむね盛り下がってるんじゃないかな」
「ええっと、どうして? コイバナは男子だって好きでしょ? あの子が好きとか、可愛いとか、そういう話をするよね?」
「そうなんだけどさ。なにせ相手が桃花だからな」
「ええっと、わたし?」
桃花がこてんと小首をかしげた。
「要はこういうこと。人気の桃花に彼氏ができた。俺だって狙ってたのにガックリ……ってな感じだ」
実際、そういうことは見聞きしていた。
俺は普段の行いがいいので横恋慕的に恨まれたりはしていないが、落胆している男子は少なくなかった。
俺も付き合っているわけじゃないとはみんなに説明しているんだが、「じゃあなんでそんなに仲がいいんだ?」と聞かれて納得のいく説明をできなかったので――5000万円の話は絶対にできない――周囲からは付き合っているのを恥ずかしがって隠していると思われてしまっている。
「か、彼氏ってそんな……えへっ♪ やだもう♪」
すると桃花が急にニヤニヤ笑いをしながら、身体をくねくねさせ始めた。
歩きながらだ。
な、なんだ急に……?
歩きながらクネクネするとは、変な奴だな?
「あくまで例え話な。実際は違っていても、周りから見たらそう見えちゃうって話」
「……そ、それくらいわかってますぅ!」
「お、おう。そうだよな、すまん」
あれ?
さっきまですこぶる機嫌がよさそうだったのに、今度は急に機嫌が悪くなったような?
うーむ、女心と秋の空。
女の子は難しいな。
しかしどうやら機嫌が悪くなったわけではなかったようで。
「クーポン最終日だから、お店が混んでないといいんだけどなー。普段から割と混むお店なんだよね」
桃花はいつも通りのにこやかな笑顔で、いたって普通に次の話題を話し始めた。
女の子は本当に難しい。
「放課後に直行してるからまぁ大丈夫だろ?」
「だよねっ。ポジティブ、ポジティブ♪」
そんな他愛もないやり取りをしながら、俺たちは駅前のカフェへとやってきた。
◇
店内に入ると、主に高校生や大学生で店内はごった返していた。
それでも完全に満席ではないようで。
「混んでるけど、席はまだありそう……あ、あそこ空いてるよ」
「ちょうど2人席か。ついてるな」
「こんなこともあろうかと、昨日寝る前に神様にお祈りしておいたんだよねー。さすがわたし~!」
「そうだったのか。サンキュー神様」
俺は胸の前で十字を切った。
俺は別にキリスト教徒でもなんでもないんだが、なんとなく。
(ちなみに獅童家は代々、臨済宗を信仰しているのだが、信仰についてそこまで強くどうこう言われたことはない)
すると桃花がなんとも不満そうな顔を見せた。




