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達人転生 ~理を知る達人は転生チートなんか必要ない~  作者: まつすけ


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第三話 姉の入学と6歳の弟

レンが六歳になった年、姉エリナが王都の貴族学校へ入学することになった。


アルデリア王国では、十歳になると子供は学校へ通う。


平民の多くは普通学校へ通い、読み書き、計算、地理、歴史、王国法の基礎、衛生、そして魔法学の初歩を学ぶ。


この世界では、魔法は貴族だけのものではない。

火を起こす魔道具、灯りをともす魔道具、水を汲み上げる魔道具、荷を動かす補助具。

生活のあちこちに、魔力を用いた道具がある。


たとえ大きな魔法を使えなくとも、魔力の扱いを知らなければ日々の暮らしにも支障が出る。

そのため普通学校では、魔力の測り方、簡単な魔道具の扱い方、暴発を防ぐための注意、低位魔法への対処法などを学ぶ。


ただし、普通学校で学ぶ魔法はあくまで生活と安全のためのものだった。


炎を大きく操る。

土壁を築く。

水流を制御する。

風で物を飛ばす。

身体を強化する。

魔法剣を扱う。


そうした実用的で高度な魔法は、専門の教育を受けなければ難しい。


そのため、魔法の才を持つ平民の子は、普通学校で見出されることがある。

成績が特に優秀であれば、推薦を受けて貴族学校や魔法専門課程へ編入する道もあった。


もっとも、それは簡単なことではない。


学費。

身元保証。

推薦者。

王都での生活費。

そして、貴族の子弟と同じ場で学ぶだけの礼法と覚悟。


才があれば誰でも上へ行ける、などというほど、この世界は綺麗にはできていなかった。


一方、貴族や騎士爵家、官僚家、裕福な名家の子供たちは、王都にある貴族学校へ入る。


十歳から十八歳までの八年間。


基本は寮生活である。


貴族学校では、普通学校よりも高度な学問を学ぶ。


読み書き、計算、王国史、地理、礼法、法制度、経済、軍事、外交、芸術。

そして、魔法学。


この学校における魔法学は、単なる生活技術ではない。


魔力測定。

魔力制御。

魔法式の基礎。

火、水、土、風など自然物への干渉。

魔道具の構造理解。

治癒補助魔法の理論。

身体強化。

障壁。

魔法剣。

集団戦における魔法運用。

魔法事故への対処。


年齢が上がれば、より専門的な課程へ分かれていく。


攻撃魔法を学ぶ者。

防御魔法を学ぶ者。

治癒や薬学に進む者。

魔道具研究に進む者。

軍で魔法部隊を目指す者。

騎士として魔法剣を磨く者。

官僚として魔法法規や魔法資源の管理を学ぶ者。


魔法は、この国の軍事、産業、医療、交通、生活、そのすべてに関わっている。


ゆえに、貴族学校で魔法ができないということは、ただ一科目が苦手というだけでは済まない。


将来の選択肢が狭まる。

周囲からの評価が下がる。

軍や官僚の上位職にも進みにくくなる。


魔法優位の世界において、魔法適性とは、一種の身分とは別の身分だった。


そして、その価値観は子供たちの中にも深く染み込んでいた。


エリナは、そんな貴族学校へ入ることになった。


つまりは、家を出ての寮生活。


その事実を、アルクレイド家の誰もがそれぞれの形で受け止めていた。


父ガレスは、分かりやすく落ち着かなかった。


「エリナ、忘れ物はないか」


「確認しました」


「本当に?」


「三度確認しました」


「四度目を」


「お父さま」


エリナが振り返る。


まだ十歳の少女だが、その目はすでに家の秩序を守る者の目だった。


ガレスは黙った。


「はい」


母ミリアは、旅装の襟元を整えていた。


「王都はルミリアより人が多いわ。疲れた時は無理せず休むのよ」


「はい、母さま」


「食事も、残しすぎないようにね」


「はい」


リオルは絵本を抱えたまま、姉の荷物を見ていた。


