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グレース~エレノアの手記~  作者: 栗橋真縫
第一章
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67話 一人ぼっち

「ルード。紅茶でよかった?」

ルードの前にティーカップを置いた。


「ありがとう。にしても急にどうした?」


「少し、ね。」

ルードの横に座って自分も一口飲んだ。喉を潤すためではなく、心を落ち着けるための動作だった。


「少し珍しいものなんだけど、ルードはこれ知ってる?」

ルードに証を手渡した。


「初めて見たな…普通のアクセサリーじゃないんだろうけど。」

ルードから返された証を手に取った。


「グレースは知ってるでしょ?

それの証明。」


「冗談かなんか?」

ルードは普通で落ち着いていた。


「冗談ならもっとそれらしくするわよ。」


「つまり、エリーがグレースだったってことか。」


「そういうこと。まあ、グレースと言ってもね。」

あの三人に話したのと同じことを話した。


「でも、反応薄くない?」

ルードの様子にはまるで変化がなかった。


「驚いてはいるけど。そんなに気にはならないな。

どちらかというと今までのことに納得がいった。」


本当にルードでよかったと思う。


「で、他には誰が知ってるんだ?」


「教会は別として、家族と…あとはあの三人だけね。」


「あの子たちも知ってるのか。いつ話したんだ?」


「数カ月前?」


「はあーー…

エリーがグレースだったってことより、後回しにされてたことの方がショックなんだが…」

少しすねたような顔でこっちを見てくるルードが少し可愛かった。こういうルードも好きだ。


「しょうがないでしょ。ドーランにばれるわ、あの派閥の動きは怪しすぎるし、散々だったんだから。おかげで本山に行くはめにもなったし。本当に忙しかったんだから。」


「ん?

ドーランにばれるってどういうことだ?

何があった?」

ルードの態度が変わった。

私はドーランにばれた経緯、そして三人に話した経緯もすべて話した。


「そういうわけよ。」


「それは、なかなかだったな…」

ルードは話を聞いただけでお腹一杯のようだった。私も思い返すだけで胃もたれしそうだった。


「本当にね。」


「で、全部自分で決めたのか?」

ルードの声には力があった。その圧に押されながら口を開いた。


「本山に行ったこととか?」


「そうなんだが、そういうことじゃなくて。

俺にもそうだし、三人にも相談しなかったのか?」


質問の意味が分からなかった。グレースについて知っていたのは私だけだし、どうするかの選択は彼女たち自身に任せたから。

「だってグレースのことだから。私が決めなきゃ。」


「本当にそうか?」


「どういうこと?」


「質問を変える。何がそんなに嫌なんだ?

信頼してるから話したんだろ?」


「ますます意味が分からないんだけど。」


「だから、どうして一人で抱え込もうとする?」


抱え込んでない…私は一人じゃない。大事なことは自分で決めてる。ただそれだけ。

いや、でもそれは…違う。間違ってない…


「自己犠牲の精神か?

それとも信用しきれてないのか?」


「違う!!信用してる!!

だから話した!!」


「前から知ってるよ。

だからもっと頼ってくれよ。それに、頼ってやれよ。」

ルードは静かに言った。悲しそうな顔をしていた。


「そんな顔初めて見た…」

思わず口からこぼれた言葉だった。


「そうだな。弱い部分は見せるべきじゃないからな。」


「なんか得した気分。

でも今のはどういう感情?」


「何だろうな。でも自分が嫌になった。頼りなかったんだなって思ったんだよ。」


「どうして?ルードはこれ以上ないパートナーじゃない。」


「それはよかった。」

ルードはそう言って俯いた。


「ルード、どうしてこっち見ないの?

ねえ?」


「…」


「もしかして照れてる?」


「それなら悪いか?」

平静を保っているふりをしているルードを見ていると自分まで恥ずかしくなってきた。


「全然。」


「でもそれならな。

もっと頼れよ。」


顔をぐっと掴まれた。頬を押しつぶすように。


「ふぁい。」

ルードの手から伝わる優しさに包まれていた。

自分の焦り、強張りが融けていくのを感じた。


「正直さ、エリーは弱いだろ?」

ルードと目が合った。


「だから壊れないようにしてるつもりなんだろ。

自分と周りの価値観の違いが怖いから傷つかないように。」


自分の中ではこの世界に適応したつもりだった。でも本当は適応しているふりを出来るようになっただけ、それで本当に適応していると錯覚していたんだ。どうしても私の人格は向こうで形成されているから。


「でもそんなことでエリーのこと嫌いにならないからな。」

ずっとそばで見守っていてくれるような優しい声だった。


「わかった。」

そのままルードの胸に顔をうずめた。

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