↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

第一章 悠久の塔 第七層 TRS OBTdate.3 その6

忘れた頃にそっと更新

(でも、鍵に結び付くモノは無かったぞ……はぁ、まだ先があると考えると面倒になってきたぜ)


 黒板が床に入りきると奥の部屋と完全に繋がった状態となる。


 奥の部屋には祭壇があり、その手前に『マシウスの家畜奴隷』がいた。

 『マシウスの家畜奴隷』は『マシウスの奴隷』より動きは遅いが耐久力と力が強く女型奴隷とも奴隷ちゃんなどの愛称で呼ばれている魔物《モブ》だ。人によって違うとは思うが俺にとっては動きの遅い魔物《モブ》の方が楽だ。特に攻撃力は高いが回避は非常に楽な奴隷ちゃんは3体くらいまでは引き連れても回避しきる自信があるくらいだ。


(とりあえず動きをしばらく止めて部屋を調べるか……)


 俺は隣の部屋へ移動し、敵の注意を引きながら効果範囲に入った瞬間にスキルを使用する。


「<停滞《ステイシス》>!」


『ありゃ、敵がいるの?』


「まぁ、奴隷ちゃんだから余裕だよ……奴隷ならカンベンだけどな」


 俺はアコちゃんにそう言って、急いで祭壇を調べる。


 祭壇の上には穴が一つ開いていた。

 この穴は妙な形ではあったが、鉤状の物を入れれそうな雰囲気だったのでとりあえず一本入れてみる……。


(これじゃないか……)


 とりあえず、三本のうち一本でも当たればいいかという思いで次の一本を試す。

 奥まで突っ込むと何かが当たるような感触が伝わって来て、これはアタリではないかと期待に心を膨らませる。


 カパッと軽快な効果音が鳴り祭壇の引き出しが開いた。


(カパッってなんだよ……まったく)


 と、緊張感の無い効果音に心の中でツッコミを入れながら引き出しの中を確認すると、棒状の金属片を見つける。


 金属片は特殊アイテム扱いでUIに奴隷部屋組鍵のパーツと表示される。


(ここはちゃんと表示アリなのかよ……ちゃんとデバッグしてるのか?)


 などと文句を心の奥底から言いながら次の部屋へ向かうことにした。


 扉を出る前にトロッコの行き来を確認して、凍ったままの奴隷ちゃんをチラリとだけ見て『奴隷ちゃん、相手してあげなくてごめんね』と思いつつ部屋を出た。


 奴隷ちゃんの相手をしなかったことが気になったかは分からなかったが、なんとなく奴隷ちゃんの視線を感じた気がした。しかし、すぐに何故そんなことを考えたのか不思議に思いながらも急がなければいけないと、いうことを思い出し鍵の捜索へ向かった。


 その後は特に苦労をすることなく残りの鉤を使って奴隷部屋組鍵を完成させ、奴隷が二体いる面倒な部屋へ入り強引に動きを止めて奴隷部屋の扉を開けることに成功しシャッハ達と合流することに成功した。


「いやぁ、長かった……と、いうかオレ達あまりにも暇すぎて別のグループチャット作ってしりとりをしてたくらいだぜ」


 と、シャッハは疲れた顔をしながら言った。


「すまないな……しかも、まだこれからってところだけど、大丈夫か?」

「ウチは大丈夫だよー、だいぶ休憩出来た感じだし」


 アコちゃんはこういった時は一番タフネスがある気がする。

 ナギリはイマイチ疲れているのかどうかはあまり分からない……ニンジャスタイルだから解り難いのかそういうプレイなのか。


「ライフもみんな自然回復で満タンになってるな」

「まぁ、1時間ちかく経ってたらそりゃね」


 思っている以上に時間が掛かってしまい、皆に謝るが誰も『そんな謝る必要はない』と言ってくれ素直に喜んだが、ふと1時間も時間が経っているのにこの部屋では敵が湧いていないことが気になった。


「敵、沸いて無いのか?」

「どうやら、一度倒したらこの部屋から出るまで沸かないとかいうヤツではないでござろうか?」

 ナギリはそう言って装備とアイテムのチェックを始める。

「なるほどな。そうだ、俺の回復アイテム配布しておくわ……」

 そう言ってシャッハとアコちゃんにポットを渡しておく。

「あと、この付近の状況を言っておくよ」

「OK」


 俺たちはここから脱出する為に部屋から出て奴隷二体をそこまで苦労することなく倒しトロッコが通り過ぎるのを確認して部屋を出てトロッコを追うことにする。


 東側の端でトロッコは曲がり南側へ向かっていく、俺たちもその後を追いそちらの通路へ入る。


「真っすぐで何もないのはマズイな……」


 率直な感想を俺は言った。走った場合でももしかすると後ろからトロッコに追いつかれる可能性がありそうで俺たちは焦りつつもとにかく走り出す。


「はぁ、ここに来て走るとはねぇ」


 肉体的には疲れないが走って逃げる、走って追いかけるなどが続く場合に精神的に結構疲れる。アコちゃんが嫌そうな声を上げたのも気分的に走りたくない――と、いうことを言いたいのだろう。


