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第4話 「魔王様、共闘関係を結ぶ」

前話のあらすじ:狼少女は予想以上に強くなっていました。

 獣人国の他民族都市テンゼは、予想通りというべきか、なんとも重苦しい雰囲気に包まれていた。


 他民族都市というだけあって多種多様な種族が通りを行き交っているものの、まるで活気がなく、皆が皆、下を俯いていたのである。

 足取りも重たいようで、息をすることすら苦痛であるかのような様子だった。

 これらを見る限りでも、領主である王弟バモンズがどのような執政をしているのかが、わかるというものだった。


 獣人族だけではなく他の種族の姿も見受けられるが、彼らの態度が至って普通だったのは、この都市の住民ではないだけに”縛り”がなかったからだろう。



「……ちっ」



 通りを行くひとりの人族が、魔族である私を視認するや忌々しそうに顔をしかめてくるものの、唾を吐き捨てるだけでさっさと立ち去っていく。

 さすがに、こんなヒトの往来が激しい場所でもめ事を起こすほど、短絡的ではないらしい。



(まあ、とはいっても。唾を吐かれた以上、気持ちのいいものじゃないがな)



 私の隣にいるダミアンが表情を険しくしていたが、彼とて短絡的じゃないので、無用な騒動を起こす気はないようである。



「……ふむ」



 相変わらず無表情のアテナは、寂れている街並みを見回してから、ウルへと視線を向けた。



「狼族の姿が見受けられませんね。それとも、ここでは見えないだけですかね?」

「んーん、匂いがしないから、いまこの街には誰もいないね」



 鼻をふんふんさせて同族の気配を確認したウルが、説明してくる。



「狼族は狩猟民族だからさ。すぐ森とか狩りに行きやすい場所に住み着くほうが落ち着くんだよね。だからこういう大きい街とかは、嫌煙するってのはあるかも。便利っちゃ便利なんだけどね」



 確かにこの他民族都市は、交通の便は良さそうだったが、反面、自然が周りにはなかった。

 それが良くもあり悪くもある、ということなのだろう。



「クレアナード様。こうして街に入れたわけですけど、今後はどうします?」

「そうだな……」



 問うてくるダミアンに、私は前方に尖塔だけ見える城へと目を向ける。


 街の中央に位置する中規模の城。

 領主である王弟バモンズの住まいである。



「警備は、当然ながら厳重だよな……どうしたものか」

「俺が潜入して、王弟を暗殺しましょうか?」

「いや……相手は戦闘民族の獅子族なんだ。お前ひとりでは、手に余るんじゃないか?」

「そうかもしれませんけど……不意を突けば、なんとかなるかもしれません」

「それにだ、ダミアン。私としては、お前に手を汚してほしくないんだ。汚すのは、私の手で十分だ」

「クレアナード様……」



 理由はどうあれ。

 王族殺しは大罪である。

 いくら王弟がクズだろうが、許される行為ではないだろう。



 だからこそ、その判断を下した私が、責任をもつ必要があるのだ。

 だからこそ、獣王の怒りを買うのは私だけでいいのである。



 まあその際、在住する兵士か護衛にはそれなりの犠牲が出るかもしれないが、極力殺さないようにはするが、そういう仕事に着いている以上は危険は当然なので、彼らには諦めてもらうしかないだろう。

