13『ジザクの夢は遠い彼方』
あの人が、僕を呼んでいる?
蝶の言葉が信じがたかった。
遠目から「早く死ね」という呪いをかけ続けてきて数百年。
いや、まさか。ようやく死ぬ方法が見つかったのかもしれない。
「この城にあるものを全てお前に託す。今までよく仕えてくれた」
そんな言葉が浮かんで、胸が躍り出した。ついに、この時が……!
「ジザク、幽霊種を呼べ。パーティーを開くぞ」
「は?」
何言ってんの、こいつ。
「幽霊種なら、俺の望みを叶えてくれるに違いない」
「お言葉ですが」
とうとう頭がイカれたのか? そもそも、この人がまともだった頃をもう思い出せない。
昔は、吸血鬼の始祖としては珍しく、いろんな種族に慕われる人だった……気がする。
何度か文明が滅ぶのを見てきたらしいけど、その度に領主として、か弱い種族を先導してきたとか。
全部人づてに聞いた話だけど。
「流した噂的に、現実的には厳しいかと」
何のためにあの噂を広めたと思ってるんだ。
それに! もし! 招待状を送った相手が来たとしても、この寂れた城を誰がそれなりに整えると思って……
いや、その前に招待状を誰が書くと思って!
もうこの数百年、僕が書いた覚えのあるのは、ラブレターだけだ!
始祖が僕を見つめてきた。殺意の籠った視線だった。
顔が引きつる。吸血鬼の本能が従えと言っている。
「えっと……何をどうやって、招待しようと思ってるのかだけ、伺えますか?」
終わった。僕の夢が終わろうとしている音が聞こえた。