「一応、小さな窪みがあるから躱すのは出来そうだな」


 シャッハは走りながらそう言ったが見て見ると全員が窪みに入ることは不可能なようで、数か所に分かれて入らなければいけない為にプレイヤーの判断によっては確実に轢かれそうなイヤらしいマップ構成だ。


「タイミングによってはミスりそうだから、ここで躱すより向こうの端まで駆け抜けるのがベストなんだろうけどな……」


 俺はそこまで言って、とりあえず窪みに入らなければいけないと視線を窪みに向ける。シャッハ達も音に気が付きそれぞれが一度視線を合わせて四方に散るように窪みに向かう。

 見ていると楽しそうな奴隷達が乗ったトロッコがギリギリの位置を猛烈な速度で抜けていく。


「あの角まで行けばなんとか切り抜けれそうだな……」


 そう言って俺たちはこの面倒な道を駆け抜けた。


 南側へ向かう通路の奥は行き止まりになっているが、マップを確認したところ位置的にこの階層のはじめの通路からしばらく行った奥あたりだと思われた。


「姉様《あねさま》がいる場所はトロッコが向かった方側な気がして止まないわ」

「ああ、俺もそんな気がする……それにソコに変な張り紙を見つけたんだけど」


 シャッハの言葉に皆が壁に貼り付けてあるA2サイズくらいの張り紙に目をやる。


 そこには『進むべきは西へ、上層への道は息を合わせることが重要である。 心優しき王 マシウス』と、書かれていた。


「本当に勘弁して欲しいな……西へ行けってことはあのトロッコと追いかけっこか」


 俺は再びトロッコが行き過ぎるのを見ながら文句を言った。


「それにしても『息を合わせる』というキーワードが分からないでござるな……」


 ナギリも気になった言葉は俺も気になっていたけれど、あまりにもヒントが無いので想像も出来ない。この先の道がどういう構造になっていて、奥がどういう風なモノがあるのか遠隔で見ることが出来れば楽なのに。と、思いながらも皆に先へ進むしかないと進言する。


「とりあえず拙者が様子を少しみるしか無いでござるな」


 ナギリはそう言ってスコープを覗きながら西側の通路を確認する。


「奴隷部屋を出た時の道と同じように向こう側までレールがあるでござるなぁ。さきほどと同じように道に窪みがあるようでござる……ふむ、南側の壁だけ少し様子が違う気もするでござるが……」

「ま、何にしても行くしかないさ」


 シャッハがそう言うと皆はコクリと頷き全員に支援が行き届きトロッコが通り過ぎたタイミングで俺たちは走り出した。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 私達はアレから時間的に言えば1時間以上、戦闘を繰り返している。


 他に誰も来ないというのはまだマシなのかもしれないと思いながらギリギリの戦闘を繰り返すのは神経をかなり擦り減らす。愚弟《クオン》達からも音声《メッセージ》が飛んでこないということは彼らもまだ苦労しているのだと思う。


「それにしても敵を出すタイミングが分かっただけもいいじゃないッスか? 壁さえ叩かなきゃ敵が出てこないんスから」


 味噌汁《ミソスープ》はそう言いながらも小さな溜息を吐き座り込む。


「味噌汁《ミソスープ》、回復するにはまだライフもSPも減ってないみたいだけど?」

「ちょ、ちょっと休憩しましょうよ~」

「わ、わたしも……」


 しょこらんも疲れたという雰囲気で言う。確かに長時間プレイしっぱなしは疲れる。現実世界でも肉体は脳からの信号を受け取って結構な疲労を蓄積する。


 ネットダイブ系のVR機器の設定は法整備上、連続使用による身体への影響を防ぐために長時間プレイをしないように4時間以上経つと強制的にログアウト処理される仕組みになっている。