 逆に私としても、返り討ちに合う覚悟はできているのだから、お互い様というわけだ。

 そもそもが。命の危険にさらされたくないのであれば、最初からその仕事に就くなという話である。



「クレア……その、ごめんなさい……」

「ウル、お前が謝る必要はない。これは、私が自分の意思で決めたことなんだからな」



 揺れる瞳で謝ってくるウルにそう答えた時だった。



「ありゃ? 偶然だねぇ、こんな場所で会うなんてさ」



 その声に振り向けば。


 世界樹で一時的に共闘した、双子のあの竜人姉妹の姿があった。



「お前たちは……ライカとレイカ、だったか」

「お? 名前を憶えていてくれたんだ? ちょっと嬉しいさね」



 おどけた様子で姉のライカが笑顔を見せてくる。

 一方では、妹のレイカは無反応ではあったが。


「それにしてもさ、偶然だよねぇ。まさか獣人国のこのテンゼで、また会えるなんてさ」

「まあ、お互い冒険者だからな。旅をしていれば、偶然の出会いもあるだろうさ」



 私がそう答えると、ライカは一転して目を細めてくる。



「ふぅん……」



 その細められた瞳が、初対面である狼少女──ウルへと向けられた。



「時にさぁ。ちょっと小耳に挟んだんだよね。狼族の族長の娘が、近々、王弟の側室になるって話」



 ウルがビクッと震える。

 そんな彼女の態度に、ますますライカの瞳が鋭さを増す。



「このタイミングでさ、その狼族の娘を連れてるのって、出来過ぎた偶然と思わないかい?」



 興味なさげに空を見上げているレイカとは対照的に、ライカはまるで獲物を狙う肉食獣の如く、その眼差しを私へと向けてきた。



「前の世界樹の件といいさ。クレアナード。どうもアンタは、厄介事に巻き込まれるか、自ら首を突っ込むか、そんな感じなんだよねぇ」

「……ノーコメントだ」

「あっそ。んじゃ、そっちの狼族のお嬢ちゃんの意見を聞きたいさねぇ。もしかしてさ、族長の娘だったりする?」

「ふえ……っ? えっと、その……えっと……」



 適当に誤魔化せばいいものを、ウルはあからさまに挙動不審に。

 助けを求めるように私のもとに駆け寄ってくるが、私が何かを言う間に、ライカが笑いだしていた。



「あはは! その反応でわかったわ! こりゃあ……()()()だわ」

「……だね。わかりやすい反応」

「あうぅ……」

「カマをかけたということか。何が狙いだ?」



 意気消沈するウルを横目に、私は鋭くなる声で問う。



「そう警戒しなさんなって。取り引き、しない?」



 感情のこもらない目で何も答えないレイカとは対照的に、ライカはにやりと笑ってくるのだった。




 ※ ※ ※




 場所を手近にあったレストランに移し、その個室にて私たちと竜人姉妹は改めて対面していた。



「取り引きとは、どういうことだ?」



 私が警戒しながら問うと、ライカは運ばれてきた飲み物を一口飲んでから。



「腹を割って話そうや。なんで狼族の娘──しかも、族長の娘を連れてるのさね?」

「……腹を割るというのであれば、先にそっちから話すのが礼儀じゃないか?」

「あはは! 警戒しまくってるねぇ!」

「……姉さん、当然の反応だと思うよ」

「まあ、確かにねぇ」



 妹に指摘されたライカが、私の隣に座る狼少女をちらりと見やった。

 ビクッと震えたウルが身を強張らせ、私のズボンの裾を握ってくる仕草がなんとも可愛らしく、思わず頬が緩んでしまいそうになるものの……どうにか堪える。



「んー……レイカ。どうする?」

「……姉さんの判断に任せる」

「また、アンタは。すーぐアタシに丸投げするんだから」

「……妹は姉に従うもの。だから私は考えない」

「あーはいはい。んじゃ、アタシが勝手に決めちゃうからね」

「……好きにして」



 仲がいいのか悪いのか。

 姉妹間でそんなやり取りを交わしたあと、ライカが改めて私を見据えてきた。



「この時期に狼族の族長の娘を連れてるってだけで、アンタが何かしら関係してるって前提で話すけどさ、まさか無関係、まったくの偶然とか言わないさね?」

「…………」



 どう答えようか、私は判断に迷ってしまう。

 この姉妹には以前、仕方がない状況とはいえ、裏切られているのだ。

