第20話「冷蔵庫にも食料庫にも、まともな食材がないんだけど……?」
その後、乾燥ルームに洗濯物を干してから、桃花は晩御飯を作ってくれることになったのだが。
まずは常温の食料庫を開け、次にキッチンで冷蔵庫を開けた桃花は開口一番、呆れたように言った。
「冷蔵庫にも食料庫にも、まともな食材がないよ……?」
「実は料理もそんなにはできないんだ。だから自炊はほとんどしていない。だけどその代わりに、チンして食べられる冷凍食品ならたくさんあるぞ。ほら」
冷蔵庫の隣にあるセカンド冷凍庫を開けて見せると、そこにはワンプレートのお手軽食事セットに始まり、パスタ、うどん、餃子、チャーハン、ハンバーグ、焼き魚といった多種多様な冷凍食品がずらりと入っている。
「うわっ、本当に冷凍食品でいっぱいだし。それもすぐ食べられるのばっかり」
「便利な世の中だよな。あとはお米さえ炊けば、簡単に食事が賄えるんだから」
他には鯖缶などの缶詰もある。
ワンプレートの食事セットなら、お米すら炊かなくていい。
近所にはファミレスも飯屋もあった。
ちなみにお米だけはほぼほぼ毎日、自分で炊いている。
余ったご飯は捨てずに冷凍もしている。
や、別にすごくもなんともないし、サトウのごはんで済ますことも少なくないのだが。
「こういうのはたしかに便利だけど、どうしても味が少し濃いめでしょ? これを毎日だと少し健康が心配かなぁ。うーん……」
「なんだよ?」
「わかったよ! 正道くんに今一番必要なことは、食生活の改善です!」
桃花が右手の人差し指で、俺をビシィッ! と指さした。
まるでどこぞの名探偵のようだ。
「だからいろいろ食べられるんだってば。これにウーバーも加えれば、それこそ365日違うものだって食べられる」
俺の自信満々のプレゼンはしかし、桃花にあっさりとスルーされる。
「冷蔵したお米と玉ねぎ、ニンジン、卵はあるから……うん、今日はチャーハンを作るね」
「いや、そもそも冷凍食品がある──」
「今からチャーハンを作ります! 異論は認めません!」
「お、おう」
びっくりするほど強く言われてしまい、勢いに飲まれた俺はこくんと頷くしかできなかった。
「じゃあすぐに作っちゃうから、適当に時間を潰しててくれる? それともまた見学する?」
「せっかくだし見学したいかな」
「はーい」
というわけで、桃花はチャーハンを作り始めた。
桃花は数少ない食材をパパっと取り出すと、それらを上手く使ってジャージャーとフライパンでいい音をさせながら炒めていく。
すぐに香ばしい匂いが漂ってきた。
「惚れ惚れするような手際の良さだ」
同じ年の女の子が、よどみなく料理をする姿に俺は目を奪われ、ただただ感心するしかなかった。
桃花はチャーハンを完成させると、
「はい、出来上がり~」
2人分をお皿に盛り付けてくれる。
それを2人でリビングの机まで運ぶと、向かい合わせに座った。
「熱々で、すごく美味しそうだ」
熱気が伝わってくる出来立てほやほやのチャーハンを前に、
グ~~!
俺のお腹が盛大に鳴った。
四の五の言わずに早く食べろ、今すぐ食べろと全力で訴えかけてくる。
「でしょでしょ? 冷凍食品が悪いとは言わないけど、こうやって自分で作ったり、誰かに作ってもらったものは、やっぱ違うんだよねー」
「桃花の言いたいこと、すごくわかるな」
「ほんと?」
「今回は桃花が目の前で作ってくれたからさ。なんかこう感謝の気持ちが、すごく湧き上がってくるんだ。本当にありがとう、桃花」
「こちらこそ、褒めてくれてありがと、正道くん♪ じゃあ冷めないうちに食べようよん♪」
「だな。いただきます!」
「いただきます」
食前の挨拶をしてから、桃花の作ったチャーハンをスプーンで一すくいして、口に入れる。
途端に俺の口の中で、美味しさの小宇宙が爆誕した。
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