「姉さま、学校の図書室って大きい?」


「大きいらしいわ」


「本、いっぱい?」


「ええ。帰ったら教えてあげる」


リオルは少し嬉しそうに頷いた。


「うん」


セラはまだ幼く、ミリアの横で姉の制服の裾をつまんでいた。


「ねえさま、いく?」


「ええ。お勉強してくるの」


「かえる?」


「帰ってくるわ。休みになったら」


「いつ?」


エリナは少し困った。


「少し先ね」


セラはよく分かっていない顔で、けれど何かを感じ取ったのか、エリナに抱きついた。


「いってらっしゃい」


「ありがとう、セラ」


レンは、その様子を少し離れたところから見ていた。


姉が家を出る。


前世では、自分も子を送り出したことがある。

修行に出る弟子を見送ったことも、数えきれないほどある。


だが、今は少し違った。


自分はまだ六歳の弟であり、見送られる姉は十歳の少女だった。


小さな背中。


それでも、エリナはまっすぐ立っている。


前世の感覚で見れば、子供だ。

だが、今世の家族として見れば、頼もしい姉だった。


「レン」


エリナがこちらを見る。


「はい」


「私がいない間、お母さまの手伝いをちゃんとしてください」


「はい」


「リオルが本を読みながら階段を降りていたら止めて」


「はい」


「セラを甘やかしすぎないように」


「……はい」


「今、少し間がありました」


「気のせいです」


エリナはじっとレンを見た。


「あなたは、何かを隠す時ほど顔が変わりません」


レンは返答に困った。


姉は鋭い。


レンのすべてを見抜いているわけではない。

前世の記憶も、武の理も、知っているわけではない。


だが、何かがあるとは感じている。


それでもエリナは、それ以上踏み込まなかった。


「無理をしないように」


「それは姉さまもです」


「私は無理をしません」


「父さまもそう言います」


「お父さまと一緒にしないでください」


即答だった。


ガレスが少し傷ついた顔をした。


「エリナ……」


ミリアが笑う。


「ほら、もう時間よ」


馬車が門の前に停まっていた。


御者が控えめに頭を下げる。


エリナは家族全員に向き直り、深く礼をした。


「行ってまいります」


ミリアが微笑む。


「行ってらっしゃい」


リオルが手を振る。


「いってらっしゃい」


セラも真似をする。


「いってらっしゃい!」


レンも頭を下げた。


「行ってらっしゃい、姉さま」


ガレスは大きく頷いた。


「胸を張って行け。お前は俺の娘だ」


そこまでは良かった。


だが、エリナが馬車へ乗り込もうとした瞬間、ガレスの目が潤んだ。


「エリナ……!」


「お父さま」


「嫌なことがあったら、すぐ帰ってこい」


「まだ行ってもいません」


「手紙は毎日でもいいぞ」


「毎日は無理です」


「変な男には近づくな」


「お父さま」


「これは大事だ」


「私は学びに行くのです」


「学ぶ顔をした変な男もいる」


エリナは静かに目を細めた。


「お父さま」


「はい」


「泣かないでください」


「泣いていない」


「泣いています」


ガレスは黙った。


ミリアがそっとハンカチを渡す。


「あなた、拭いてください」


「……泣いていない」


「はいはい」


エリナは馬車に乗った。


扉が閉まる。


車輪が動き出し、馬車はゆっくりと門を出ていく。


ガレスは、馬車が角を曲がって見えなくなるまで立っていた。


レンはその横顔を見上げた。


父は寂しそうだった。


だが、同じくらい誇らしそうでもあった。


姉がいなくなった屋敷は、少し静かになった。


もちろん、セラがいるので本当に静かにはならない。


「うたう!」


朝からセラが歌い、リオルが本を読みながら返事をし、ガレスが大声で笑う。

ミリアも変わらず柔らかく家を回している。


それでも、エリナの声がないだけで、どこか空気の締まりが違った。


