4〖お花は元気、蝶も元気〗
ふふーん。天気もいいし、花が元気なのも伝わってくる。
この子が出してくれる蜜も美味しいし、ここの空気は綺麗だし、同じ昆虫族の姿はまだ見つけられていないけど、自然豊かな森を飛び回るのは楽しい。
最初は蝶生詰んだと思ったけど、諦めないでよかった。
「おい、蝶。方法見つけたか?」
死にそうな顔しながら、花にお水をあげてくれている吸血鬼の始祖。
彼はなんでもいいから死にたいらしい。
理解できないけど、毎日決まった時間にお水をあげるという約束で、一応付き合うことにした。
「方法っていうけど、今まで何か試したの?」
「見くびるなよ。千年前、俺は絶望の中あらゆる自殺を試した、自殺未遂のプロなんだぞ」
光のなかった瞳が自殺という単語で輝いた。
「身近にいた人間から聞いた手段は全て試した。普通の方法じゃ死ねなかったから、吸血鬼を殺す禁術という本を読み漁りもした。
心臓に銀の杭を打っても次の日には杭は外れていた。ああ、あのすっきりした目覚めは最高だったな。
一日中太陽を浴びても、肌が健康そうな感じで焼けて、一日したら元に戻った」
どうやら吸血鬼の始祖というのは、私たち蝶とは全く違った生き物らしい。
体を粉々に砕かれたり、心臓を潰されたり、胴体から頭を切り離されたら、回復するのに時間はかかるらしいが、それでも死ねないらしい。
なんか……不憫に思えてきた。
いや、でも。始祖さんに死なれたら私が困る。
私が蝶生を全うするまでは、それなりに考えるふりをしておこう。
「じゃあ、マグマとか探したらいいんじゃないかな?」
適当に答えると、始祖さんがハッとした表情でこちらを見た。今までで一番生き生きしている。
「その手があったか!」
あ、失敗した。それでも死ねないことを祈ろう。




