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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第四十話

第四十話「魔獣暴走」




 デューイ・アドコック。アバター名、リターナー。


 今、私の手に残るのは、人を傷付けたという感傷。


 殺してはいない。

 ただ、それは死よりも遥かに苦痛を伴う最後ではあるが。


 今はまだ、意識もあるだろう。痛みもあるだろう。でも、それは長くは続かない。



 「―――どうせ、直ぐに気が狂う」



 私は、その哀れな黒焦げに呟いた。


 人間は、苦痛に耐えられるようには出来ていないのだ。


 そもそも、苦痛とは、避ける為にあるのだから。


 苦痛は怖い。“死”に近い。

 だから、耐えられない。逃げ出したい。


 それは、生存本能が成した生きる為の機能。


 しかし、同時に。


 その生存本能が人を破壊する。


 耐えられない苦痛から、自我を守る為に。


 やがてコイツは、痛みを感じなくなるだろう。


 そして、その苦痛の記憶を忘れようとする。


 その時、コイツはもう、コイツではなくなっているのだ。



 「ホント、ただの置物ね……」



 自分のした事が馬鹿馬鹿しく、見るに堪えなくなる。


 コイツをどれ程苦しめた所で、コイツが奪った命は戻ってこないというのに。



 「ま、せめて供物にくらいはなりなさいよ。どうせ生きてたって、アンタが成し得る事はたかが知れてるんだから」



 黒炎の中で、今も尚痙攣し続けているデューイを、私は靴底で踏み締めた。



 「―――終わった、のか……?」



 私の背後、玉座の前に立っていたアーダル王は、そう呟いた。


 だから、それに答えようと振り返り、しかし―――。



 「……いいや、まだだぜオッサンッ」



 その緊迫したロディーの声で、私は悟る。


 まさか、とそう思っていた物が、動かなかった筈の“ソレ”が、再び動きだしたのだ。



 「コイツ……、まだっ!?」



 キマイラゾンビ。


 命令を下すべき主人を失い、動かなくなっていた筈だというのに。



 『―――フン、リターナーを倒したか。まぁ、想定内だが』



 その声は、私の頭上から降って来た。


 より正確には、私を見下ろすキマイラから。


 意識が、その声に集中しようとする。―――そこに、一瞬の隙。


 私の頭は高速で状況を読み取り。



 「ロディー!!」


 「判ってらぁッ!」



 アーダル王へと迫る凶刃を、ロディーが双剣で受け止めていた。



 『―――チッ』


 「こすっからい手ェ使いやがって……。気に入らねぇなぁ、手前ェ……」



 驚愕するアーダル王の眼前数センチ。


 そこに煌く切っ先は。



 「…………」


 「こんな所にまで、入り込まれていたとは……っ」



 ゾンビだ。騎士に紛れて機会を伺っていたらしい。


 が、既にロディーは状況を把握している。



 「やらせねぇよッ!!」



 交差する双剣が一瞬でそのゾンビの首を跳ね飛ばしていた。



 『何故、気付いた……?』


 「アンタみたいなタイプは、こういう卑怯な手が大好きだからね。事前にあのオークの子に伝えておいたのよ」


 『―――増々、癪に障る女だ』



 キマイラゾンビの腕が振り上げられ、私に向かって振り下ろされた。



 「動きが鈍い! ゾンビになって劣化したんじゃないの? ソイツ」


 『ほざけッ』



 苛立たし気に吐き出し、キマイラゾンビが獅子の顔を持ち上げ。



 (―――炎のブレス? いや……違う)



 咄嗟に、私は右手で黒炎の砲弾を作り上げ、それを大口開けたキマイラの口内へと放り込んだ。



 『なにッ!?』



 ヒュッ! と爆発の直前に音が鳴る。―――そして、爆裂。


 やはり、間違いない。



 「どうせ、毒ガスでも吐こうとしたんでしょうけど。―――やらせる訳、ないだろッ」


 『〜〜〜〜〜ッ!』



 多分、コイツは炎を吐けない。


 炎を吐く為の器官その物が別の器官にすり替えられている筈だ。


 何故って? こういう自分が知的だと思ってるタイプの卑怯者ってのは、手段を択ばず、保険を用意してるモンだからだ。



 「言っとくけど、キマイラを“自爆”させようと思ってたなら、無駄よ」


 『な、に……』


 「街一つ消し飛ぶくらいの威力が〜とかやって、高笑いでもする気だったんでしょ? わっかりやす〜い」


 『キ、貴様……っ、何故……ッ!?』



 頭のデキの違い。


 そう言ってやりたかったけど……。



 (実際、やられるとコッチもタダじゃ済まない。だから、釘を刺しておくッ)



