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10〖陰鬱ライフのはじまりは〗
あの時の俺は、まだ生きようとしていた。認めたくないが、きっとそうだ。
腹が減っていたんだ。だから、人間から提供された輸血パックの口を開けた。
それを飲もうとした時、衝撃が走った。
――俺は死にたいのに、何故生きようとしている!?
吸血鬼が生きるのに、血は欠かせない。蝶でいう花の蜜と同じだ。
特に人間の血が一番おいしい。つまり、俺はその一番おいしい血を飲んで、生きようとしている! 死にたい自分を否定しようとしている!
それを悟った俺は、隣にいたジザクの口にパックを詰め込んだ。ジザクがパックを喉に詰まらせて、死にかけた。
それからというもの血を見ると、俺の体は拒絶反応を起こすようになった。
食事が俺にとって悪であることを、この体はやっと理解してくれたらしい。
「これが俺のとっておきの話だ」
「え、なんか……ごめん」
布団の上に座っていた蝶が、ドン引きした顔をしていた。
何故か不快だった。
「ふん、わかればいい。これからは、死ぬまで俺に生きる喜びなんて説こうと思わないことだな」
「でも~」
蝶がふわりと飛び上がる。
「死ねないんでしょ? 私が死ぬまで死ねないままでいてね」
やっぱりこの蝶を殺そう。俺は決意した。




