63話 グレース2 ~2~
これはごまかせないな…
さて、やることが二つ…どっちもかなり重要。ドーランがどうして証を知っているのか。後は、目の前の三人になんて説明したらいいのか。
ドーランが証を知っている理由の方が心への負担はかなり少なく思えた。
「…この後時間あるかしら?」
どうにか絞り出した言葉がそれだった。
三人とも黙ったまま頷いた。
ドーランの身柄は事の経緯を話しつつモリスお兄様に引き渡した。最悪の結果も添えて。
「大丈夫なのかよ。確かに俺はどうにもできないけど。姉上でも呼んだ方がいいんじゃ?」
お兄様の服の裾を掴んで首を振った。
「大丈夫です。」
「そっか。どうだか知らないけど、忘れるなよ。」
「何をですか?」
「ん~…なんだろうな!」
気にするなとでも言うようにモリスお兄様は手をパタパタさせながら、気絶したドーランを引っ張っていった。
私たちは教会へと向かった。
「エレノア様。どうかなされましたか?」
「フレール大司教…部屋を貸していただけますか?」
「そうですか…かしこまりました。
私はどのようにすればよろしいでしょうか?」
「まずは自分の口から説明させてください。」
「わかりました。ただ、エルセース教の意義はお忘れなきようお願いいたします。」
「わかっていますよ…」
この緊張はいつぶりだろうか。その時のお姉さまたちは私がグレースだと知っても、それ以上追及することはなかった。私が私であるのならそれでいいと言ってくれた。
どう話し出していいかもわからないまま言葉を紡いだ。
「これはグレースである証拠。教会が作成してて、教会とグレース、あとは一部の関係者だけが知ってる。」
証をテーブルの上に置いた。
誰も何も話さなかった。
「質問してもいいかしら?」
沈黙を破って口を開いたのはミリアだった。
私は黙ったまま頷いた。
「あなたはグレースの使命のために私たちに近づいたの?」
首を横に振ってこたえた。
「違う…グレースの使命なんてものは誰もわからないから。私たちであっても。
ただ確かに、みんなの知らないようなことをたくさん知ってる。それがグレースであることの条件であり、確証。
だからお願い信じて!!後ろめたい気持ちがあったわけじゃない!!
確かに隠し事をしていたのは…そうなんだけど。」
「…それを、どう信じろって言うの?
それを信じさせるためにわざわざここまで来たとでも言うの?」
ミリアの言葉はいつもからすると考えられないほどに鋭く強かった。
「ミリア様、エレノア様はグレースなのですよ!」
リリアが小声で耳打ちした。
その言葉が私に突き刺さる。
辛いと思った。リリアの中の私が置き換わっている。
「リリアは誰と話しているつもりなの?
神? それとも神の使者?
私としてはね、どっちも認められないのよ。
もしそうならそこまで。全部終わりよ。」
「それは…」
リリアが言葉を詰まらせた。
「エリーもう一度聞くわ、答えて。
その発言をどう信じればいい?」
「…よ。」
「もう一度言ってくれるかしら?」
ミリアは冷たく言い放った。
「無理よ!!
ここに連れてきて、話してることだけで、これ以上はもうないのよ!!
私が証明できるカードはもうないの!!大司教がグレースであることを証明できる!!でもそれはグレースであることだけ!他は何も無理よ!!
人の心の中なんて見れるわけがないんだから!!」
喉が痛くなるくらい叫んだ。
普通に考えたら信用できるわけないよな…私の発言だけ聞いてそれを認めてくれた私の家族が特殊だったんだと思う。
「…ごめんなさい。エーリア商会の権利は三人にあげるわ。
それが今までのお礼。」
席を立ち、扉へと向かった。
「今までありが、とう?
どうしたのミリア?」
腰のあたりにミリアの両手があった。ミリアに後ろから抱きつかれていた?
「ねえ、エリー。謝ったら許してくれる?
答えられないことわかっててあんな言い方したこと。」
「許さないって言ったら?」
「許してくれるまでこのままで、謝り続ける。」
「そう。
でもいいの? 全部演技かもしれないのに?」
「それならそれで、薄情になりきれない私が悪いの。どっちつかずな私が悪いから。」
これに正解なんてない。ただ、今はこれでいい。そう思った。
「ミナとリリアはどうする?」
「私は正直、先ほどのエレノア様についていこうと思っていたのですが…」
ミナは椅子から立ち上がった状態のまま言った。
「それで今立ってるのね。」
「はい。」
「でもよく、ついて来ようなんて思ったわね…」
「なんとなく、ついて行った方がいい気がしまして。」
そういうミナに私は笑いかけた。
「リリアはどうする?」
「…」
「大丈夫?混乱していない?
私がグレースだった。私の意識行動は全て私が決めています。他の介在はありません。話をまとめるとこんな感じなんだけどどうする?
今後教会の色々に巻き込まれるかもしれないから、私と縁を切るなら今だけど。」
「…」
リリアは静かにうつむいたままだった。




