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-8話- 勇者召喚の魔法陣によって導かれた先がどうやら地元 その3

 なぜか真洋と召喚術士とで話し合いをすることとなった。傍から見れば中学校の制服を着て猫を抱えた少年と黒いローブをまとった少女の会談と言う妙な光景である。

「私の名前はフェロン。この国で一番の魔術師よ。できるのは召喚術だけじゃないんだから」

「それはどうも。俺は真洋。勇者じゃない者だ」

「おめー、それ気にいったのかニャ」

「どうでもいいだろ」

「こう人が多くちゃ落ち着かないでしょう。人払いをするんだから。少し待っていて」

 そう言うとフェロンは召喚のための部屋から国王やほかの魔術師を追い払った。


 フェロンは人を払うと部屋の窓を開けた。外には解放感あふれる空があった。

「ずいぶんと見晴らしのいい場所だな」

 召喚に使用された部屋は高い位置にあったようだ。窓の下には集落があり、さらにその先には見渡す限りの海が続いていた。

「お城の上部に作った部屋なんだから当然よ。ここは見張り塔のようなものなんだから」

「異世界と言っても風景自体はあんまり変わらないもんだな」

「それなんだけどニャ、どうやらここは魔界のようだニャ」

「魔界って俺たちの故郷か?」

「そのようだニャ。大気中に漂うマナを感じるのニャ」

「俺には分からないけどな。いや、そもそも魔界ってこんな普通に人間が住んでいるものなのかよ」

「そうニャよ。魔界にも人間の集落があって、この国はその一つのようなのニャ。まあ、ここは国と言っても村くらいの規模しかないようだがニャ」

 眼下に広がる街並みは大国と呼べる規模ではなかった。

「人間がいるとは聞いていたけど、もうちょっと隠れて住んでいるもんだと思っていたぜ。本当に魔界なのか?」

「ちょっと上を見てみるのニャ」

「うお、月が二つあるな。昼間だから分かりにくいけど、魔界には月が二つあるもんな」

「そもそも、おめー、転移魔法でこの世界に来たわけニャろ」

「仲間がいる場所を指定して合流するタイプの転移魔法だからな。行き先が分からないまま移動できるから、ここがどこなのか分からないんだよな」

 などと、真洋はすごいのか抜けているのかわからないことを言うのだった。


 フェロンが二脚の椅子を用意し、そこに真洋とフェロンが着席する。話し合いの始まりである。

「とにかく、フェロンって言ったっけ。勇者を召喚しようとしていたのはお前ってことで間違いないんだな」

「そうよ。でも、あんたみたいな変なのを呼び出すつもりはなかったんだから」

「いやまあ、そうは見えないだろうけど、結構とんでもないもの呼び出しているからな、お前。何があったか知らないけど、俺としては勇者を召喚さえしないと確約できたらこのまま帰ってもいいんだけどな」

「私たちには勇者様のお力が必要なんだから。神様勇者様ドレイヌ様って心境なのよ」

「誰だよ、その最後のふざけた名前のやつは」

「ドレイヌ様はこの地の守る精霊のようなものよ。火山の噴火から国を守ったと言う伝承があるんだから」

「火山って、窓から見た限りじゃ周りに山なんてなかったじゃないかよ」

「知らないわよ、そういう伝承なんだから。ねえ、あなたって勇者様じゃないなら、ドレイヌ様ってことはない?」

「余計にねーよ」

「とにかく私たちには勇者様の力が必要なの。魔王軍の侵攻があるんだから」

 フェロンの魔王軍という言葉を聞き、真洋からそれまでのやる気のない表情が消えた。


「何かの間違いじゃないのか? 魔王軍の侵攻なんて」

「魔王の存在なんて話を急にされても信じられないかもしれないけど、本当なんだからね」

 少女もまさか目の前の少年が魔王軍の幹部である四天王だとは想像できないであろう。そしてその魔王軍には現在そんな命令は出ていないはずなのである。

「信じられないのはその部分じゃないんだけどな。なあ、カステラ」

「何ニャ」

「どういうことだ? 人間の王は国ごとにいるけど魔王ってのは複数いるわけじゃないよな。魔王は魔界を統べる者のことだもんな」

「軍内に違反者がいるのかもしれないニャ。あるいは何者かが魔王軍を騙った偽物の魔王軍かもしれないのニャ」

「うーむ。なあ、フェロン。魔王軍について何か知ってることはないのか?」

「そうね、この国の近くの海には魔王軍の四天王であるマカマフィンの住処があるらしいわ。奴が目を光らせているおかげで海を渡ることは危険なのよ」

 フェロンは目の前の少年がそのマカマフィンだとは夢にも思うまい。

「……嘘だろ。知らなかったぞ、そんなこと」

 当のマカマフィンもこの調子である。

「どうやら思っていた以上にここはおめーの地元だったようなのニャ。むしろマカマフィンの縄張りなら海の魔物が無駄に暴れることはないはずニャ。海が危険だとしたら単に地形や気候の問題ニャろ」