 この階層に入ってから既に2時間経過している。前階層から次の階層に上がるまで15分程度休憩したので連続使用で自動ログアウトまではまだ2時間ほどあった。


「そうね、確かにそうかもしれないわね。とりあえず10分休憩して、また壁を攻めるわよ。まだ一面の半分だからね……」


 そう言って私も床に腰を下ろした。


「数分戦って10分休憩するのを繰り返してる感じね。回復待ちの休憩は休憩してる気分にはならないけどね」


 考えると2時間だと、どう考えてもこの状況だと時間が足りない。

 そう考えているとカレンも腰を下ろし、残りのアイテムの確認を始める。


「シャッハやアコちゃん達ならしりとりでも始めるところね」

「あー、確かにそうッスね。そして、何故かしりとりでシャッハが疲れてきてアコちゃんは逆に元気になっちゃうんッスよね~」

「あの二人の関係も結構不思議よね」


 そんな事を話している様子を私は見ていた、愚弟《クオン》はカレンやシャッハ、アコちゃん達ともチャットやホームロビーで会ったりしているらしい。


 私は他のメンバーとプレイをしている間に他のゲームをプレイしなければいけないので、そういうコミュニケーションに関しては愚弟《クオン》に任せておけばいいと思っている。


「にしても……どうやったらこの部屋から出れるのかしらね?」


 私の言葉に皆も同意する。


 謎解き系がどちらかというと苦手で、例えプレイをしても攻略サイトを確認してプレイするぜ! っていうメンバーだけがここにいる状態っていうのが何よりも非常にマズイのも分かっているのだけど。


「とりあえず総当たりするしかないッスね。他のプレイヤーが来たら確実にカオスでしょうけどねぇ~」

 そう言いながら味噌汁《ミソスープ》は楽しそうにニヤリと笑う。


(味噌汁《ミソスープ》のヤツ、私が困ってるのを見て楽しんでやがるな……それに変なフラグを立てようとするなっ!)


 私は心の中でボヤキつつ、確かに他のプレイヤーが飛んできたら非常に面倒だと考えたけれど、これはイヤなフラグを自ら立ててはいけない。


 そう考えて可能な限り心の中で思考しないように自身に言い聞かせた。


 しかし、経過時間を考えると、そろそろ下層にいた某SNS勢のパーティーがこのフロアに来ていてもおかしくない。


 こちらでは無く愚弟《クオン》のところに彼等が転送されてきた場合を私は考えていた。

 まだ愚弟《クオン》からは何も連絡が無い――と、いうことは他のパーティーとは出会っていないということだと思いたかった。


 しかし、対応出来ない状況が続いていればそれも不可能なのかもしれない。


 ダメだ。


 多くの可能性が有りすぎて思考がダメな方向へ向かっている。

 私は素早く気持ちを切り替える。これも職業柄、絶対に必要なスキルだ。


「それにしても面倒なコンテンツを考えたモノよね」

「ですよねー。にしても残りの階層はどんな構造になってるんッスかねぇ~」


 味噌汁《ミソスープ》はそう言って笑った。


 私も確かにそれは気になっているところで、複雑なギミック満載の後の階層で同じような構造であれば確実にユーザーから文句が出るだろうと思うのだけど、ここの運営はソレを平気で出来ちゃうとっても斜め上が好きな会社だからなぁ。


 などと考えていた、その時だった――


 部屋の中央付近に他のプレイヤーの姿が光の柱と共に出現する。


「チッ、やっぱり……来たわね。戦闘準備よ! 無敵時間も考慮して動いて!」


 転送後の出現時には無敵時間が存在する。


 おおよそ60から120フレームだ。


 転送された側も警戒して周囲を素早く確認して私達に気が付いたらバックステップで後方に移動して対応する――と、考えられる。


 現状、一番の問題はチーム編成があまり良くないことだ。私はそんなことを考えながら皆より数歩先へ出て剣を構える。すぐ後ろにはカレン、その後ろにしょこらんが杖を構える。味噌汁《ミソスープ》はステルスで移動して裏に回り込むように動いている。


「うわっ、色んな意味で最悪だ!」


 某SNS勢のパーティーのリーダーでシャッハと同じくらいのプレイヤースキルを持つアロワイヤが転送後にこちらを確認後に放った第一声だった。


「ったく……オープンチャットでプレイしてんの!?」

「そらっ、こいよ廃人ども! お前らもオープンチャットで正々堂々対戦だ!」

「仕方ないわねぇ……」


 そう言って全員に視線を合わせてチャットをオープンに切り替える。


 そして、転送して現れたプレイヤーは6名。人数的には非常に不利なのは当然ではあるけれど、プレイヤーレベルは向こうの方が若干低いだろう……他のメンバーはあまり見たことの無いプレイヤーだ。