玄関に木剣が置きっぱなしになっていても、すぐ叱る声がない。


リオルが本を開いたまま食卓に来ても、「食事中です」と注意する声がない。


ガレスがセラを高く抱き上げすぎても、「危ないです」と止める声が遅れる。


そのたびに、家族の誰かが少し笑い、少し寂しそうな顔をした。


レンは、自分が思った以上に姉の存在を頼りにしていたことを知った。


前世では、人に頼られることが多かった。

頼ることは、あまり得意ではなかった。


だが今世では違う。


父に守られ、母に包まれ、姉に叱られ、兄に教わり、妹に笑わされる。


それは、悪くなかった。


むしろ、ありがたいことだった。


エリナから最初の手紙が届いたのは、入学から十日ほど経った頃だった。


ガレスは封筒を見るなり、仕事用の書類よりも丁寧に扱った。


「エリナからだ!」


「落ち着いてください」


ミリアが笑う。


「破かないようにね」


「分かっている」


ガレスは慎重に封を開けた。


手紙は家族全員宛てだった。


学校の校舎が大きいこと。

寮の部屋は二人部屋であること。

食堂の料理は悪くないこと。

図書室が広く、リオルが好きそうな魔法理論書が多いこと。

礼法の先生が厳しいこと。

剣術の授業では、基礎を大切にするよう言われたこと。


そして、最後に家族それぞれへの短い言葉があった。


お父さまへ。

毎日の手紙は不要です。ですが、お元気でいてください。


お母さまへ。

寮の生活は問題ありません。心配しすぎないでください。


リオルへ。

図書室に面白そうな本がたくさんあります。あなたが来る頃には、少し案内できるかもしれません。


セラへ。

歌の練習を頑張ってください。帰ったら聞かせてね。


レンへ。

お父さまが無理をしないよう見ていてください。

あなた自身も、あまり妙なことをしないように。


レンはその一文を読んで、少しだけ目を細めた。


妙なこと。


姉は何かを感じている。


やはり鋭い。


「レン」


ミリアが微笑みながら言う。


「何て書いてあったの?」


「父さまを見ているように、と」


「まあ、お願いね」


「はい」


ガレスは少し不満そうだった。


「俺はそんなに見張られるようなことはしないぞ」


その日、ガレスは木剣を玄関に置きっぱなしにした。


レンはそれを見て、静かに片付けた。


エリナの言う通りだった。


それからも、エリナの手紙は時折届いた。


最初の頃は、学校生活の報告が多かった。


授業のこと。

寮のこと。

教師のこと。

剣術のこと。

魔法制御のこと。


しかし、何通か読むうちに、レンは手紙の行間に別のものを感じるようになった。


姉は、学校で軽んじられている。


直接そうは書いていない。


だが、言葉の端にそれがあった。


学校では、家名について尋ねられることが多いです。

父の武勲を恥じる必要はないので、胸を張って答えています。


礼法の場では、王都の古い家ならではの慣習を知らず、少し困ることがあります。

ただ、知らないことは学べばよいだけです。


剣術の授業では、思ったよりも見られています。

オルド先生の名を出すと、空気が変わりました。


言葉は、木剣より扱いが難しいです。

ただし、正しく使えば身を守れます。


レンはその一文を、何度か読み返した。


言葉は、木剣より扱いが難しい。


姉らしい言葉だった。


エリナは、学校で戦っている。


木剣だけではない。

魔法だけでもない。

家名、言葉、礼法、視線。


そうしたものの中で、自分の立ち位置を作ろうとしている。


六歳のレンにとって、学校はまだ遠い場所だった。


だが、姉の手紙を読むたびに、少しずつ輪郭が見えてくる。


貴族学校は、ただ学問を学ぶ場所ではない。


人を見る場所だ。

見られる場所だ。

立ち方を問われる場所だ。


レンはそう思った。


一度、エリナからリオル宛てに長い手紙が届いた。


魔法基礎の授業で、水晶板に魔力を薄く広げる練習をしたらしい。


