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第一章 悠久の塔 第六層 TRS OBTdate.3 その3

忙しさと体調不良でぐったりです。

もっと頑張れる体力と根性を!!!

 キモイ掛け声でテンションマックスのミソスープと共に通路の左側奥へやって来たのだが、ハッキリ言えば何も無かった。

 アコちゃんは怖がっていた割にはガッカリした雰囲気を醸し出す。


 その時、右側通路へ進んでいた姉《るかち》からチャットが入る。


『愚弟《クオン》、味噌、アコちゃん。何かあった?』


 俺はすぐさま「何も無かった」と、告げる。

 すると、彼女は面倒くさそうに――


『そ、じゃぁ。こっち側に合流してきてちょうだい。なんだか、怪しい雰囲気なのよね』


 と、そう言った。


「うーん、何かあったようッスね」

「行くの嫌な感じだよなぁ……」

「ッスね」


 そんなことを言いつつも、俺達は急いで姉《るかち》達の方に向かうのであった。


 奥に進むほどに不自然なくらいの暗さが際立ってあからさまな違和感を生み出していた。


「ちょっ、ちょっと……こ、これは怖い……」


 アコちゃんが絶賛ヘタレモードに突入しているが、俺とミソスープは気にせずに進む。

 薄っすらと視界は見えているのは先ほどいた場所とあまり明るさは変わっていない――ハズなのに何故か周囲が暗く見える。

 そして、薄っすらとどこからか空気の流れを感じる。


「なんだか、奇妙な雰囲気だな……壁も天井もどす黒い染みに満たされてるみたいな感じがするよ。にしても、この隙間風の再現ヤバいな」

「ってか、隙間風があるってことはこっちはもしかして、行き止まりじゃないってことッスかねぇ?」

「まぁ、そうかもしれないなぁ」


 俺と味噌がそんなことを言いながら周囲を観察している間に姉《るかち》達に追いつく。


「やっと来たわね。さっそくだけど、ここってどう思う?」


 姉《るかち》はそう言って壁を指さした。


 そこはここに至るまでにあったどす黒い染みが付いた壁とは全く違い、あの黒い液状の何かがベットリとこびり付いた壁だった、T字路側からみれば真っ暗だったのは黒い染みとこの黒い液体のせいだったのだろうか?


 特殊なライティングの設定がなされた空間だと俺は思いつつも姉《るかち》の質問に対する答えを探していた。

 どうみても壁一面にひろがる黒い軟性の液体とどこからか吹いてくる隙間風。

 ハッキリいって何か悪意のようなものを感じざるを得ない。


「まずは視界が思ってるより暗いと感じない割には真っ暗に感じるッスね。錯覚みたいなもんッスかねぇ?」

「たぶん、特殊なライティング効果だと思う。周囲は真っ暗なのに人物だけ暗くないみたいなのってあるだろ? ああいうヤツ」

「ああ、なるほどー」

「あと、隙間風を感じたんだけど……どこから吹いてきてるかは分からないけど、風の再現度はかなり高性だね。元々ネットダイブだと触覚系は現実《リアル》への影響が結構大きいから感度はかなり低めに設定されてるのに、それを感じるってのはかなりのテクニックだと思うね」

