73話 最悪のパーティー~2~
「皆、我が国の存続が危ぶまれていることは知っていると思う。
これからどうするべきか皆の意見を聞こうと思う。」
陛下がそう言った途端にヤジがとんだ。
「グレースに従うべきではないか!」
コーリアス侯爵だった。
その侯爵の言葉に対してコーリアス派閥はニヤニヤとしながら周りのアルジエル派閥を眺めていた。視線を向けられたアルジエル派は黙って俯くしかなかった。
「それは王国を帝国にあけわたすということでよいのか?」
「もちろんでございます。陛下。」
コーリアス夫人が嬉しそうに出しゃばってきた。ようやく亡き父の代わりに積年の恨みを果たせるとでも思っているんだろうか。
「グレースの意志は神の意志ですから!」
コーリアス夫人はそう言葉を続けた。
「しかし、我々はこの国と国民を護る義務がある。帝国に渡して国の人間の命が護られる保証がどこにある。」
そう言ったのはミライブ伯爵だった。
「ミライブ伯爵。あなたはグレースの意志を無視するのですか?」
コーリアス侯爵が言った。
侯爵の言葉に便乗したコーリアス派の嫌な視線を受けミライブ伯爵は唇を嚙み締めた。強く噛み締めすぎたのか血が伝っていた。
「ミリア。」
二階からコソッとその様子を眺めていた私はミリアに話しかけた。
「なに?」
「全く話してないの?」
私がそう聞くとミリアは一階を見たまま答えた。
「話してない。」
「いいの?」
「お父様のこと?
別にいいわよ。すぐに状況はひっくり返るのだから。
エリーこそ今までは私のせいでって思うタイプだったじゃない。」
「治る傷には興味ない。」
私はポツリと呟いた。
「そうね。」
ミリアも小さく言った。
「しかし、そのグレースが本物であるかはまだわからないのではないか。ミライブ伯爵の言うことにも一理ある。」
陛下がミライブ伯爵を庇うように言った。
「陛下はどうしてそう懐疑的なのでありますか?グレースは本物でございますよ。」
コーリアス夫人は訴えるように言った。
「その証拠はどこにある?
それがない以上、嘘であることも考慮する必要がある。
余は国を護るべきだと思っておる。」
帝国のグレースが本物であると知っているにも関わらず陛下は偽物という前提で話をし続けた。カナリアと帝国と繋がっているコーリアス夫人にとっては格下が永遠に噛みついてくるように思えたはずだ。自分の方が優位で正しいのに。中々ストレスもたまるだろう。
「ですから、グレースは本物にございます。」
コーリアス夫人は高らかに宣言した。
コーリアス派閥の人間もそれに乗っかる。
「そうだ。本物だ!」「王はふさわしくない。」「どうして事実を受け止めようとしない。」
そう口々に呟き始めた。
流れができてしまえばもう止まらない。
「その証拠はどこにある?」
陛下が繰り返しそう言った。
コーリアス侯爵は気づいたように慌てて止めようとしたがもう遅い。
いつまでも落ち着いた態度を貫き通す陛下に限界を迎えたコーリアス夫人は高らかに言った。
「私たちはグレースに会っております!
それが何よりの証拠にございます。
それでご満足いただけたでしょうか?」
「ヒステリックババア…」
ミナがボソッと言った。
私も他の二人も思わず噴き出した。近くにいた近衛も一緒に静かに笑っていた。
「つまり、帝国と密書を交わしていたということか?」
コーリアス夫人はハッとしたような顔をした。夫人自身ももう止まれない。
「いかに罪に問われようとも、グレースに付き従うのであれば私たちの方が正しい。それは誰しもがわかることでしょう!!」
開き直って叫び散らかした。
「私を捕まえることはグレースの意志に反することをお忘れなく。」
「そうだな。余の命令ではそなたを裁けんな。」
陛下のその言葉に夫人は勝ち誇った顔をした。
「この国にグレースの加護が無ければの話だが。」
陛下の言葉に夫人は意味が分からないという風に首を傾げた。
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