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グレース~エレノアの手記~  作者: 栗橋真縫
第一章
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62話 グレース2 ~1~

「久しぶりね。ミリア。」


「久しぶりだけど、大丈夫なの?」


「大丈夫って?」


「だから…」

ミリアは何と表現したらいいのかわからず言い淀んだ。


「大丈夫よ。リースも一応無事だったし。」


「でも…」


「ありがとう。でもね、今はそっちを気にしている場合じゃないの。」



私が思いつめたような顔で一日を過ごしていたらすぐにわかると思っていたが、案の定簡単に釣れた。



「エレノア。」


人気のないところで声をかけていた。ミリアたちが一緒に居るとは言っても、それくらいならどうとでもなると思っていそうな、イラつく声だった。


「ドーラン。何の用かしら?

あなたに用はないのだけど?」

わざとらしく首を傾げてみた。


「本当にそうか?」

へらへらと笑いながら彼は近づいてきた。


「私はこの通り生きてるもの。その上リースも生きてる。あなたの目的は達成できてないわよね?

そういうわけであなたに用はないのだけれど。」


「まあ待てよ。

それにしても、まるで俺がやったみたいな言い草だな。」


「あなたしかいないでしょ?」


「仮に俺がやってたとしてどうする?

俺の行いはお前らより正しい行いになるんだよ。」


どうしてこう自己中心主義なのかしら?


「自分の目的すら達成できない無能な人間と話してる時間は私にはないのよ。

というわけで、ごめんなさいね。」


彼の顔はみるみるうちに真っ赤になった。


まるでブリキだ。自分は特別だと見せようとするけれど、すぐにプライドだらけの中身が見えてくる。そしてその中身の感情に流される。


彼は真っ赤な顔で腰にある剣を抜いた。


「私が。」

そう言ってミナが前に出ようとしたが、それを静止した。


ただの報復に近かったが、どうしても私が自分の手でやりたかった。


私も腰の剣を引き抜いた。

護身用とはいえ学院内に持ち込むために刃はつぶしてある。それでも鈍器としての殺傷力は十分にあった。私は今それをドーランにぶつけようとしている。ただ、恐怖も罪悪感もなかった。嫌な話、慣れてしまったのかもしれない。


その気持ちが油断だった。


彼の剣を避けたつもりだった。少し服に掠る程度だった。刃がつぶしてある剣だった十分かわせていた。私の服が貴族用のふわっとした洋服でなければかわせていた。

服の首元が裂けた。


「それ…持ち込み禁止よね?」


しかし、ドーランはその私の言葉に何の反応も示さなかった。彼の視線は私の胸元に集中していた。

私も自分の胸元を見てみるが肌ががっつりと見えているわけでもない。


「…なんで。」

ドーランはさっきまでと打って変わって声を絞り出した。

「証を…」


普段服の中にしまっている証が首元から垂れていた。

気づいてはいた。見られてもどうせ何もないと思っていた。適当にもらったものだとでも言えばいい。そもそも気にしないだろうから。そう思っていた。

それなのにどうして証を知っている⁉


全てが油断だった。油断による失敗が重なった結果だった。


「なんでお前が…お前が、グレースなんだよ!」


最悪の発言をされた…ずっと隠してきたのに。

その発言と同時にミリアは走ってどこかに行ってしまった。ただ、そのミリアの行動に妙に納得している自分もいた。ずっと何年も黙っていたから。


さて、これからどうしようか。どうしていいのかわからないな。

まずはドーランをどうにかしてから考えようか……

心の中が空っぽになったような感じがして、なぜか思考は落ち着いていた。


殺さないように手足に剣を叩きつけた。ミシッという音とともに骨の折れる感触が手に伝わってくる。


そしてその場には、倒れているドーラン、ミナとリリア、そして戻ってきたミリアがいた。

三人は私のことをじっと見ていた。

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