「るかち! 敵無敵時間解けるわよっ! ターゲット! 正面、Lv60戦士《ストライカー》、右手前Lv52魔銃士《ガンナー》、右奥Lv48魔杖士《キャスター》、左Lv60魔杖士《キャスター》よ! 左の魔杖士《キャスター》はこっちに任せて!」


 カレンは素早く声を上げる。


 私はそれに合わせて正面の戦士《ストライカー》であるアロワイヤに攻撃をする。


「面倒なタイミングで来るんだからっ! それなりに楽しませてよねっ!」

「ちょ、マジかよ……勘弁してくれっ!」


 アロワイヤは盾を構えて私の攻撃の一段目を防ぐ。


 こちらの攻撃速度はかなり早いハズだけれど、なかなかよい反応を見せてくれる、彼ら某SNS勢のプレイヤースキルもかなり高い。こちらの事を廃人と言っているようだけど、彼らも似たようなモノだ。


「ぐっ、ったく……おたくら攻撃力っぱねーんだから……戦うの面倒なんだよっ! カバー頼む!」


 アロワイヤはそう言いながら不利にならないように右側へ展開しようとする。

 彼の仲間もサポートをする為に連動して動こうとする――しかし、彼をカバーしようと移動しようとした魔銃士《ガンナー》は叫び声をあげて突然に倒れる。


「へへっ、残念ッスね~。こっちにもいるんスよ! <電撃罠《ライトニング・トラップ》>は効果的ッスねー」


 味噌汁《ミソスープ》は回転回避後に立ち上がりそう言ってからイヤラシイ笑いを浮かべる。


 本来、罠《トラップ》は設置型のスキルなので行動を取った時点でステルスが解けるのだけど、設置の瞬間に姿が現れるので相手の行動に合わせて地面に設置するという高等テクニックだ。


 傍にいた魔杖士《キャスター》が焦って特殊移動で離れるが、それに合わせて味噌汁《ミソスープ》は特殊散弾を浴びせる。


「きゃふっ、こ、これって……ネバネバ弾!?」


 これも味噌汁《ミソスープ》愛用――いや、愚弟《クオン》も魔銃士《ガンナー》では気に入ってたわね。


 と、とにかく特殊散弾のひとつで特に魔杖士《キャスター》やスナイパー型の魔銃士《ガンナー》に有効な足止め手段だ。


 ネバネバ弾の攻撃を受けた魔杖士《キャスター》は残念な恰好のままジタバタと悶えながら悲鳴を上げていた。その間にしょこらんが全員に支援を掛ける。カレンはあえてLv60の魔杖士《キャスター》を動けないように動作を止める為の攻撃を繰り返しながら相手のライフを削る。


「くっそー、ガチメンバーじゃないとこれは無理かぁ……」

「あらら、こんなところで諦めてたらダメよっ!」


 そう言いながら私は連撃でダメを稼いでいく。


「ぐぬぬっ、これならどうよっ!」


 アロワイヤはそう言ってオリジナルスキルを発動させる。


 コイツのオリジナルスキルは<傲慢大食《ごうまんたいしょく》>と言って被ダメ時のノックバックや衝撃を無くすスーパーアーマーと攻撃力と攻撃速度の上昇効果を持ったスキルだ。


「ったく……仕方ないわね! しょこらん、盾合わせて!」


 私はここでは使いたくなかったオリジナルスキルを発動させる。それに合わせてしょこらんがスキルを発動させる。アロワイヤの攻撃を紙一重で躱しながら最強の一撃をアロワイヤに当てる。


「相打ち上等!」


 そう言って彼は攻撃しようとしてくるが彼は地面から出現する<攻勢防壁《アタックシールド》>によって不思議な挙動をする。


「な、なんじゃこりゃ!?」


 これは最近気が付いたバグ技っぽい技なのだが、大吹き飛ばし効果のある攻撃をスーパーアーマー付きの相手に撃ち込んだ瞬間に<攻勢防壁《アタックシールド》>をその相手の真下に出現させるとダメージ判定がおかしくなり跳ね返りダメージが数度繰り返して発生する。


 たぶんだけど、私の攻撃ダメージがターゲットに当たった瞬間と防壁へ当たった判定が重なってスーパーアーマー付きの相手はその位置情報に発生しているダメージをただ延々とくらい続けるというわけだ。

