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-10話- 四天王の実力はどうやら不条理レベル その3

 魔王城から南にある湖にはイエティのサーベルティが率いるマカマフィン軍が陣を構えていた。

 マカマフィン軍は主に水中にいる魔物が所属している。タコのような下半身を持つスキュラ、海の老人ネレウス、巨大のイカのような魔物のクラーケン、水棲の馬であるケルピーなどがいる。このほか、霜の妖精ジャックフロストや水分たっぷりのスライムも所属している。


 その軍の前に四天王のタリュートゥが、人間の辰人の姿のまま対峙していた。

「マカマフィン軍副官のサーベルティ。あなたには以前にもこの姿を見せたことがありましたよね。だから自己紹介はしませんよ」

「もちろん、あなたが誰なのかは存じているであります。タリュートゥ様」

 サーベルティが答える。

「ならばさっそく本題に入りましょう。いますぐ軍を撤収させなさい」

「本来ならば、あなたが我が軍に命令するのは越権行為であります」

「いまさらそのことを持ち出しますか。マカマフィンを連れてきて撤収命令を下すのは簡単ですが、力ずくで止めさせてもらいますよ」

「望むところであります」


 スキュラとネレウスはクラーケンの陰に隠れて魔法で攻撃する準備をする。ジャックフロストはケルピーに乗って後方に待機する。

「ふむ、よく訓練された動きですね。しかし、これはどうしますかね」

 そう言うと、タリュートゥは体の前方に光る壁を作りだした。

「みんな気を付けるであります。あれは魔法のターゲットを変更する技であります」

 敵の魔法を鏡のように反射して相手や第三者へ飛ばす威嚇用の術である。

「以前、魔王様の発案で四天王が何か共通のテーマを持った技を作るということがありまして、それぞれ鏡をモチーフに魔法を作りました。私のこの魔法は今鏡の術と言います」

「みんなでおそろいの技を作ろうなんて、どれだけ仲がいいのでありますか」

「いいじゃないですか、仲が悪いよりは。さて、私にこの術がある限り、うかつに魔法は使えませんよ」

「もちろん対応済みであります。こうするのであります」

 サーベルティが命じるとスキュラとネレウスが魔法によって湖の水を操りだした。

 その水はタリュートゥの上方に集まり大きな水の塊を作り出した。

 そして、サーベルティとジャックフロストが魔法で水の塊を氷の塊へと変えた。

「なるほど、そうきましたか」

 魔物たちが水を操る魔法を解除すると氷の塊は重力によってタリュートゥへと落下してくる。

「直接攻撃するのがダメなら間接的に攻撃するだけであります。魔法の力ではなく物理的な力で落ちてくるものを跳ね返せないはずであります」

「確かに直接お返しするのは無理ですね。では、私も間接的にお返ししましょう」

 タリュートゥが氷の塊に手をかざし魔法を使うと氷の塊は爆発したように砕け、氷の粒が四散した。


「何をしたのでありますか?」

「氷の中に魔法で熱源を作り出して氷の一部を水蒸気にしました。それで氷が破壊され飛び散っただけです」

「……あなたに魔法攻撃は効かないと言うことでありますね」

「ええ、私に魔法で対抗しようとは思わないことです。もっとも、魔法以外で私に有効な攻撃ができるのは、魔王様を別とすれば四天王でも毒を操るマカマフィンくらいのものでしょうか」

「マカマフィン様のいないマカマフィン軍では相手にならないでありますか」

 上司の名前を出されてサーベルティは複雑な表情を見せる。

「あなたは四天王同士が仲がいいと言いましたが、私は副官同士も仲がいいと思っていますよ。じゃれあう程度の喧嘩はしても軍を巻き込んでまで戦うことはないと思うのですがね」

「我々だけの問題ではないのであります。軍の中では不平や不満が溜まっていて、もう抑えきれないのであります。軍を維持するためには敵を作って行動する必要があったのであります」

「……どうやらあなたたちには想像以上に苦労を掛けてしまっていたようですね。では、やはり四天王の力を見せておくことにしましょう。魔物は強い者には逆らえないものですからね」

「本気で行かせてもらうであります」

「構いませんよ。しかし、やはりこれが魔王様と我々四天王の差というところでしょうか。魔王様と戦おうだなんて思う魔物は魔王軍にはいないでしょうからね」


「先ほど四天王の皆さまで鏡の術を作ったとおっしゃいましたが、奇しくもこちらの切り札も鏡であります」

 サーベルティの指示によりスライムがタリュートゥの足元まで近づいていた。スライムは鏡を取りだした。

「それは魔王様のコレクションの……」

科戸しなとの鏡であります。魔力をかき消す効果を持つであります」

 スライムが鏡をかざすと鏡の光に照らされたタリュートゥから人の姿が失われていく。

「罪や汚れを吹き払うと言われる科戸の風 。そのイメージを持つ鏡ですね」

「それはあくまでイメージであり、魔法を捻じ曲げる効果を持つであります。ですが結果は同じであります」

「あーあ、氷が融けるだけじゃなく魔法が解けちゃいましたか」

 タリュートゥは元の姿に戻っていた。角が一本欠けたドラゴンの姿に。

「その姿は……」

「魔法によって人の姿となっていたものですからね。こうなるのは当然でしょう。元に戻ると人間態になるのは大変なんですよ。きちんとその時の姿のバックアップを取っておかないといけませんからね。記録は大切です」

「しかし、奪ったのは姿だけではないのであります。この鏡で照らされている限り、魔法は無効であります」

「問題ありませんよ。魔法なんかなくてもあなたを倒すことくらい訳はありません」

「ずいぶんな自信でありますな」

「魔法を封じただけで私に勝てると思っていませんよね? 魔力が高ければそれだけ肉代も強化されるものです。あなたの目の前にいるのはただの強化したドラゴンですが、それで十分でしょう」

「ずいぶんな自信でありますね」

「炎なら魔法を使わずとも自前で吐き出せますからね。もっとも、ブレスの威力の調整は魔法のコントロールほどうまくはありませんが」

「それは、つまり……」

「手加減は難しいということです。魔法が使えないことで狂暴化したと思ってください」

「なんとも理不尽な話であります」

「早めの降参をお勧めしますよ。魔王軍としてもこんな局面であなたほどの大駒を失うわけにはいきませんからね」

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