72話 最悪のパーティー ~1~
「エリー、大丈夫?」
ミリアが私の顔を覗き込んで言った。
「緊張で胃が痛い…」
「緊張だけなら頑張って!」
「ミリアー…冷たい…」
少し頬を膨らませてみたりした。
「エレノア様、本当に緊張されてます?」
ミナがキョトンとした様子で言った。
「それは心外ね、ミナ。」
「そうですかね。
それはそうと、私たちまで参加してよかったのでしょうか?」
「ミナ覚えてない?
学院の一定学年以上の一部クラスは基本的に参加資格あるのよ。私たちも例外じゃないわよ。イザベラ先生が話してたのに。」
リリアのその言葉に、ミナは記憶を辿るような反応を見せた。
「確かに言ってたような…
関係ないと思って忘れてた。」
首を傾げてミナがそう言った。
「ミナ…」
少しあきれた様子でリアナが呟いた。
今から陛下主催のパーティーが行われる。その中身は今後の方針を考えるという重っ苦しいものであり、貴族はもちろん、その子息令嬢から一部学院生まで参加する。
会場に入ると既に料理が広げられており、食べ始めていた。ただその食べる姿から伝わってくるものには天地の差があった。
アルジエル派の人間は現実から目を逸らしたいがために黙々と食べ、その一方でコーリアス派は嬉々として仲間内で話しながら食事をつまんでいた。そして、貴族階級でない学院生はコーリアス派に尻尾をふる。
「エレノアさんにミリアさん。それにリリアとミナ。」
声のする方を向くとイザベラ先生が立っていた。
リリアとミナは会釈をし、私とミリアは笑みを浮かべた。
「イザベラ先生。いらしていたのですね。」
「第二(第二特権階級のこと)も家から一人参加することになっていましてね。それに生徒の監督もありますから。」
「それはご苦労様です。
でもいいんですか? 私と話していて。
現状ですと私もミリアも立場が危うくなると思いますけど。」
私とミリアは顔を見合わせた後、イザベラ先生に向きなおした。
「正直な話、国を出るつもりです。」
イザベラ先生は小さな声で言った。
「そんなことを私たちに話してしまってもいいんですか?」
ミリアが尋ねた。
「親戚が別の国で商売をしていてそこへ行くのですが、あなたたちも一緒にいらっしゃいますか?」
イザベラ先生はそう言った。
「それはこれから起こることを鑑みてですね?」
ミリアが言葉を返した。
「そうです。立場上色々と耳に入りますからね…」
イザベラ先生は苦笑いしていた。
ドーランの件もある程度知っているからこそだろう。
「でもどうして私たちを連れて行こうと?」
「全員を連れていくのは無理ですから、せめて特に目をかけていた子供たちだけでも。」
「贔屓はよくないですよ。」
少し笑みをこぼしながら私は言った。
「そういう返答ですか。」
微笑みを返しながらイザベラ先生は言った。
「そうですね。お断りします。」
私ははっきりと言った。
「わかりました。それでは皆さんお元気で。」
そう言って去っていこうとするイザベラ先生の顔は少し俯いていた。
「イザベラ先生。」
立ち去ろうとするイザベラ先生に私は声をかけた。
「なんでしょうか?」
振り返るイザベラ先生に私は言った
「先生が知らないことも多くありますから、そんなに悲観的になる必要はないと思いますよ。」
「どういうことですか?」
「未来に期待しましょうという話です。」
「生徒にそれを言われるのは先生失格ですね。
ではまた逢う日まで。」
少し恥ずかしそうに笑いながらイザベラ先生は言った。
「陛下のご入場です。」
イザベラ先生と別れてすぐにその言葉が聞こえた。
全員の注目が二階に集まった。
「イザベラ先生どんな顔すると思う?」
パーティー会場から出て二階に向かいながら私は言った。
「せっかくいい感じで別れたのにね。」
私の言葉にミリアが笑いながら返した。
「顔を見るのが楽しみですよね。」
ミナも共感し、リリアもそれに頷いていた。
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