第31話「でもなんか、こーゆーのって新婚さんみたいだね……なんちゃって!」
「あ、来た来た。ちょうど朝ご飯ができたところだよ」
桃花に出迎えられて食卓に着くと。
そこにはバターの塗られたこんがりきつね色のトースト、ふわふわのスクランブルエッグ、さらにはポテトサラダと、美味しそうな朝ごはんが並んでいた。
「朝から豪勢だな」
「そう? 普通だと思うけど」
「一人暮らしを始めてからはトーストとコーヒーだけで済ますことも多かったからさ。少し感動した」
「あはは……。あ、でも」
「どうした?」
「昨日の晩御飯と同じようなメニューでごめんね?」
「なにせ、ろくな食材がないからな……。というか作ってくれたこと自体がすごくありがたいよ。サンキューな桃花」
「正道くんには助けてもらったし、昨日も泊めてもらったし、これくらいはね。それにわたし思ったんだよね。正道くんに何より必要なのは、掃除洗濯よりもまず料理だって」
「それはまぁ、うん。否定はしない」
ズバリ問題点を指摘されて、俺は苦笑しながら頷いた。
「あれ? 昨日は『最近の冷食はすごいんだぞ〜』ってドヤってたのに、今日は素直に認めるんだ?」
「これだけの違いを見せられると、認めざるを得ないさ。桃花の料理はすごい」
「へへへ〜、やった♪ 正道くんに褒められちゃった♪」
桃花がにへら〜と笑う。
無防備な笑顔に思わず目を奪われそうになる自分に、俺は内心でわずかに困惑する。
なんだか妙に桃花のことが気になるっていうか、調子が狂うな……。
「でもなんか、こーゆーのって新婚さんみたいだね……なんちゃって!」
「や、どうだろう?」
「なんか、反応がビミョー……」
桃花がジト目で見つめてきた。
「俺たちはそういう関係じゃないしな。変に話題をこじらせて悪ノリしてセクハラとか言われても困るし」
「一般論の話としては?」
「見えるかもな」
「ほら~!」
桃花がそれはもう勝ち誇ったように胸を張った。
これまた可愛かったのは言うまでもない。
「じゃあ早速いただきます」
「どうぞ召し上がれ~」
そんなこんなで昨日の晩御飯に続いて、桃花の作ってくれた美味しい朝ご飯を食べ。
そして今日は桃花と一緒に高校に向かった。
おっと、俺は一応聞いたんだぞ?
『学校中で人気の桃花が、男と一緒に登校すると変な噂が立って困るんじゃないか?』
ってな。
『わたしが? ううん、別に構わないよ?』
『そうか? 意外とそういうのは気にしないんだな』
『そんなことないけど、正道くんとならいいかなって♪』
『俺となら?』
『うん。だって友だちだし』
『そりゃ友だちだけど、俺が言いたいのはそうじゃなくて――ま、桃花がいいならいいんだけどさ』
『うん、わたしがいいからいいんですぅ♪』
『了解』
『でもそういうことなら逆はあるかも?』
『逆?』
『正道くん狙いの女子にわたしが絡まれちゃうかも、的な? 正道くんを狙ってる子、結構多いし』
『この前も言ってたけど、本当かよ? 聞いたことないんだが』
『そりゃあ本人には言わないでしょー』
『ちなみに誰なんだ?』
『それこそ本人には言えないですぅ。恥ずかしいじゃんかー!』
『なんでそこで桃花が恥ずかしがるんだよ?』
『う”えっ!? ふわわっ!?』
『なんでそんなカエルがぺしゃんこになったような声をあげたんだ? もしかして動揺してる?』
『動揺なんてしてないですぅ! っていうか失礼なたとえはよくないよっ! わたし花の女子高生なんですからねっ! ぺしゃんこになったカエルはひどいと思うな!』
『おっとごめん。確かにそうだ』
『それよりそろそろ家を出ないと、予鈴に遅れちゃうよ?』
『だな。行こうか』
ってな具合だ。
な、ちゃんと俺は言ったぞ?
ともあれ、こうして俺と桃花は連れ立って高校へと向かったのだが――
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