 私は直ぐに再び戦闘態勢を整える。


 使う武器は、“黒蛇拘”だ。



 「―――行け、ふぁんねr……もとい、“黒蛇拘”ッ!」



 私の背のオブジェクトから発射される数十本の黒蛇。


 黒炎を纏うそれは、一本一本が意思を持つ蛇のように自在に動くが、その先端部は全てが高速回転する蛇頭ドリル。


 どっちかっていうと、ファン〇ルじゃなくて、イン〇ム何だけどね。有線式だし。


 で、コイツの本来の使い方は、さっきデューイに見せたような物ではない。


 その真価は。



 「抉り貫けッ!」


 「■■■■ッ!!?」



 キマイラゾンビへと躍り掛かり、その全身に数十カ所もの穴を穿って尚巻き付こうとする。


 切削と刺突と拘束を同時に行う遠隔操作式の武装だ。



 『チィッ! 引き千切れっ、キマイラッ!!』



 が、強靭なワイヤーのように切れる事の無い黒蛇拘は、むしろキマイラの腐った血肉を引き裂いて外されてしまう。



 「■■■■■■■■ッ!!」



 苦痛を声にするキマイラゾンビだが、それでもコイツには“コレ”があるのだ。



 「頭の再生が……早いッ!?」



 先ほど爆発と共に吹き飛ばされた筈のキマイラゾンビの獅子頭が、既に再生を完了して再び口を開いていた。


 しかも、今度はガスじゃない。



 (肺を膨らませていない。でも、喉が膨らんだ。コレは……ッ)



 瞬間、私は黒蛇拘を引き戻しもせず、一瞬でリセット。


 そして、“黒帝鱗”へとスイッチ。


 直後、獅子の口から吐き出されたのは、炎でもガスでもなく、強力な消化液だった。



 「汚っ! 女の子にゲロ吐き付けるとか、どういう神経してんのよっ!」


 『黙れッ! 貴様ら女など、吐瀉物以下の存在だ! 醜く爛れて死ねばイイッ!!』


 「はぁっ!?」



 なに、コイツ。女に恨みでもあんの??


 なんか、“女”って部分に、凄い過剰反応してない??



 (―――なんか、ヤバイ。変なスイッチ入り掛けてる?)



 私は咄嗟に、キマイラゾンビの向こうに居るロディーへと向け、視線で合図を送る。


 意思疎通は一瞬。ロディーは素早く行動を開始した。



 「なにアンタ、女に恨みでもあんの?」


 『……貴様の、知った事か!』



 間が在った。多分、ロクな女に出会わなかったってトコか。


 女嫌い。ゲイ? ってワケでもなさそうだけど……。


 高慢で人を見下したような話っぷり。

 そこから察するに。



 「姉か母親辺り、かしら?」


 『……ッ、黙れッ!!』



 ハイ、ビンゴ。


 挑発に使えそうなネタ発見。


 私は黒帝鱗をリセットし、再び黒蛇拘を選択。そして。



 「ロクな女に当たらあかったのね、可哀想に」



 ニヤニヤと、嘲笑うような笑みを浮かべ、キマイラを見遣る。



 『挑発のつもりか? 下らんッ』


 「別に? たださ、運が無いっていうか、何ていうか、私もまたロクな女じゃないのよね、コレが」


 『何を……ッ』


 「ううん、準備完了。って話し」


 『―――ッ!?』



 私が喋っている間に、ロディーが王様や他の騎士達を外に連れ出す事に成功した。


 さっきのは、時間稼ぎって事。



 「挑発には乗らない、とか言ってたクセに、ちゃっかり引っ掛かってくれちゃって、あ・り・が・と♪」


 『き、さまぁッ!!』



 コレで、仮に自爆されたとしても、被害を被るのは私だけで済む。


 激昂するキマイラゾンビ。―――と、いうより、“中の人”。


 ほぼ間違いなく、コイツがアレックス・ターラント。アバター名“ヴァーレス”だ。



 『殺せッ! 今直ぐその女を捻り潰せッ! キマイラゾンビッ!!』



 再び腕を振り上げるキマイラ。


 でも、その前足にある爪は、先ほどまでとは違う動きをしていて。



 (―――キモッ)



 指先には勿論爪。だけど、それだけじゃなく、爪や牙のように皮膚から突き出して伸びた鋭い骨が、全てバラバラにワキワキと動いていて。


 直後、それが全て、槍の穂先のように私一人へと殺到した。



 「あっぶなっ」



 襲い掛かる骨の槍を纏めて全部黒蛇拘で迎撃。


 更にバックステップし、跳躍。


 今度はコッチが槍の雨を降らせた。



 「■■■■■■■■―――ッ!!」



 突き刺さる。突き刺さる。突き刺さる。


 貫通し、絡め捕り、締め上げて、捩じり切る。


 が、それでもキマイラゾンビは動きを止めない。



 『無駄だ。キマイラゾンビは再生力に特化してある。貴様の攻撃など幾ら喰らった所で意味がない』


 「みたい―――ねッ!」


 『なにッ!?』



 が、私の目的はダメージを与える事じゃない。


 ゾンビに最も有効なのは、火属性魔法によるダメージだけど、コイツにそれを使うと誘爆する恐れがあった。


 それに、元々コイツが高い再生能力を持っている事は理解しているし、最初からリターナーを相手に戦うという前提で準備していたのだから、対再生能力用の切り札だって考えてあって必然。