「愚弟《クオン》、そういう蘊蓄《うんちく》は別にいらないから、まぁ、隙間風ってのは私も気になってた……」


 姉《るかち》はそう言うと剣をスラリと抜き警戒の色を強める。


「謎解きッスかね?」


 ミソスープもそういいつつ、姉《るかち》が警戒をはじめたことに対して自身も合わせるように警戒の色を強める。これに伴い、PT内全員に緊張が走る。


「<照らす光>!」


 姉《るかち》がしょこらんに対して贈った視線に対して彼女は周囲を光で照らすスキルを発動させる。


 <照らす光>に照らされた周囲の壁は光に照らされながらも黒く深い闇色を湛えている。

 黒い粘性の液体が一面に広がっている壁だけは反射の光でテラテラと輝く。


「これってあからさまに壁を何かで隠してるって感じだな」

「確かにそうね……あそこだけ少し出っ張ってるし、たぶんアレってドアノブじゃないかしら?」

「って、このドロドロ状態で触るのはいやな感じだな」


 俺はミソスープに視線を移すと、彼は拒否するように首を横に素早く振った。


「じゃ、味噌よろしく♪」

「って、勘弁ッスよぉ~」

「でも、こういうドロドロのところ突っ込んでいくの嫌いじゃないでしょ?」

「無色透明で害がなさそうなら行っても良いッスけど、さすがにこんな油っぽいドロドロに突っ込んでいく気はおこんないッスよ」


 そんなやり取りの中で俺の脳内では気になるキーワードについて思考していた。

 黒い粘性の液体といえば、油とかもそうなんだよな。って、ことはもしかすると燃えたりするんだろうか?

 しかし、燃やした場合は別の被害が発生するかもしれないし、すぐに燃えるような雰囲気には見えないんだよなぁ。


 そう思いつつ周囲を再度確認する。

 妙に黒く煤けた壁、正面はドロドロとした液体がベットリの壁……あたりは照明遠いせいもあって暗い……しかし、見えないほどの真っ暗ではないが、周囲の壁が真っ暗のせいで実際の視界より遥かに暗く見える。


 ん? やっぱり、そうなのか?


