第13話 クラスメイトの学園のアイドルが、俺のお世話をしてくれることになった件。
「さっき丁寧に何度もありがとうって言ってくれただろ? それだけで俺は十分だよ」
「こんなの言葉で伝えるだけじゃ足りないもん」
「言葉だけじゃなくて桃花の見せてくれた誠実な態度にも、俺は十分満足したさ。助けて良かったって心の底から思えた。桃花の想いはちゃんと届いているよ」
これは紛れもない本心だ。
「でも――」
「それに同情しなかったといえば嘘になるんだけどさ。だけど俺は同情よりも何よりも、俺の正義感を満たすために桃花を助けたんだから」
「正道くんの正義感?」
桃花がこてんと小首をかしげた。
「クラスメイトが家の都合で高校をやめないといけないなんて、寝ざめが悪いからな。だからこれは俺の気持ちのための行動でもあったんだよ」
「正道くんの気持ちのため……」
「ああ。俺が今後も気分よく高校生活を送るためのな」
しかも話を聞く限りでは、取引先に嵌められた疑いが濃厚と来た。
どうして何も悪くない桃花たちが、酷い目に合わされないといけないんだ?
そんなの絶対に間違っている。
間違いは正されるべきだろう?
そして俺は間違いを正すことができた――親ガチャSSRの力によって。
「でもそんなこと言ったら、わたしだってわたしの気持ちを納得させるために、正道くんにお礼をしたいもん。このままじゃあ気が収まらないよ」
「む、そう来たか」
精神論には精神論。
やるな桃花。
実は弁論の才能があるんじゃないか?
「正道くんのために、何かできないかな? わたしこの前、何でもするって言ったよね?」
「そういや言ってたな。でもお礼って言ってもなぁ」
「なにか、ないかな?」
桃花はそう言うが、俺ときたらお小遣い月1000万円の男である。
「ぶっちゃけ俺は大抵のものは手に入るから、そういう意味でも桃花に何かお願いすることはないかなぁ――あ」
「なにかあったの? 何でも言って? ね?」
俺の「あ」という一言に、桃花がここぞとばかりに食いついてきた。
テーブルの対面からずいっと身を乗り出して顔を近づけてくる桃花。
だから距離感が近いってば。
ちなみにそれが何かというと――
「いろいろお世話をしてもらえたら助かるかなって、思っただけだよ」
実は俺、家事ができないんだよな。
俺は高校入学から一人暮らしを始めたんだが、実家ではお手伝いさんが何でもやってくれていたのもあって、それまで家事というものにほとんど接してこなかったのだ。
せいぜい小学校の家庭科くらいで。
そのため特に料理を筆頭に、俺はまったく家事ができなかった。
掃除や洗濯も不慣れで時間がかかってしまい、正直、面倒に感じてしまう。
だから桃花にそういうあれやこれやを肩代わりしてもらえたら助かるなと、一瞬思ってしまったのだ。
あくまで一瞬な。
クラスメイトの女子を助けた見返りに、家政婦扱いしてこき使うってのはさすがにどうかと思う。
よってこの案は無しよりの無し。
俺はすぐにそう判断したのだが。
「お、お世話って……はぅぅ!」
なぜだか桃花が顔を真っ赤に染めていた。
身体を引いて自分の席に座り直すと、俺からふいっと視線を逸らして、焦ったように髪の毛の先を弄り始める。
な、なんだ?
いったいどういう反応だ、これは?
「どうしたんだ桃花? なんか変な声を上げてさ?」
桃花の行動の意味を図りかねて尋ねる俺に、桃花はしどろもどろになりながら、意味の分からないことを言い始めた。
「そ、そうだよね。正道くんも、男の子だもんね。……うん。そういうこと、やっぱり考えちゃうよね、うん。ぜんぜん、気持ちわかるし?」
「ええっと? 桃花が何を言おうとしているのか、いまいち意味がわかりかねるんだが」
「一人よりもわたしがいた方が、いろいろはかどるよね!」
「そりゃまぁ1人よりは2人の方がはかどるな」
「そ、そうだよね。男なら、ご、ご奉仕とかされたいもんねっ」
「ご奉仕……まぁそういうことになるのかな?」
家事をしてもらうなら、奉仕されるって言い方も当てはまらなくはない。
なんか微妙にニュアンスが違う気もするんだけれど、気のせいだろう。
あと言っておくが俺は家事は女性がするべきとか思ってるわけではなくて、単純に俺自身のスキル不足だと、正しく理解しているぞ?




