-4話- 四天王風属性のオマージュしたのはどうやらみにくいあひるの子 その2
「それで朝太はいい子にしていた?」
羽春は家を離れている間の朝太の様子を気にしているようである。
「それが、あの後すぐ勇者が来て二人で遊んでいたんだけど、喧嘩を始めてな」
羽春の質問に真洋が答える。
「やーね。本当なの?」
「まさか、魔王様と勇者の決着をつけるときが来たと言うのでしょうか。魔王様がお望みならば、四天王としても魔王様のお力にならなくてはなりませんね」
「そんなに深刻なものじゃないと思うぞ」
苦笑いのような表情を浮かべる真洋。
「そうね、ちゃんと朝太の話を聞いてからの方がいいわ」
「それで、魔王様……朝太はどうしているのですか?」
「部屋でいじけている」
辰人と羽春はそっと部屋を覗くと朝太は眠りこんでいた。
「おや、寝てしまっていますね」
「あら、やーね。顔が赤いわ」
羽春はそう言うと朝太の額に手を当てた。
「ちょっと熱があるみたい。風邪かしら。昼間、水をかぶったのがいけなかったのかもしれないわね」
「困りましたね。怪我は魔法で治せても病気の治癒は難しいです」
「魔法は変質させるのに風邪は治せないのかよ」
真洋がそんな疑問を口にする。
「これが魔法によって起きている症状だったら対応できるのですが、ウイルスは範疇外です。あなたこそ得意の毒物操作でウイルスを駆逐することはできないのですか」
「やろうと思えばできるかもしれないけど、ただの風邪にそこまでする必要があるのか疑問だぜ。そもそもこれってただの風邪なのか? 魔王が風邪なんて引くものなのか?」
「そーね、ただの風邪じゃないのかも。魔王風邪とかそんな名前の病気かもね」
「妙な病気を作るんじゃねーよ。そんなピンポイントな風邪、誰から移されるんだよ」
真洋は本気とも冗談とも取れない羽春の言葉にいら立ちを見せる。
「我々がウイルスのキャリアとなって免疫の弱い子供である魔王様だけ発症した可能性はありますよ。調べてみましょう」
辰人は真洋をいさめる。
「とにかく、正体がわからない以上、朝太自身の免疫で治してもらうために普通の風邪の治療を施そう」
「それがよさそうね。魔王様がどんな魔物なのかあたしたちも知らないもの」
「医者に見せるのが一番だが、そうもいかないので市販の子供向け風邪薬で対応する。食事は消化のいいお粥かうどんにして、できればビタミンも補給したいな。あとは汗を拭きつつ安静に寝かせておくのがいいようだな」
真洋は風邪について調べたことについて四天王たちと確認していた。
「ビタミンの補給は果物がいいわよね。リンゴをすりおろしたものがいいかしら」
「それじゃ薬とリンゴは俺が買ってこよう」
「私はもう一度魔界に行ってなにか使えるものがないか探してみましょう。ウイルスの正体やほかにも調べたいこともありますし」
そんな会話をしていると、朝太が目を覚ました。
「起こしちゃったかしら。朝太、苦しくない?」
「うん、平気……」
「朝太、ユウキちゃんと喧嘩しちゃったんだって?」
羽春がそう聞くと朝太は小さくうなずく。
「それで、朝太はどうしたいのかな?」
「……仲直りしたい」
朝太はそう呟いた。
「そう。ちゃんと仲直りするためには、ちゃんと風邪を治さないとね」
「うん」
真洋はそんなやり取りを感心しながら見ていた。
「なんかすごい母親っぽいな」
「あんまり茶化さないの」
そう言いつつ、羽春はまんざらでもなさそうな顔を見せていた。
その後、朝太は食事を食べ薬を飲むと再び眠りについた。それを真洋と羽春が見守っている。
「朝太がユウキと仲直りがしたいのなら魔王と勇者との全面対決にはならなそうだな」
「あたしたちが先走って勇者に何かしたら魔王様の望みは叶えられないものね」
「四天王たちの役目は魔王の野望の実現だからな。朝太とユウキの仲直りの方法を考えなきゃいけないな」
朝太の様態が安定してきたようなのでそれを見守る真洋と羽春は余裕が出てきたようである。
「ええ、病は気からという言葉もあるし、病気を治すにもメンタル面のケアは大切なことよ。朝太の心配事を取り除くことが病気の治療にもつながるのね」
「だけどよ、魔王と勇者の仲直りなんて具体的にどうすればいいのか見当もつかないぜ。漫画だと殴りあってそのあと仲直りなんてパターンもあるけどさ」
「さすがに殴りあいを始めたら止めるわよね。そもそも難しく考えすぎよ。子供の喧嘩なんて次の日には何もなかったように遊んでいるなんてこともあるわよ」
「そうなればいいけどな。何しろ魔王と勇者だから、これが因縁になって敵対を始めるかもしれない」
「大げさなのよ。朝太としては仲直りがしたいわけだから、なにかプレゼントでもして機嫌を直してもらうのがいいと思うわ」
「勇者へのプレゼントかどんなものがいいのかね」
「もらって喜びそうなものじゃなくちゃね」
魔王軍のメンバーが勇者の喜びそうなことを考えるというのはいまさらながら妙な光景である。これが罠にかけるためなどではなく仲直りのためなのでなおさらだ。
「勇者が欲しいものと言ったら伝説の剣とかか?」
「そんな物騒なものあげちゃ駄目よ」
「確かにそうだな。それに、仲直りの印に魔王から勇者に送られる剣なんて、何か裏がありそうだよな」
たいがい勇者とは伝説の剣に選ばれるものであるが、それは魔王を倒すためである。
「そうね。武器がダメなら防具って手もあるけど、鎧や盾や兜なんてやっぱりプレゼント向きじゃないわよね。せめてアクセサリーにしましょうよ」
魔法石を使ったアクセサリーには様々な効果が付属されているものであり、勇者が欲しがってもおかしくないものである。
「だが、五歳児が送るものにしちゃ豪華すぎるだろう。アクセサリーとまではいかなくても魔法石を使ったマジックアイテムなら喜ぶかもな。そういえば、魔王城で見つけたコレクションのマジックアイテムや魔導書ってどんなものだったんだ?」
「あれは駄目よ。使い方によっては危険ですもの、プレゼントには向かないわ。それと同人誌もね」
「五歳児にそんな大人向けなものプレゼントできるかよ」
「やーね。あたしは同人誌が年齢制限があるものだなんて言った覚えないわよ」
「……謀りやがったな」
勝手に想像していただけである。
「魔法効果の付いたものって勇者の好みかもしれないけど、危険なのよね」
「難しいな。消耗品の方がいいかもしれない。薬草とか、ポ―ションとかさ」
「やーね。薬草を送るならお花とかのほうがいいわよ」
「花なんて勇者に送ってどうするんだよ。アクセサリーだの花だの、自分がもらってうれしいものを言ってもしょうがないだろ」
結論の出ない話し合いをしているところに電話がかかってきた。
「ええ、ええ、そうなのよ。ありがとう。それじゃあ、またね」
羽春は通話を終えて受話器を置く。
「うちに電話かけてきてそんなに話し込むなんて、相手はユウキと理緒の母親か」
真洋が電話をかけてきた相手を推測する。
「そーよ。ユウキちゃんが元気がないから何かあったのかって心配していたのよ。向こうも喧嘩したことを気にしていたようね。風邪が治ったらまた会おうってことになったわ」
「やれやれ、俺たちがあれこれ考えることもなかったようだな」