 吹き飛ぶ相手であれば喰らわないし、ボスなどは防壁無効が多い。基本的にはプレイヤーにしか使えない。


 一度、バグ報告出していたのだけど、修正されないので仕様だということにしておこうと私達の間では時折使っている戦法だ。


「ちょっと、酷いじゃないっ! バグじゃん! 報告しちゃうわよっ!」


 ネバネバに絡みついている魔杖士《キャスター》が血相を変えて怒っている。

 それを見ながら味噌汁《ミソスープ》は<電撃罠《ライトニング・トラップ》>で倒れている魔銃士《ガンナー》の止めを刺す。


「うし、これで魔杖士《キャスター》ちゃんのSS撮り放題っす!」

「ちょ、くんなっ! 変態!」

「ニシシッ、すでに録画モードッスよー! あ、ちなみにさっきのヤツは何度もバグ報告入れてるんッスけどね、公式が対応しないんすよねー」


 そう言いながら魔杖士《キャスター》に向かって特殊アイテム『キュートなぬいぐるみ』を放り投げる。


 この特殊アイテムは一定タイミング、相手の視線を『キュートなぬいぐるみ』に釘付けにするモノで慣れていないと結構困惑するユニークアイテムだ。


「可愛いっすよー! ほほぉっ! いいッスねー!」

「って、いうかミソ! マジで垢停止くらっちゃうわよ!」


 そう言いながらカレンはLv60の魔杖士《キャスター》にとどめの一撃としてヘッドショットをぶち込む。


「って、いうか……味噌汁《ミソスープ》マジ引くわー」

「ほ、ほんと、変態さんです……」

「ったく、仕方ないッスね。じゃぁ、今日は特別にとっておきの一発を……」


 そう言って再び特殊散弾の切り替えを行ってネバネバに絡めとられている魔杖士《キャスター》に向かって放った。


「うわっ、マジ引くわー」


 私は思わず声が出てしまう。


 味噌汁《ミソスープ》が使ったのは所持弾数が非常に少なく高価で超強力な竜殺弾《ドラゴンキラーショット》という散弾用の魔弾で延焼《ヒート》と出血《ブラッド》という特に硬い相手に対して有効な魔弾で初弾の爆裂系のダメージは大して高くないけど、ヒットすると特殊効果が確実に掛かり継続的にダメージが稼げる。


 すぐには死なないけど、こういう状況で喰らえば確実に死ぬというかなり酷い殺し方で普通は効率が悪いので対人では使わない方法なのだ。


「思ったより体力あるッスね……タフネスよりのステ振りみたいッスね~」

「もうっ……マジでやめてぇ~!」


 魔杖士《キャスター》の女の子は半泣きになりながら死亡した。


 そうは言っても、この悠久の塔というコンテンツの場合。パーティーが同じ階層に居る場合は全員死亡となるか、ギブアップしない限りはその場で死体としてとどまることになる。


「つか、俺達生き返れるのか?」

「あ、あの……復活《リザレクション》しましょうか?」


 さすがに天然のしょこらん。見てて心苦しくなったんだろうけど、それはダメよ。


「えっと、勘弁してください……」


 地面に突っ伏した状態でアロワイヤは悲しそうな声を上げた。


「え? そ、そうなんですか……」

「しょこらん、放っておいていいから」


 そう言って私達は再び壁の方へ移動する。

 アロワイヤ達はパーティーチャットで会話を始めたようで声が聞こえなくなる。


「私達もグループチャットに戻そうか……」


 そう言うと皆もコクリと頷き、再びグループチャットに切り替える。


「それにしても、オリスキ使っちゃうとまた待ち時間が長くなるッスね~」

「あんただって、あんまり数が無いアイテム使って後で必要になったらどーすんのよ?」

 そう言うと味噌汁《ミソスープ》は『まぁまぁ、なるようになるッス』と適当な返事を返してくる。


(それにしても……)


 他のパーティーがすでにこのフロアに入ってきているということは愚弟《クオン》の方にも敵が転送されている可能性が高いということだ。


 愚弟《クオン》は似非支援キャラで実は殴り魔杖士《キャスター》というのが真の姿でパーティー戦では立ち回りとステータス上昇や壁、敵に対してのデメリット効果付与関連のスキル取りをしていて、回復系スキルはスキルツリーの前提取得の為だけに覚えている。


 なので純回復支援《ヒーラー》のしょこらんと<回復《ヒール》>の回復量は三分の一程度だ。


 特にシャッハ、アコちゃんのプレイスタイルは回復役《ヒーラー》が居てこそ光るわけで、彼らの構成だと敵次第ではあるけれど、かなり厳しい闘いになる可能性が高い。


(なんとしても、早く合流出来るようにしないと……)


 私は焦りを感じながら再びフロアを眺め、やはりこのゲームはクソだと呟いた。

久しぶり過ぎてアレですが……

戦闘大陸ヴェルハーサの傭兵姫はサバイバルがお好きなようです。とのギャップが……

(ΦωΦ)どっちもチマチマ書いてはいるんですがね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。