第4話「……獅童くんって、なんか思ってたより意外とチャラい?」
ファミレスに移動した俺と花宮さんは、観葉植物でいい感じに仕切られたカド席に、対面で座った。
これなら盗み聞き――というかたまたま第三者に聞こえてしまう――も起きにくいはず。
「なんでも選んでよ。ただしアルコール以外でね」
いい場所を確保できた俺が、メニューを広げて花宮さんに差し出すと、
「なんでもなんて、そんなの悪いよ」
花宮さんは申し訳なさそうにつぶやいた。
「俺が無理に誘ったんだから、遠慮はいらないさ。言っとくが花宮さんのお腹がすごく減っているのは、わかってるんだからな?」
初っ端から「遠慮しないと……」オーラが出ていたので、あらかじめ釘を刺しておく。
「もぉ、強引なんだから」
さっきお腹が鳴ったのを俺に聞かれたことを追い出してか、恥ずかしそうにプイッと視線を逸らす花宮さん。
「それに腹が膨れないと、気分も晴れないだろ? 腹が減ってはトークもできぬ、ってね」
俺は内心、会心のドヤゼリフを放ったつもりだったのだが。
「……獅童くんって、なんか思ってたより意外とチャラい?」
花宮さんからはまさかの答えが返ってきた。
「……俺ってチャラいかな?」
「うーんと、まぁまぁ?」
「俺としては全然そんなつもりはなくて、ただただ花宮さんに遠慮しないで欲しかっただけなんだが」
「ふーん」
なるほど。
今のは女の子からはそう見えてしまうのか。
いや、俺なりの正しい生き方だから、他人の評価はいいんだけどな?
「っていうか花宮さんは意外とはっきり言うタイプなんだね?」
「意外かな?」
ピンと伸ばした人差し指を口元に当てて、小首を傾げる花宮さん。
その可愛さときたら、まるでアニメか漫画のワンシーンであるかのようだ。
「俺の中の勝手なイメージだったんだけど、花宮さんはあんまりズバズバ言わないタイプかと思ってた」
『えー、そうなんだ~♪』なんて相づちを打ちながら、にこやかプリティスマイルを振りまく花宮さんを──俺に限らず──見覚えのある生徒は多いだろう。
「んー、学校だとみんなが『そういうイメージ』で接してくるから、仕方なくね。みんなを失望させたくなくて、ちょっと猫を被ってるの」
「学園のアイドルってのも大変なんだな」
「昔からだからもう慣れちゃったけどね。わたしってほら、可愛いでしょ? ずっとお姫様扱いされてきたから」
「自覚してたのか。それもちょっと意外だ」
「だって小さい頃からずっと『桃花ちゃんは可愛いね、美人だね』って、親からも親戚からも同級生からも先輩後輩からも、ずーっとずーっと言われてきたんだよ? そりゃあよほどのひねくれものでもなかったら、自覚もしちゃうでしょ?」
「それはたしかに」
花宮さんの言葉に俺は同意する気持ちしかなかった。
思わず苦笑がこぼれてしまう。
かくいう俺も、何をやっても「そこそこできる」止まりな現実をまざまざと見せられ続けてきて、自分は平凡な人間だって嫌でも自覚させられてきた口だったから。
方向性は真逆なんだけど、納得するところはおおいにあった。
頷いた俺を見て、花宮さんがふふっと楽しそうに笑った。
ああ、そうそう、これだ。
よく見るのはこの笑い方。
もうそれだけで、ただのウィークエンドのファミレスが、きらびやかな恋愛ドラマにでもなったかのようだった。
「そうそう、最近はなんか『お嫁さん検定1位』とか変なあだ名までついちゃったの。なに、お嫁さん検定って? どんな検定? 誰が言い出したか知ってたりする?」
「誰だろうな――って、なんで俺を見つめてくる? 言っとくが俺はこの件には無関係だぞ?」
「だよねー♪ 獅童くんがこんなこと言い出す人だったら、わたしショックだもん」
どうやら軽くからかわれたらしい。
「でも今は素なんだな。いいのか、クラスメイトの俺の前で猫を被っておかないで?」
「さっきのアクシデントがあったからかな? なんだか獅童くん相手に猫を被るのはバカらしく思えちゃったて。あはっ♪」
「つまり俺にそれだけ心を開いてくれてるってことか。これは話も弾みそうだ」
「話してて思ったんだけど、獅童くんってすっっご~~~くポジティブだよね? 学校でもいつも明るいし」
「せめて性格くらいは明るくないとさ」
親ガチャSSRの最高の血筋と家柄に生まれながら、弟と違って特筆すべき物を何も持ち得なかった俺なのだから。
せめて気持ちくらいは、誰よりも前向きでありたい。
気持ちも、行動も、勉強も、運動も。
凡人な俺にできるなりの精一杯をする。
それが最強の凡人たる俺の人生哲学だ。
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