「燃やしてみるか?」

「はぁ?」


 俺の呟きに即座に皆から何言ってんだ? と、いう雰囲気の返答が返ってくる。

 まぁ、当然といえば、当然である。


「油って言えば、黒い粘性の液体だろ? それにこのドロドロのところに扉がありそうなのは確実だとしたら、とりあえず試してみるってのはダメかな?」

「やるとしたら、結構離れないと爆発するかもしれないよね?」


 と、カレンは少し期待に満ちた瞳をこちらに向けてくる。

 相変わらず、過激な生物だ……。などと俺は思いつつ姉《るかち》の方を見て様子を伺う。


「そうね、ひとまず味噌が火薬樽置いて、ナギリ、カレンで火薬樽を撃ち抜いて貰おうかしら」


 と、姉《るかち》もとても楽し気にそう言ったのだった。


 再びT字路左側の奥へ戻ってきた。

 閑散とした空気を感じなくもないが、相変わらず何もなさそうのは確かだった。


「カレン殿、どちらが先にヤルか決めるでござるよ」


 魔銃に装備する魔弾をイベントリで確認しながらナギリはそう言った。


「カレン、ナギリ。ここは同時に撃つのが得策だと思うのよ」


 相変わらずこの人は――


 姉《るかち》は得策という言葉を使いながらも、自分が見てみたいだけという雰囲気を発しながらそう言ったのだ。


「あ、味噌がスポッターとしてちゃんと確認してあげてね」

「りょw」


 俺達が見守るなか、カレンとナギリは横並びになって魔銃を構える。

 一応、敵が来ると拙いということでT字路にはミソスープがトラップを置きに向かって戻ってくるのを待つ。


「もうちょっと、待ってくれッス。4倍スコープでも十分に見えるッスかね?」

「距離から言えば、余裕だと思うけど? あ、私の暗視スコープ貸してあげようか?」

「ちょw さすがに勘弁ッス。爆発した時に真っ白になるの確定じゃないッスか」

「チッ、気づいたか……」

「カレン~、マジ鬼畜www 風はたぶんないッス。できれば樽の上側を撃って奥に動かすようにした方がよさげッスね」

「さぁ、派手なの見せて私を楽しませないよ!」


 姉《るかち》がそう言ったのを聞いたホンのコンマ数秒からカレンとナギリの空気が変わる。

 二人とも息を止めて静かになる……それもほんの数秒。

 ロングレンジ専用のスナイパーライフル型の魔銃から激しいマズルフラッシュが発ち、少し遅れてT字路右側通路の最奥で爆発が発生する。


「くっ、拙者の方が一瞬だけ遅かったでござる……」

「そう? ほとんど同時だったわよ」


 と、カレンとナギリは「グッドショット!」とお互いを湛えあう。

 ナイスシューターシップというところか、二人ともほぼ同時に放った弾丸はミソスープによればほぼ同時にほぼ同じポイントを穿ち、見事に火薬樽を撃ち抜いたようだ。


 魔弾の攻撃を受けた火薬樽は即座に爆発して爆風と火炎効果を発生させ、ダメージ値のない風圧が通路を揺らす。

 なお、炎はいまだに右側通路の奥で立燃えており、予想通りの結果が発生していると思っていいだろう。


「さすがにここまでは炎は来なかったみたいね」

「通路真ん中付近まではきてたみたいだけどな」

「火薬樽ってそこまで効果あったかしら?」

「姉様《あねさま》そりゃ、あの壁に滴る黒い粘性の液体……まぁ、たぶん油だと思うッスけど、アレのせいだと思うッス」

「にしても、思ってる以上に燃えてるわね。しばらく近づけなさそう」

「まぁ、わざわざダメを喰らいに行く必要は無いからなぁ」

「あら、味噌と愚弟《クオン》なら行っても大丈夫なんじゃないかしら?」

「絶対に無理だから。ミソはまだ火炎耐性持った装備ある筈だけど、俺は超絶紙装甲だからなっ!」

「ええ、知ってるわよそんなこと。でも、真性マゾの愚弟《クオン》なら行きたがるかとちょっと思っただけだから」

「断じて、それは無い!」


 そんなしょうもないやり取りとしている間に少し炎が小さくなっていくのが確認され、俺たちは先ほどのT字路右側通路の奥へ向かう。


 まだ空気が火薬の匂いと肺が焼けるような熱気を感じる……気がする。

 ある程度は再現されているだろうが、実際感覚としてはリアルとは随分とかけ離れている感覚だと思われる。


 黒い染みのように壁が黒いのはこのギミックのせいなのだろうか?

