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フレイヤ・スペンサーの秘密の加護〜借金返済のために王都に来たのに、探偵事務所に辿り着けません〜  作者: サトウアラレ
四章

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祭り会場

私が祭り会場に到着すると、人も少なく、祭り会場は静かだった。


「閉鎖されている?入れるかしら?」


祭りの門を潜る前から活気があったのに、今は騎士団と自衛団の人達がいるだけだった。美味しそうな屋台もお土産の出店も全て閉まっているのが見えた。


祭り会場に入る前に騎士団の人に止められたが、リンドール侯爵からの手紙を見せ「スベンさんのテントに向かいます」と言うと、自警団の一人が私の事を覚えていた。


「オゥルソのアニキのお知り合いですよね。アニキの所まで、護衛します。まだ、色々と物騒なんで」


「有難う」


祭り会場の中に入り、スベンさんのテントに行くと、スベンさんのテントは割と門の側にあり、すぐにオゥルソさんや騎士団の人が目に入った。


「アニキ」


護衛の人がオゥルソさんに声を掛けると、オゥルソさんはこちらを振り向いて、驚いた顔をした。私の護衛に付いて来てくれた人はオゥルソさんに挨拶をするとすぐに自分の持ち場に戻って行った。


「フレイ!来たのか!?危ないぞ?」


「オゥルソさん!私は大丈夫。怪我人がでたというのは?」


「ブラックのテントの従業員だな。治療を受けて、命に別状はないらしい。幸い客は逃げ出して全員無事だ」


「従業員の方?」


「怪我をさせたのもブラックのテントの従業員だ。そいつは今、錯乱状態だ。騎士団から応援も来て、取り押さえたが…。酷い有様だった。そいつだけじゃなくてな。フレイヤ、黒い魔物を見たという証言もある。違法魔物の取引でブラックを騎士団はすぐに拘束したが、魔物が逃げ出したという情報があってな。街の中に逃げたという訳では無いようなんだが…その後、黒い魔物がどうなったか分からん。見間違いの可能性もあるんだが」


「オゥルソさんはその黒い魔物を見たの?」


「いや、俺は見ていない」


「見ていないけど…。黒い魔物が外には出ていない…。よし、オゥルソさん、祭り会場が見渡せる場所は?」


「ん?高い所か…。スベンの倉庫の屋根裏から屋根に上れば、見渡せるんじゃないか?」


「では、ちょっと上ってきます!」


「おい!フレイ!」


私がテントを飛び出し、裏のスベンさんの倉庫に行くと、スベンさんが丁度いた。


「スベンさん、ちょっと屋根に上らせて貰います!」


「え?オゥルソのアニキの、え?はあ?どうぞ?」


スベンさんの小屋の二階に上り、梯子から屋根裏に上ると、小さな窓があった。どこから屋根に移動し、屋根のてっぺんまで登ると、祭り会場全体が見渡せた。


流石にテントの上までは見えなかったが、ブラックさんのテントの方は黒い淀みで覆われていた。


「よし。まずは、浄化しよう。これ以上、変なモノを寄せ付けないようにしないと。そして、もし、魔物がまだ祭り会場にいるのなら、街に逃げ出さないようにしないと」


私はネックレスを握ると、息を吐き、意識を集中した。


「光を生みし、偉大な女神様。闇夜のゆりかごを愛する優しい女神様。私達の母なる偉大な女神様。全てに感謝を」


私が祈りを捧げると、光が生まれて、辺り一面を綺麗にしていった。


綺麗になれ、と願いながら。だから私の浄化は掃除をイメージする。空気を綺麗に、汚れた所を掃きだすような、窓を開けて空気を入れ替えるようなイメージで。


祈りを何度も捧げると、大きな膜が、出来て祭り会場をすっぽりと覆えた。


「ええ。これはなんかすごいのが出来た気がする」


私が屋根から膜を眺めていると下から声が聞こえた。


「フレイ!落っこちるなよ?」


「スペンサー令嬢!!そんなところに…」


落っこちると思っているのか、両手を広げているオゥルソさんと、声が一瞬聞こえて姿が見えないのは多分、ジェローム様だ。


「怒られる前に、降りよう…」


そう思って屋根裏に戻り、二階の梯子を下りると目の前にジェローム様がいた。


「まったく。貴女は。来るだろうとは思っていましたが、屋根に上るとは。そして、先程の結界。あれも貴女ですね??」


「え。結界?浄化を頑張っただけですよ?」


「はあ、まったく、結界は上位神職者か、経験を積んだ魔術士だけが出来る事です」


「いや、結界位は流石に知ってますけど…」


「隊長が上手くごまかそうとしていましたが、丁度、殿下が見てしまって。殿下の知り合いの魔術士という事になっています」


「え?魔術棟の?え、殿下ってアジュ殿下?わわわ、そう言えば、魔術棟に遊びにおいでって、誘われていたのに、行ってないですよ。え。無視したって思われる?ちょっとジェローム様、私、忙しくて大変って後でごまかしておいてくれませんか?嘘じゃないですから」


「はい、殿下には私からも、スペンサー令嬢は多忙で、連絡の行き違いもあるでしょうとは言っておきました。とにかく、今の事です。隊長より、スペンサー令嬢の警護を私の班が任されました。スペンサー令嬢、動くのでしょう?」


おお、助かった。ジェローム様、気が利くではないか、と思ったが、私を見る目は心配している目では無くて領地のセバスが『お嬢様、何かやらかしますね?セバスはお見通しでございますよ?』と言ってる時の目と同じだった。


「ブラックさんのテントの中に入りたいです」


「はあ。やはり。分かりました。既に中の確認は済んでいます。錯乱した人物は治療師に渡しましたし、貴女の張った結界で外部から変なモノが入り込む事は無いでしょう。ただし、本当に気を付けて下さい。貴女の力も、そして、魔物にも」


「はい」


ジェローム様はそう言うと、部屋から出た。私もジェローム様についていくと、スベンさんとオゥルソさんが心配そうに騎士達と待っていた。


「フレイ、大丈夫か?なんか光って良く見えなかったが」


「有難う、大丈夫よ。ちょと、ジェローム様達と一緒に向こうに行ってくる」


「そうか…気を付けろよ」


オゥルソさんは何か言いたげだったが、騎士達を見て頷くと何も言わなかった。


「では。行くぞ」


「「「「は」」」」


ジェローム様に四人の騎士が返事をした。


見た事のある騎士の人達で、皆私に騎士の礼をするとすぐに私達の後ろ、横を歩き出した。











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