59話 婚約者〜8〜
「おめでとう。エレノア。」
「ありがとう。ルード。」
私の貴族位の授与式もあり、他の貴族の方々への挨拶回りもありで、ここ何日か学院を休んでいた。
「どうだ?貴族になった気分は?」
ルードはニヤッと笑った。
「皮肉かしら?」
この空間に幸せを感じた。なんとなく、笑いそうになりながら言葉を繋げた。
「でも、正確にはまだ貴族になってないわよ
学院の卒業、要は成人したら爵位が与えますよ、それは決定事項ですってことみたい。今すぐ爵位を渡されても貴族の仕事を果たせないという判断のもとでね。」
「しばらくはルミナリア家のままってことか。しばらくはそっちの方がいいわな。まだ貴族社会に首を突っ込まずに済むわけだし。」
「すでに挨拶回りやらなんやらで散々揉まれたわよ。
面倒な世界よね…それは間違いないわ。
普通ならこんな話絶対にお断りよ。普通ならね。」
「普通ならか。」
「普通ならね。
私から言った方がいいのかしら?」
「いや…俺が言う。違うな。俺が言いたいんだ。」
「…改めて爵位授与おめでとう、エレノア。」
「ありがとう。」
「そんなエレノアを羨ましく思って憎むやつだっていると思う。そんなの全部俺が守ってみせる。
…だから俺に横を歩かせてくれ。」
得も言われぬ幸福感が湧き上がってくる。今この時に比べたらこれまでの幸せなんて幸せと呼べないように思えた。
スッとルードの胸の上あたりに手を置いた。不意に腰のあたりにルードの手を感じ、ルードの体が近づいていた。そのまま唇に感触を感じた。温かさがじわじわと体全体に広がっていく。
顔を少し引いてじっと見つめてみた。
「…喜んで!!」