 なので、100%信頼することは出来ないだろう。


 そんな私の反応は想定内らしく、ライカが構わず話しを続けてきた。



「どうやらアタシらが先に事情を話さないと取り引きに応じてくれないみたいだし、先に言わせてもらうよ」

「いいのか? 私たちがまったくの無関係だった場合、話損だぞ」

「ぶっちゃけさ。アタシの勘では、アンタらは黒だし」

「……そうか。なら、勝手に先に話すがいいさ」

「そうさせてもらうよ」



 私の投げやりを装う言葉を受けたライカは、ちらりと視線を送った妹が頷いたのを確認してから。



「いまアタシらは、ある依頼を受けてるんだよね。救出か、奪還か。ま、どっちにしても、やることは同じカンジだけどさ」

「依頼、か。それと私たちと、何か関係があるのか?」

「依頼内容は、依頼主は明かせないけど、娘を堂々と攫われた家族からの依頼。無事に連れ戻してほしいってね」

「……まさか。娘を攫ったっていうのは……」

「ここの領主、王弟バモンズ。まあ実行犯は、手下だったらしいけどね」

「人攫いまでするのか、あの愚弟は」

「女の敵ってわけよ、ここのクズ領主はさ」



 依頼内容から察するに、ギルドを通していない正規外の依頼なのだろう。

 この都市にも冒険者ギルドはあるが、さすがに領主のおひざ元であるゆえに、息もかかっているのが想像に難くない。

 自分に不利益になるような依頼申請を、野放しにするわけがないのである。


 肩をすくめたライカは、軽く肩をすくめた。



「依頼を受けたはいいけどさぁ、守りが予想以上に厚くてどうしようかと思ってたわけよ。そしたらアンタを見つけたってわけ」

「なるほど」

「アタシの予想だけどさ。その狼族の子がクズ領主に嫁ぐのは嫌だけど、何らかの理由で逆らえない。だから、カチコミして元凶の首を取ろうとか画策してんじゃない? だからこの都市に来ている。違う?」



 わかってんだよこっちは、とばかりに、ライカの双眸がすうっと細められる。

 私のズボンの裾を掴む手に力を籠めるウルが、その視線から逃げるように両目をぎゅっと閉じており、ダミアンとアテナは私の判断に任せるようで、無言で事の成り行きを見守っていた。



(どうしたものか)



 ここまで暴露してきた以上、この竜人姉妹の話は嘘ではないだろう。

 しかしだからといって、彼女たちを信用できるかは、また別の問題なのである。

 一度失った信用は、早々取り戻せないということだ。



「……クレアナードさん。勘違いしないでほしいんですけども」



 話に進展が見られないことに業を煮やしたのか、いままで興味なさげにしていたレイカが口を開く。



「……姉が言っている取り引きってのは、私たちを信用してくれと言ってるんじゃないです。お互い自分たちの目的のために、お互いを利用し合おうっていう提案なんですよ」

「お! 妹よ! いいところでフォローしてくるさね! さすがアタシの自慢の妹!」

「……姉さんも勘違いしないで。姉さんだけじゃ話が進まないと思ったからだよ。じれったい」

「うっは! こりゃまた手厳しい」



 妹にジト目で睨まれる姉は、ひょうきんな仕草でおでこをポンと叩いていた。

 そんな姉妹を前に、私はしばし逡巡してから。



「つまりは、別に私たちの目的を話す必要はないということだな?」

「ん? まーそれでもいいけどさ。興味ないし。肝心なのは、アタシらと共闘するか否かだしさ」

「なるほどな」

「お互いが城のあちこちで暴れれば、あちらさんの注意も分散するっしょ? そうなるとリスクが減るってわけ。これはアタシらだけじゃなく、そっちにもメリットあると思うけどね」

「……ふむ、確かにな」



 竜人姉妹の提案は、いまの私たちにとっては在り難いことかもしれなかった。


 味方ではないが、協力はできる関係。

 お互いがメインであり、そして陽動というわけだ。


 互いの目的が違うのであれば、当然ながら行動パターンも違ってくるために、王弟側の戦力や注意を分散し、かく乱できることだろう。



「アタシらはの目的はあくまでも救出であり、それ以上のことはしない。アンタらはアンタらで、好き勝手やってちょうだいな。クズ領主を殺そうが首を撥ねようが、アタシらは一切関知しない。アンタらが起こした騒動を利用して、アタシらはさっさと逃げさせてもらうよ」