 正直、ギミックというほどの物でも無い気がするが、黒い粘性のある液体が炎の効果によって燃えるということは確かなようだ。


 まだ、メラメラと炎が立ち込める壁までやってきたが、予想されていた変化が起きていた。


「完全に吹っ飛んでるわね。そもそも、ドアである必要性さえ無いレベルね」

「これって、後から来る人達が来たら元に戻るのかな?」


 と、しょこらんが不思議そうにそう言った。

 考えればそうだ。時限性で元に戻るか、戻らないかで考え方が変わってくるところなのは確かである。

 対人的に考えれば、さらに此処にトラップを仕掛けておいて嫌がらせをできるようにしておく……とかが、最適なんだろうけど。


「やっぱ、時限性ッスかね?」

「うーん、そうだと願いたいけど、ここの運営ってすっごい斜め上設定好きそうだからなぁ……なんとも言えないなぁ」

「そうっすよねぇ、ここの開発は正直頭おかしいッスからねぇ。たぶんサービス開始して始まるガチャの排出率とかも鬼畜仕様に違い無いッス」

「あー、それはそうだろうなぁ……違法になって年々、緩くなってるって言われてても、そもそも出るか出ないかの確立で言えば、意外とでなかったりするわけだからなぁ」

「まぁ、カレンみたいに持ってる人間はさらっと出すわけなんだけどねぇ」


 ミソスープは自身が持ってないみたいなことを言っているが俺は知っている。

 こいつも超レアのアイテムをガチャから引いてるということを……ただ、カレンのガチャ運が異常ってのは皆が認めるところだろう。


 サバイバル系のスニークゲーの衣装ガチャで限定のメイド服をゲットしていたし、カレン曰く、欲しいと思ったら絶対出る。

 だ、そうな……。


 ちなみに俺は超絶に持ってない人間なので、そもそもガチャは出ないモノとして回すのだ。


 閑話休題――


 目の前に開いた道を進むべきかどうするかをキチンと考えた方がいいだろう。

 十中八九、この先に進むのは確実なんだが……。

 基本的に姉《るかち》は何事も単純に考えるのが好きである。

 究極の面倒臭がり屋でもある。ただし、自分が見定めた方向に突き進むパワーは本当に誰も止めることは出来ない。ある意味、災害……台風のような物だ。


「愚弟《クオン》、そろそろいいかしら? 私は先に進みたいんだけど?」

「あ、ちょっと待った。カレンかナギリ、あー、ミソスープでもいいから、トラップに余裕があるならここら辺か、ここから少し下がったところに仕掛けておかないか?」


 俺の提案に魔銃士《ガンナー》勢全員が『OK』を出し、三人がそれぞれの嫌がらせネタを仕込んでおくのであった。


「ハイハイ、満足した? そろそろ行くわよ! シャッハは先頭! アコちゃんもそろそろ怯えてないでシャッハに付いていく!」

「お、おっ、おうっ!」


 あれだけヘタレモードに入っていたアコちゃんが焦りエモーションを発動させながら、シャッハの後をそそくさと付いていく。


 うん、やっぱり――姉《るかち》の方がホラー要素より怖いってことだな。


「愚弟《クオン》、何かよからぬことを考えてないかい?」

「いやいや、そんなことないよ?」


 たぶん、すっごい棒なセリフを吐いてしまった。姉《るかち》が凄く嫌な笑顔を浮かべていやがる……ううっ、これはどこかで絶対にお仕置きされるぞ!?

 と、俺は激しい悪寒を感じるのであった。


 爆風によって砕け散った壁かドアか分からない物体があった場所を抜け、その奥に続く通路に出る。


「また通路か……しかも、窓も何も無い前方20メートルほど先で右だな」


 シャッハはそう言いながら警戒しつつ進む。

 俺たちは既にT字路の右側奥の壁から奥に入ってスグに左に曲がり、100メートルほど進んだところから今度は右に向かって200メートル進んでいる。そう、ずっと同じ景色の通路を歩かされている状態であった。

 この階層に入ってから、まだ一度も戦闘が行われていないという状況に少し苛立ちを見せるウォーモンガー達よ。謎解きゲーだって楽しんだからね!

 と、思いながらも戦闘が無いと無いで緊張感を保つというのは結構に難しいのは分かる。

 相変わらずアコちゃんはヘタレ気味でシャッハの後ろに付いているが妙にへっぴり腰になっているが、戦闘になればたちまち普段通りの立ち回りをするに違いない……た、たぶんだけど。


「それにしても、こんな狭い通路を歩かされ続けるのは全くもってストレスよね……せめてゾンビ犬くらい出て来てくれないかしら?」

「ちょ、ちょっとぉ、ゾンビ犬は勘弁だよぉー」


 と、アコちゃんはゾンビ犬に随分なトラウマがあるような口ぶりで拒否した。


「まぁ、ある意味で最強キャラと言われている犬っころな。結構色んなゲームに出てるけど、特に例のゲームではマジ勘弁ってレベルだからなぁ。やっぱり動物系のゾンビキャラは実際想像しても人間より絶対に高性能なんだろう……とか、思うよな」

「あら、でも腐ってたら、あんなに素早い動きしたらグシャってならないのかしら? 私はいっつも疑問だったんだけど」

「あー、言われてみれば確かにだな……犬とかもだいたいジャーマンシェパードとかそっち系で考えても意外と脚が細いハズなのに結構な速度で動いてるもんな」

「でしょ? リアルで考えると絶対にないわぁ~って、感じよ」


 カレンの意見を聞きながら俺は関心していたが、他の面々は『そんなことはどうでもいい』と、いった雰囲気であった。ゴメンナサイ。


「それにしても、広いわねこの屋敷。絶対に外に繋がるフロアとかもあると思うんだけど……それに屋敷の外周を走らされている気分よね」


 姉《るかち》はそう言って苦笑いした。


ゆっくりペースですが、がんばります!

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