「召喚先が地元ってどうなんだよ……」

「あの、さっきかから気になってるんだけどいいかしら?」

 フェロンが口をはさんでくる。

「こっちのことだ。気にするな」

「でも、どうして猫がしゃべっているのよ」

「ああ、そっちかい」

 そんな会話をしている途中、外の方から慌ただしい声が聞こえてきた。

「大変だ! 魔王軍が攻めてきたぞ!」


 城外の広場には多数のリビングアーマーと呼ばれる動く西洋鎧型の兵士たちが待ち構えていた。

 それをフェロンとともに部屋の窓から眺める真洋。

「おい、カステラ。あれってお前の部下じゃないのか?」

「そのようだニャ。魔力で動いているだけの操り人形ニャから、どこかに操作している司令官役の魔物がいるはずニャ」

「昔のお前も魔王様の魔力で動いていたと思われていたけど、結局はっきりしないんだよな。魔王様の魔力ならこれだけの数でも遠隔操作することもできるだろうけど」

「普通ならこれだけの数を動かすとなると近くにいなくちゃ無理なのニャ。おや、何か動きがあるようだニャ」

 城からも数人の人が出てきて魔物の群れと対峙する。先陣にいるのは国王である。

「おや、国王自ら前線に出てきたぞ。意外と武闘派のようだな」

「あれだニャ。小さい国だから自分で兵の指揮もやらなきゃならんのニャろ。自分も現場に出る中小企業の社長みたいなものなのニャ」

 窓のから見える光景を目にして、フェロンは部屋から飛び出した。


 鎧の魔物たちの中からメタリックな女性型の機械のモンスターが前へ進み出た。

「ニャ、あれは我がシュウクレム軍の副官のパンドナだニャ」

「やっぱりお前の部下かよ。副官クラスだから俺も見たことある顔だけどさ。それにしても、四天王は副官に軍の指揮権を与えはしたけど、ずいぶん自由にやってるようだな」

「吾輩しばらく動けなかったからニャ。暫定措置としてタリュートゥあたりが他の副官より強い権限を与えたのかもニャ」

「それでも勝手な進軍までは許していなかったはずだよな」

「人間界への侵攻はもちろん、魔界にいる人間にも手を出さないことになっているはずなのニャ。どういうことか吾輩も預かり知らないことなのニャ」

「じゃあ、問いたださないといけないよな。一応上司としてお前がどうにかしないといけないんじゃないか?」

「今の吾輩の姿じゃ上司のシュウクレムだと理解させられないだろうニャ。できればパンドナには知られたくないのニャ」

「そんなこと気にするのかよ」

「上司としてパンドナを実力行使で止めようにも、あれだけの軍勢をどうにかするのは難しいかもしれないニャ。あーあ、どこかにあれを止められる実力者がいないものかニャ」

「……俺がやればいいんだろ。直接の上司じゃないとはいえ、上官である俺が出ればおとなしく撤退するだろうしな」

「ありがたいのニャ。今度マタタビをおごってやるニャ」

「いらねーよ。俺に必要ないって分かっていてよこそうとするんじゃない」

「それじゃお礼に忠告をしておいてやるのニャ。おめーはもっと洞察力を鍛えた方がいいのニャ」

「どういう意味だよ」

「力を持つものを呼び出すあの魔法陣で吾輩が召喚されたということは、吾輩は猫とはいえ相応の強さを持っているということニャ」

「あ」

 真洋は初めて気づいたようである。

「さらに言えばニャ、あれで朝太や夕貴が召喚される可能性は限りなく低いということニャ。実は心配するようなことは起きないのニャ」

「気が付かなかったぜ」

「タリュートゥやハハルアピも気づいていたと思うのニャ」

「俺っていいように利用されてるな。一度言ったからにはパンドナの相手は俺がやるけどさ」

「がんばれニャー」


「それにしてもさ、足跡を見る限り、あいつ結構体重ありそうだな。踏みつけられた草がかわいそうだ」

 パンドナの通った地面には深い足跡が残されていた。

「スマートボディにした影響で密度は高いと思うニャ」

「女性型にしては凹凸のないボディをしていると思ったら薄型だったのか」

 失礼なことを言う真洋。

「だけど、おめーが園芸に思い入れがあるとは思わなかったニャ」

「朝太が植物を育てているせいかな。以前は母の日用のカーネーションを、最近じゃお前が食べるための草を育てているんだよ」

 猫は毛づくろいをしたことで胃に溜まった毛を、草を食べることで吐き出すものなのだ。

「でも、吾輩そういうの食べないんだけどニャー」

「魔王様が用意してくれてるんだぞ。お前は普通の猫らしくハムハムしとけばいいんだよ。それで、パンドナってどんなやつなんだ」

「あれはニャ、魔界の魔法工学で作ったボディに人間界で手に入れた人工知能を組み込んだ試作品なのニャ」

「人工知能って、なんかすごそうだな」

「いやニャ、本当なら軍事用の人工知能を使いたかったのニャ。だけど、手に入らなかったから何とか入手したバーチャルアイドル用のものを使用したのニャ」

「おい、そんな妥協の仕方があるかよ」

「軍事用の人工知能なんて簡単には手に入らないのニャ。まあ、あくまで人工知能はサポート用だから平気ニャろ。それでもあれは試作品ながら吾輩が作った傑作なのニャよ」

「お前が作ったのかよ。あれ? でも、あれは魔王様が作ったんじゃなかったっけ? 四天王の副官はみんな魔王様が作るか育てるかしたって話だぞ」

 真洋は意外と記憶のいいところを見せる。

「それはあれニャよ。おめーはプラモデルを作ったと聞いて、金型から作ったと思うのかニャ?」

「組み立てただけかよ。お前と魔王様どっちが組み立て担当なんだ? まあいいや、ちょっとあいつを止めて来る」

 そう言うと真洋は部屋から表に出た。


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