 同じ事を言ってくる当たり、私たちの目的にはすでに勘付いているのだろう。

 私は苦笑い。



「なるほど。私たちを隠れ蓑にする気か」

「信頼とかそういうくすぐったいのは抜きにしてさ。利用できるものは利用しないとね」



 悪びれる様子もなく、ライカは裏表のない笑みを見せてきた。



「だからアンタらも、アタシらっていう”陽動”をアテにしてくれていいよ。別に信頼がなくてもさ、アタシらは協力できると思うんだけどね?」

「……ふむ」



 ある意味、理想的な共闘関係かもしれない。

 援護は期待できないが、逆に、こちらも彼女たちを気にかける必要もなく。

 目的が違う私たちが暴れることで、敵の陽動に繋がるのだから。



 ”仲間”として信頼は置かないが、”陽動”としてならば、利用できる関係というわけだ。



「わかった。共闘しよう」

「お! 話がわかるね! ()()()()!」



 なぜライカが”助かる”と発言したのか、その真意はわからなかったが。

 これで依頼を達成できるという意味だろうと判断した私は、あえて聞かないことにした。



 その後私たちは、城への襲撃に関しての打ち合わせをするのだった。




 ※ ※ ※ 


 ※ ※ ※




「なぜこうなった……」



 暗い表情で呟くローブの男──魔王の相談役という立場にいるドバンは、自室にて頭を抱えていた。


 あの脳筋──現魔王のブレアをそそのかし、前魔王クレアナードを失脚させたまでは、計画通りだった。

 しかしその後が、想定外だった。



 表向きは平静ながらも、マイアス陣営との水面下による攻防の末に、ブレア陣営が劣勢に立たされていたのである。



 このままでは、クーデターが起これば今のブレア政権では耐え切ることはできないだろう。

 とはいえ。

 向こうもまだそこまでの根回しが出来ていないようなので、今日明日という話ではないだろうが……



(だからあの時、クレアナードをさっさと仕留めていれば良かったものを……)



 五体満足で王城から逃がしたことが、いまになって心底悔やまれてくる。

 あの時に仕留めていれば、彼女を担ぐマイアス派もここまで大きな勢力となることはなかっただろう。


 すべては、クレアナードという人物を過小評価していたことが原因である。

 失脚して尚、その影響力は健在だったのだから。

 しかもその本人はどこかへと雲隠れしているようで、まるで消息がつかめないときているのだから、手の打ちようがなかった。



(マイアス派に造った内通者も排除されてしまったしな)



 ことごとくが失敗してしまう。

 ここまで運に見放されてしまうと、もはや逆に、笑いがこみ上げてくるというものだった。

 

 自室でひとり自嘲的に嗤っていると、そんな彼に声がかけられてきた。



「気持ち悪いね。ひとりで思い出し笑い?」



 たったいままで誰もいなかった空間に、ひとりの女が姿を現していた。

 中性的な顔立ちだったが、なぜ女性とわかるかといえば、胸の部分がふっくらと膨らんでいるからである。

 ただし。その容姿から、魔族ではなく有翼族だったのだが……


 ドバンは突然女が現れたことに別段驚くこともなく、忌々し気に吐き捨てていた。



「話が違うじゃないか、クロエ。あまりにも違いすぎる。お前の案に乗れば、うまい汁が吸えるというからお前の計画に乗ったというのに。なんだこの有様は。このままじゃ、あの脳筋と共倒れじゃないか」



 クロエと呼んだ女へと不満をぶちまける。

 しかし彼女は、軽い動作で肩をすくめた。



「ボクは計画をもってきただけ。それをうまく使えなかった君に責任があるんじゃないかな? 責任転嫁はやめてほしいよ」

「お前……よくもぬけぬけと」

「とはいえ、だ。ボクとしても、君たちがこのまま終わるのはちょっと困るんだよねぇ」



 女は、やれやれとばかり溜め息を吐いてくる。



「君たちみたいなタイプの事だからさ。政権を奪取したら圧政を敷いて民を虐げるとばかり思っていたんだけどねぇ。実際は反対勢力を圧倒できないせいで、思うように動けていないとか。情けなさすぎ」



