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-最終話- 若返りの過ぎた魔王様が友達として連れてきたのはやっぱり勇者 その1

「おめーは本気で吾輩が魔王だって言うつもりかニャ、マカマフィン」

「ああ、本気だぜ。お前は魔王様の振りを振りをする日が来るとは思わなかったって言ったけど、そりゃそうだろう。お前が魔王様なんだから」

「まさか、それだけを根拠にそんなこと言いだしたんじゃないだろうニャ」

「もちろんそれだけじゃない。魔王様が自分に時間を戻す術を使った方法を考えればそういう結論になる」

「興味深い話ですニャー」

 時間を戻す術のことについて言及してくるとは、マカマフィンの発言は単なる思い付きではないようだ。


「自分で自分に若返りの魔法をかけるなんて簡単にできるもんじゃない。術を進めようとしている自分の時間が戻っちゃうわけだからな。若返りなんて状態異常のようなものだ。本来なら誰か別のやつに術をかけてもらうことが望ましい」

「だけどニャー、魔法陣で補助すれば自分で自分に術をかけることも可能なのニャ」

「魔法陣は術が完了するまで自動で魔法が進むものだ。ところが魔王様が時間を戻すために使った魔法陣は術の途中で停止されていた。つまり術の途中で誰かが介入したわけだ。魔王様ならそんな芸当ができるかもしれない。だが、別の誰かが介入したと考える方が自然だ」

「それが吾輩だというんですかニャ」

「あの場にいたのは魔王様以外にはお前だけだからな」

「だからって吾輩が魔法陣を止めたとは限らないニャろ」

「そもそも魔王様の術を妨害した者がいると最初に言い出したのはお前だ。そのとき、術を止まったのはタリュートゥの魔法改変とは無関係だと断言したよな。それはつまり、お前は術が止まった原因を知っているってことじゃないのか?」

「なるほどニャー。ちゃんと覚えていたんだニャ。でも、我輩が術を止めたとしても、それでどうして吾輩が魔王ってことになるんですかニャ?」

 そう、それだけでは足りない。

 マカマフィンが示したことは時間を戻す術をしたときその場に第三者がいたという可能性だけである。


「お前、つまりゴーレムのシュウクレムは時間を戻す術を止めるためにその場にいたわけじゃない。別の目的があって傍に置いていたんだ」

「どんな目的ですかニャ」

「よくよく考えてみれば若返りの術を使う上で問題になることがある。それを解決する目的だ」

「それはなんニャ。もったいぶらずに言うのニャ」

「問題は若返ったとき記憶がどうなるのかだ。時間が戻ることで記憶が消えてしまうんじゃないだろうか」

「ほう、記憶ですかニャ」

 マカマフィンはあの術のことについてのプロセスに見当がついたようである。

「その疑問の解決法は思いついた。タリュートゥがバックアップが大切だって言ったことでな。記憶を一時的に別のところへ移しておけばいいんだって。つまり、魔王様の肉体を初期化するためにシュウクレムへ記憶のバックアップをしておいたわけだ」

「そんなことが可能ですかニャ」

「ああ。前例はある。その方法はハハルアピの言っていたことで分かった。精神と肉体を分離して肉体のみを若返らせればいいんだってな。つまり、魔王様は生命を維持できる肉体と魔法陣を発動できる記憶を含む精神に分かれたわけだ。そして、精神を仮の肉体であるゴーレムの中に入れればいい。何かあったときに肉体があった方がいいもんな。実際、時間を戻す術が暴走したとき魔法陣に対して物理的に干渉して停止させたんだろう」

「筋は通っているようだニャ」

「術を急停止させた結果、肉体と精神を元に戻すことができなかったのだろう。残ったものは記憶を失った肉体と突然意思を持ち出したゴーレムだ。それが朝太とカステラってわけだ」

 マカマフィンの推理は、ある重要な一点を除いておおむね正解である。


「状況証拠ばかりで物的証拠はないようですニャ。タリュートゥもハハルアピも呆れて何も言えないようだニャ」

「そういえば、さっきからずっと黙っているけど、どうしたんだよ」

「ええと、魔王様が善の心の朝太と悪の心のカステラに分裂したって話でしたっけ」

「いや、違うし。ちゃんと聞いとけよ」

「吾輩は何コロ大魔王だニャ」

「やーね。まさか逆ってことはないでしょ。朝太が悪の化身とか……ちょっとありかもね」

「そうか? 俺は嫌だけどな」

「冗談はさておき、カステラの正体が魔王様だって話でしたね。それに関しては、まあ、そうだろうなという感想ですね」

「は?」

 マカマフィンは変な声を出す。

「やーね。あたしたちは薄々気が付いていたわよ。そもそもカステラの性格って魔王様そのまんまじゃないのよ」

「いや、気が付いていたなら言おうぜ。何で黙ってるんだよ」

「言えませんよ、そんなこと。どういうつもりなのか分かりませんが、魔王様が隠そうとしていることを我々が暴露するような真似ができるわけじゃないじゃないですか」

「そうよね。むしろどうして言えるのかしら。魔王様の秘密を堂々と言ってのけるんだから、あんたって怖いもの知らずよね」

「魔王様への忖度があったのかよ。いい気になって推理を披露していた俺が恥ずかしいじゃないかよ」

「いや、吾輩だって魔王であることを気づかれていないと思って猫の振りを続けてきたことが恥ずかしいのニャ」

「おい、口を滑らせてるぞ。やっぱりお前が魔王様ってことじゃないか」

「ニャー、うっかりしておりましたのニャ」


「猫を中国語でマオっていうらしいのよ。あたしは、そういう洒落なのかと思っていたわよ」

「いや、それは偶然ですニャ」

「肉体と精神に分かれたと考えたようですが、魔王様はなんでもありですからね。未来の魔王様とか、並行世界の魔王様なんかを呼び出したなんてこともあり得ないとは言い切れませんでした」

「さすがにそこまではやっていないのニャー」

「一応はっきりさせておきたいんだけどさ。お前が魔王様ってことでいいんだよな」

「はい、そうですニャ」


 マカマフィンが指摘した通り、吾輩が魔王なのだ。

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