リオルはその手紙を読んで、目を輝かせた。


「面白い」


「何がですか」


レンが聞くと、リオルは手紙を見せた。


「姉さま、魔力を押し込むんじゃなくて、沿わせるって書いてる」


「沿わせる」


「うん。剣と同じだって」


レンは少しだけ笑った。


姉は、剣から魔法を見ている。


それは、とても自然なことだった。


人は自分の得意なものから、世界を見る。


リオルは理論から見る。

エリナは剣と秩序から見る。

父は勢いと実感から見る。

母は人の表情と空気から見る。


自分は、理から見る。


どれか一つが正しいわけではない。


きっと、世界はそれらすべてでできている。


冬休み。


エリナが初めて帰省した。


ガレスは朝から落ち着かなかった。


「そろそろ着くか」


「まだ昼前です」


ミリアが言う。


「予定では午後でしょう?」


「早く着くかもしれない」


「馬車は気持ちで速くなりません」


リオルは本を読もうとしていたが、何度も窓の外を見ていた。


セラは「ねえさま、かえる」と歌っていた。


レンも、普段より少しだけ庭の方を見る回数が増えた。


やがて、門の外から馬車の音が聞こえた。


ガレスが立ち上がる。


「来た!」


「あなた、走らないで」


ミリアの声も聞かず、ガレスは玄関へ向かった。


レンたちも続く。


馬車が停まり、扉が開く。


エリナが降りてきた。


少し背が伸びていた。


顔つきも、以前より少しだけ大人びている。

だが、家族を見た瞬間、表情が柔らかくなった。


「ただいま戻りました」


ガレスは一歩踏み出した。


「エリナ!」


「お父さま、外です」


「うむ」


ガレスはその場で踏みとどまった。


よく耐えた。


ミリアが笑いながら娘を抱きしめる。


「おかえりなさい」


「ただいま、母さま」


リオルが近づく。


「姉さま、図書室どうだった?」


「開口一番がそれですか」


「うん」


「広かったわ。あなたが好きそうな本も多かった」


リオルは嬉しそうに笑った。


セラがエリナの足に抱きつく。


「うた、きく?」


「もちろん」


レンは最後に頭を下げた。


「おかえりなさい、姉さま」


エリナはレンを見た。


「ただいま、レン」


そして少し目を細める。


「少し背が伸びましたね」


「姉さまも」


「あなたほどではありません」


「そうでしょうか」


「そうです」


いつものやり取りだった。


だが、レンには分かった。


姉は少し疲れている。


身体ではない。

心の表面が、少し硬くなっている。


学校で気を張っていたのだろう。


夕食の席で、エリナは学校の話をした。


食堂の料理。

寮の規則。

剣術教師の厳しさ。

魔法基礎の課題。

王都の貴族家の生徒たち。


明るく話していた。


だが、全部は話していない。


父を心配させないように。

母に余計な不安を与えないように。

弟たちに重い話を聞かせないように。


そうやって、選んで話している。


レンは静かに聞いていた。


その夜、食後に庭へ出ると、エリナも外に来た。


冬の空気は冷たい。


庭の木々は葉を落とし、月明かりが石畳に薄く伸びていた。


「眠れませんか」


レンが聞くと、エリナは少し笑った。


「あなたもでしょう」


「私は少し風を」


「そういうところです」


「何がですか」


「あなたは、子供らしい言い訳が下手です」


レンは黙った。


姉はやはり鋭い。


エリナは庭を見ながら言った。


「学校は、思ったより難しい場所でした」


「勉強が、ですか」


「それもあります」


「それ以外も?」


「ええ」


エリナは少し間を置いた。


「家名で人を見る者がいます。魔力で人を見る者もいます。古い家かどうかで態度を変える者もいます。教師にも、そういう方はいます」


「そうですか」


レンは静かに答えた。


「つらいですか」


エリナは少し考えた。