 顔が引きつるドバンにお構いなしに、女は嘆息交じりで言葉を続けた。



「まったく。いろいろ手を尽くしてあの最強勇者を手引きしてあげたっていうのにさ、そのお礼が”失望”とはね。恩をあだで返された気持ちだよ。ここまで君らが使えないとは思ってなかったよ」

「……そう言うのであれば。お前が直接動けばいいじゃないか」

「ボクはこう見えて非力だからね、表舞台に出るつもりはないんだ。それは”あいつ”の仕事だし。だから君に、いろいろと裏で協力してあげたんじゃないか。ボクが表舞台に出ないためにさ」



 女が言う”あいつ”とは誰なのか知る術のないドバンは、違うセリフに内心で反応する。



(何が非力だ。私を片手で投げ飛ばしておいて。この化け物が)



 彼女と初めて会った時のことを思い出し、苦々しい顔になってしまう。

 空から舞い散る白い羽根から、一瞬天使が降臨したのかと思ったものだったが。

 舞い降りたのは……天使の皮を被った悪魔だったのである、


 しかしその後、彼女の協力もあっていまの地位にいるのだから、一概に非難はできないが。



「せっかくボクが協力してあげたんだからさ、君たちにこのまま終わってもらうと、ただのくたびれもうけになっちゃうんだ。だから君たちが反対勢力に勝てるよう、技術を提供しようじゃないか」

「技術だと……?」



 胡乱げになるドバンに、中性的な女は酷薄な微笑を浮かべるのだった。




 ………


 ……


 …




「人体実験だと?」



 眉根を寄せる新魔王ブレアを前に、ドバンは自信たっぷりな表情だった、

 現在、王の間には人払いをしたこともあり彼らふたりしか姿はなく、だからこそドバンは遠慮なく、()()()()へと発言していた。



「陛下。このまま何もしなければ、マイアス陣営に政権をとられるのは時間の問題かと。もはや事態はそこまで急を要しているのです。非人道的だからと躊躇していては、取り返しのつかないことになるかと」

「むう……それはそうだが。しかし、その人体実験で何をするつもりだ?」

「強化兵──半魔人を作るのです」

「半魔人だと……」

「圧倒的武力でもって、マイアス派を一掃いたしましょう」

「ドバン……お前、そのような技術をどこで……人智を越えている。まるで勇者を生成するかの如き技術だぞ……」

「陛下、ご決断を。もはや手段を選んでいる場合ではないのですよ」



 戦慄しながらのブレアの問いに答えずに、ドバンが淡々と促してくる。

 玉座に座する王は、深い息を吐いた。



「ドバンよ。その人体実験、必ず成功するのだな?」

「そのはずです」

「……”はず”か……まあいいだろう。人員の選別や必要経費などは、全てお前に一任する」

「心得ました。では、早速取りかからせて頂きます。時間はあまりないようですので」



 足早にドバンが退出していく。

 彼の言葉通り、もう残された時間(クーデターまで)は、いくばくもないだろう。

 真っ正直なマイアスはともかくとして、あの忌々しい女(クレアナード)の妹であるラーミアが、こちらの想定外に曲者だったのである。


 巧みな話術でもって、次々とこちらの勢力が削り取られていくのだ。


 戦闘力はないからと、侮っていたのが失敗だったと言わざる得ないだろう。

 クレアナードが魔王だった頃は、それほど目立つ存在ではなかったのだが……

 頼りにしていた姉が失脚したことで、その秘めたる才覚を現したということなのだろう。



(まったくもって忌々しい姉妹だ)



 かつて、この場にてクレアナードを失脚させた時に、そのまま息の根を止めるべきだったと後悔である。

 あの時ならば、確実に簡単に、引導を渡せたはずなのだ。

 屈辱を味わせる為に見逃したのが、ここまでの裏目になろうとは……



(だが……だが! この国は俺のモノなのだ。誰にもやるものか……!)



 暗い野望を抱く仮初の王は、独り、ぎゅうっと拳を握りしめていた。


暗躍する人物の正体とは……

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