第29話◇桃花 SIDE☆ 夢を見ていた――
◇桃花 SIDE☆
夢を見ていた。
夢と言っても遠い将来の妄想だったり、小さな子供の頃の思い出じゃない。
ついさっきまで現実だった夢。
正道くんとのベッドでの睦みごとを、わたしはまるで映画を見ているかのように、第三者的な視線で夢の中で追体験していた。
「ごめん、今のは責めたわけじゃないんだ。ただ知って欲しかったんだ。俺は桃花に幸せになって欲しいってことをさ」
正道くんがわたしの身体に手を回して抱き留める。
「はわ――っ」
至近で見つめられて、優しい声で語り掛けられて。
わたしの胸は「ドキン!」と一際、大きく高鳴った。
「俺に感謝してくれるのは嬉しい。でも変な恩義とかは感じないで欲しいんだ。俺と桃花は友だちだろ? 友だちってのはどっちが上とか下とかじゃなくて、対等な関係なんだから」
正道くんが優しい言葉をかけてくるたびに、胸がドキドキして、ふわふわして、キュンキュンしてくる。
さっきはもう必死の必死のビッグウェーブで覚悟が決まってて、それどころじゃなかったからわからなかったけど。
今ならわかる。
わたしはすっごくドキドキしていた。
とっても胸を高鳴らせていた。
めちゃくちゃキュンキュンしていた。
端的に言うと――正道くんに恋しちゃってた。
心臓の音、聞かれてなかったかな?
うわーん、ハズいよぉ!
身体も熱い。
顔が真っ赤になっている。
漏れ入る月明かりしかない、ほぼほぼ暗闇でよかったね。
おかげで真っ赤な顔を見られなかったもん。
でもでも、汗の匂いとかしてなかったかな?
気になる~!
内心でわたしがドキドキしているなんて知らずに、正道くんはとてもやさしい声で、友だちは対等な関係なのだと諭してくる。
だからこの言葉はすごく勇気を出していった言葉だった。
「正道くんって超・超・超真面目くんだよね。黙ってたら『お嫁さん検定1位』の学園のアイドルとえっちなことができたのに。そんなだと人生損しちゃうよ?」
こんなえっちなセリフが自分の口から出るなんて、びっくり!
恋は盲目ってこういうことを言うのかな?
うん、そう。
わたしは正道くんに恋してしまったのだ。
だけど同時に。
どこまでも完璧な正道くんに、わたしはなんとなく危ういところがあるように感じていた。
なんて言うのかな?
あまりに完璧すぎる?
強迫観念?
正しくあろうとする意識が強すぎるって言うか?
もちろんなんとなく思っただけだし、正しくあろうとすることはいいことだし、誇ることだと思う。
だけど完璧すぎる正道くんが、どこか無理をしている気がして――
もちろんこれはわたしのただの想像でしかない。
言ってみればただの勘。
正道くんはただただ完璧な存在なのかもしれない。
だけどもし無理をしているのなら――わたしが支えてあげようと思った。
だってわたしは友だちだから。
友だちが困っていたら助けてあげるもんだもんね。
そう、わたしたちは友だち。
恋人ではない。
だから友だちとして、何かできることをしてあげたい。
ただの友だちにすぎないことを少しだけ残念に思いながら、わたしは夢の中でもう一人のわたしを見続けていた――
◇桃花 SIDE END☆
3章終了です!
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