「嫌ではあります」


「はい」


「でも、つらいだけではありません」


「なぜですか」


「見えるからです」


エリナは庭の奥を見た。


「誰が人を見下すのか。誰が見て見ぬふりをするのか。誰が本当は困っているのか。誰が勇気を出そうとしているのか」


レンは黙って聞いた。


「学校は、そういうものがよく見える場所です」


「道場のようですね」


エリナは少し驚いたようにレンを見た。


「道場?」


「はい。立ち方や呼吸で、その人が少し見えます」


エリナはしばらく黙り、それから小さく笑った。


「やはりあなたは、時々変です」


「よく言われます」


「誰に?」


「姉さまに」


「それは正しい評価です」


レンは少し笑った。


エリナは、少しだけ表情を緩めた。


「でも、悪くはありません」


「学校が?」


「ええ。大変ですが、学ぶことは多いです」


「それはよかった」


「あなたも、いずれ行くのです」


「はい」


「たぶん、あなたも軽く見られます」


レンは姉を見る。


「魔法のことで?」


「おそらく」


「それは仕方ありません」


「仕方ないで済ませすぎるのも問題です」


エリナは少し厳しい声で言った。


「あなたは、自分を後ろに置きすぎるところがあります」


レンは答えなかった。


エリナは続ける。


「隠すべきことがあるのは分かります。全部見せる必要はありません。でも、自分を小さく扱いすぎる必要もありません」


六歳の弟に言うには、少し大人びた言葉だった。


だが、エリナは本気だった。


レンはしばらく考えた。


「覚えておきます」


「その返事は、半分くらいしか信用しません」


「厳しいですね」


「姉ですから」


エリナはそう言って、屋敷へ戻っていった。


レンは一人、庭に残った。


学校。


家名。

魔法。

言葉。

視線。

立ち位置。


姉はそこで戦っている。


自分も、いずれそこへ行く。


その時、自分は何を見るのだろう。


何を隠し、何を見せるのだろう。


レンは冬の月を見上げた。


その問いの答えは、まだ出なかった。


エリナは冬休みが終わると、また王都へ戻っていった。


今度は、ガレスも少しだけ泣くのを我慢した。


少しだけである。


春になり、また手紙が届いた。


エリナは二年生になった。


手紙には、学校で少しずつ知り合いが増えたことが書かれていた。


礼法に詳しいクラリスという令嬢。

剣術でよく立ち合うダリオンという男子。

魔力が少なくて悩んでいる生徒。

課題の整理を手伝った生徒。


詳しい話はなかった。


だが、文面から分かる。


姉は、学校の中で自分の場所を作り始めている。


ただ耐えているのではない。


学び、見て、言葉を選び、少しずつ周囲を変えている。


レンは手紙を畳んだ。


リオルは隣で魔法理論の本を読んでいる。

セラは庭で歌っている。

ミリアは窓辺で針仕事をしている。

ガレスは剣の手入れをしながら、また廊下を歩こうとしている。


「父さま」


レンは声をかけた。


「何だ?」


「剣の手入れをしながら歩くのは危ないです」


ガレスは固まった。


「……エリナに頼まれたのか?」


「はい」


ガレスは苦笑した。


「王都にいても叱られるのか」


「姉さまですから」


「そうだな」


ガレスは椅子に座り直した。


レンはその様子を見て、少し笑った。


姉は家にいなくても、家の秩序を守っている。


大したものだ。


そして季節は進む。


レンは七歳に近づいていた。


エリナは王都で学び、リオルは魔法への興味を深め、セラの歌は日に日に明るくなる。


アルクレイド家の日々は穏やかだった。


だが、その穏やかさは永遠ではない。


レンが七歳になった夏。


王都からの帰路で、彼の異常性は、露見することになる。

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