16『始祖さんへの嫌がらせ』
ああ、ああ、憎き世界の全てを滅ぼしてしまいたい。
いや、たしかそうしたこともあった気がする。
いつだったか。数千年前か? やっては見たものの、俺はさらに深い孤独に突き落とされた……気がする。
いい時代もあった。俺もまだ若かった。か弱い種族たちを先導し、文明を発達させ、皆が明るく生きる時代を築いた時も……
「いや、ただの夢かもしれない。きっとそうだ」
記憶は曖昧だった。吸血鬼の始祖というものは、なかなか死ねない。死んだ同胞の話も聞いたが、風の噂だ。
あらゆることに疲れ切って、この島に来た。当時親しくしていた竜が俺を誘ってくれたからだ。その竜の……
「名前はなんというんだったか」
思い出そうとしたら、さらに鬱になった。むしろ腹が立ってくる。竜ですら寿命があるのに、何故、何故! 俺は死ねない!
「偉大なる御方!」
この部屋から閉め出したはずのジザクの声がした。
「ああ、我らが尊き始祖よ! 貴方様に献上したいものがございます」
うるさい。うるさい幻だな。俺は布団を頭まで被りなおす。
「どうか、お収めください。この世で一番美味だともっぱらの噂である、人魚の血です!」
人魚? ああ、あの半人半魚か。あいつらの血は美味しくない。肉を食えば不老長寿という話も、人魚種自体が流したデタラメだった。
どうして人魚がそんな危険は噂を流したかって? あいつらは皆が思っているほど柔じゃないからだ。
簡単に言ってしまえば、獲物をおびき寄せる餌のつもりだろう。
「さぁ、さぁ! ぐいっと一気に」
いつしかジザクの声が耳元でした。目の前には本物の血の入ったコップが……
血。食事。
俺の邪魔をするな!
俺は発狂しそうになって、気が付けばジザクごとコップを吹き飛ばしていた。