 「やっぱさ、コイツ劣化してるのよ」


 『ば、かな……! 動けん、だと!?』



 私の放った黒蛇拘は、その巨体を地面に縫い付け、完全に固定していた。


 必至にもがこうとしているけど、“コレは切れない”。


 私が、そう“信じている”から。



 「オーバードライブ―――ッ」



 創造する。燃やさず、再生させず、コイツを倒し切る“技”を。



 「プラス・ヴァリアブルデコードッ!」



 私が敢えてこの武器を選んだ理由。


 それが、コレだ。


 私の背にあるオブジェクト。その無数の蛇を放つ盾面が、四方に分かれて変形する。


 現れたのは、“蛇の髪を持つ女”の顔。



 「さっきリターナーにも言った事だけどさ。不死性の高い化物が必ずしも負けない、なんて理論は何処にも存在しないのよ」


 『まさか、貴様……それはッ!』



 私は背のオブジェクトを取り外し、そのまま右手で掴んで眼前に構えた。


 同時、盾面の女の顔で、その真紅の眼光が怪しく光を放つ。



 『メデューサの首……っ、アイギスの盾かッ!?』


 「ご名答。―――動けないお前に、交わす術は無いッ!!」



 膨大な量の赤い光が私のアイギスから放たれ、それに晒されたキマイラゾンビの身体は。



 「□□□□□□□□―――ッ!?!!?」



 端からジワジワと色を失い、灰色の塊になって行く。―――石化、だ。


 ロディー達を事前に避難させたのは、コレが理由でもある。


 私以外の人間がこの光に晒されれば、誰彼構わず全て石化してしまうからだ。


 まぁ、これは本物のアイギスって訳じゃないんだけど、最適なアイテムを思い付いたから、便宜上そう呼んでるだけなんだけど。


 ただコレ、どうしても完全に石化させるには時間がかかる。ってんで、蛇で拘束する手段を考えたというワケ。



 『お、おのれッ!! コレで勝ったなどと思うなよッ!』


 「ううん、コレでチェックメイトよ」


 『なに……ッ!? な、なんだ、貴様らっ、クッ! はなs―――ッ』



 突然、キマイラの“向こう側”でヴァーレスが慌てふためき、プッツリとその声が途切れた。


 と、同時、キマイラの身体は完全に石化し切り。



 「ふぅ……。ホント、女に縁の無いヤツね……」



 完成した不気味な彫像を前に、私は溜め息を吐く。


 ご自慢のキマイラゾンビも、街中のゾンビも、結果を見れば、全部“女”にしてやられた訳だから。



 「終わったみてぇ……、だな」



 謁見の間の扉から顔を出して覗き込んでたのは、ロディーだった。


 で、その手に握られてるのは、さっき私がカガラから拝借したタブレット。


 それを手渡され、通話ボタンを押すと。



 『―――姫様、任務完了致しました』


 「ご苦労様、イライザ。タイミング完璧だったわ」


 『恐れ入ります』



 さっき、キマイラの向こう側でヴァーレスが慌てていたのは、コレが原因。


 カガラからタブレットを借り受けて、謁見の間のテラスへの移動中、私は事態を外のイライザとリヴァルトに伝え、指示を出していたのだ。


 リヴァルトには、外のゾンビ共の処理をカガラと二人で。

 で、イライザには、ヴァーレスが宿泊していた宿屋への潜入と、タイミングを合わせての捕縛をお願いしてあった。


 まぁつまり、最初からこの状況を見越して行動してたって事。


 創作物の主人公ってのは、どういうワケかしょっちゅう窮地に立たされて、それを勇気と気合で乗り切るってのが定番だけど。


 私に言わせれば、そんなのはただのバカだ。


 窮地に陥るのは、準備と知識と力が足りないから。


 追い込まれないと真価を発揮できないなんてのは、そもそも戦力として数えられない不確定要素の塊だ。


 私は、そんなのはアテにしない。


 徹底的な理詰めで外堀を埋め、歴然とした知識と技術と発想力で最初から窮地に陥るなんて状況を作らない。


 誰かが死ななきゃ本気になれないような、何処かの主人公みたいには成りたくないんだ、私は。―――と、そう思っていたんだけれど……。



 「後は、ソイツを護送して、コッチのリターナーも……」



 そう、イライザと会話しながら、振り返ったんだけど。


 そこに在った筈の、リターナーの黒焦げが無い。



 「ロディー、あの黒焦げは?」


 「あ? さっきのリターナーとかいう奴か?」


 「そう、それ。どっか片付けたの?」


 「いや、オレぁ知らねぇが」


 「え……」



 おかしい。

 王様を外に連れ出した後、戦闘中にはまだあの黒焦げは残ってた。


 その後、戦闘が終わるまで誰一人此処には立ち入って居ない筈。


 戦闘が終わった後にロディーが入って来たけど、それ以外はまだ皆外だ。


 ―――つまり?


