61話 変化
翌々日には目を覚まし、リースはどうにか一命を取りとめた。ただ手足のしびれなどいくつかの後遺症が残ってしまった。そのうち治るかもしれないが治らないかもしれない。そんな状態だった。
「リース。」
「エレノア様。」
リースはベッドに座っていた。
「ありがとう。おかげで助かったわ…」
「それなら良かったです…」
「自分の状態はもう聞いたのよね?」
「はい。自分でも信じられないですね。
こんな風に普通のものを持ち上げるのにはそこまで支障はないんですけどね。」
そのリースの顔は無理して笑っているように見えた
「護衛の仕事はもう出来なくなりましたし、近いうちにこの屋敷を出ていきます。」
「それでどうするの?」
「エレノア様は私がどれくらい貰っていたかご存じですよね?
質素に暮らせば何十年かは働かなくていいくらい貯まってますから。
しばらく王都に住んでもいいですし、王都から離れて実家に帰ってもいいですし、どうにでもなりますよ。」
「…出ていこうとしてるのは護衛が出来なくなったから?」
「エレノア様。私はエレノア様の護衛として雇われたのですよ。剣を振るえなくなった時点でもう価値がありません。」
「だから、出ていくと…」
「はい、そうですね。」
「リース。あなたは私のこと知ってるわよね?
逃がすと思うの?」
グレースという意味で。
あえてその言葉は言わなかったがリースには言いたいことは伝わったようだった。
「それなら、私の貯金だけ実家に送ってもいいですか?」
「それで死んでもいいと?」
「今までが恵まれ過ぎていただけですから。学院を卒業して、ここに来て…相当裕福な生活を送ってきました。人並みの運はもう使い果たしたと思いますし。
ここで終わらせても私は十分納得できます。」
「そう。…わかったわ。
…なんて言うと思った?
家族以外で何人が私のこと知ってると思ってるの?
ほとんどいないのよ。ミリアたちですら知らない。
私がどういうつもりで教えたかわかる?」
「……」
「家族と同一に思っているからよ。
それでも、本当にここを辞めたいと思ってるなら別に止める気はない…
そうじゃなくて、もし自分が何もできなくなったと思って辞めようとしてるなら、もう少し私に振り回されてくれない?」
「…私はもう何もできませんよ?」
「別に護衛だけがリースのできる仕事じゃないでしょ。私の秘書みたいなこともたくさんしてくれてたじゃない。」
「そういえばそうでしたね。名目上は護衛なのに全然護衛じゃなかったですね。」
リースが堪えきれない笑いを飲み込みながら言った。
「その言い方はなんとなく、私が職務に含まれないな労働を強いていたように聞こえるけど…気のせいよね?」
「その分はしっかり頂いていますから!」
「これからもよろしくね。リース。」
リースの思いつめたような表情もほどけたみたいで本当に良かった。
でも、今回の犯人は絶対に許さない…もう昔とは違う…自分の手を汚すことに抵抗はない。