 私は直ぐにタブレットの向こうに居るイライザへ叫んだ。



 「イライザッ! ソイツを直ぐに送還石で転送してッ! 早くッ!!」


 『は、はいっ』


 「おい、いったいどうしたってんだよ??」



 ―――やられた! まさか、“三人目”が居たなんてッ!



 「ロディー、引き続き王様の警護をお願い!」


 「あ゛ぁ!? 終わったんじゃねぇのかよっ」


 「私の読みが甘かった……。まだ何処かに、“三人目”が潜んでるッ」



 しかも、ソイツは私以上に狡猾な奴だ。


 リターナーとヴァーレスっていう二人を隠れ蓑にして、自分は一人誰にも悟らせずに確実に任務を遂行してる。


 恐らく、二人が失敗した時の為の保険。

 可能な限り情報が漏れないように、二人を回収する任務を帯びて来てる奴だ。



 『姫様、ヴァーレスの送還、完了しました』


 「よし、良くやった! 次は―――」



 私は指示を出そうとし、しかし思い止まった。



 「ううん……、止めとこ」


 『……姫様?』


 「いいの、気にしないで。悪いんだけど、イライザはそのままリヴァルトと合流。街中のゾンビの処理に当たって」


 『承りました』



 通話は切れ。


 私は、大きく溜め息を吐いた。



 (イライザは、幾ら有能でも……エルフ、だもんね)



 深追いはさせられない。


 “三人目”の能力も、戦力も、情報が一切存在しないんだ。


 下手を打てば、ミミの大事な友達を失い兼ねない。


 コレは、私の敗北だ……。

 私の、読みの甘さが招いた結果だ。



 「ロディー、無駄だとは思うけど、王様に城内の捜索をお願いして」


 「その三人目、って奴か?」


 「ううん、多分ダークエルフかドワーフ。三人目が金か何かで雇った奴だと思う」



 相手は狡猾で慎重だ。


 きっと、自分自身で動いてはいない。


 だから、私もリターナーが連れ去られた事に気付けなかったんだ……。



 「どうしてこう、詰めが甘いかなぁ……っ」



 前回のキマイラ戦でもそう。そして、今回も……。


 もし、コレが私一人で行動していた状況なら。

 私はきっと、王様を守り切れなかったと思う。


 折角オーバードライブなんて能力を身に着けても、これじゃ意味が無い……。



 「力だけじゃ……、駄目だ……」



 悔しくて、奥歯を噛む。


 また、負けた……。

 今度は、力じゃなく、読みの深さで。


 常に最悪を想定しないと、次も勝てない。


 もっと、視野を広く持たないと、また誰かを犠牲にしてしまう。


 と、そんな風に考えていたんだけれど。



 「おいおい、落ち込んでる場合じゃねぇだろ、らしくもねぇ」


 「え……?」



 ポン、と頭の上に乗せられた大きな掌の感触に、振り返ると。



 「一匹はとっ捕まえたんだろ? 御の字じゃねぇか。現実の戦場なんざそんなに緩かねぇんだ、あんまり甘えんな」


 「甘え、って……っ」



 言い縋ろうとする私に、けれどロディーは。



 「なまじ手前ェ一人で何でもやれるもんだから、本当の意味で“頼る”って事をオマエは知らねぇ。利用するのもいい。活用するのも上に立つもんの義務だ。けどな、“頼る”ってのはそうじゃねぇだろ?」


 「どういう、意味よ……?」


 「オマエ、頭良いんだか悪いんだか、良く判んねぇな……。つまり、だ」



 なんて、突然私の身体は抱き上げられ。



 「ちょっ、なにっ!?」



 そのままロディーの肩の上に座らされ。



 「オマエに出来ねぇなら、出来る奴を探せばいい。それで足りねぇなら、頭数揃えりゃいいんだよ」


 「……私より、有能な、人を……?」


 「おうよ。世の中広いんだぜぇ? ちったぁ頭を使え」



 考えも、しなかった……。


 私より、頭の良い奴。

 それを、探そうとすること。


 そして、“頼ろう”とすること。



 「折角の“お姫様”なんだ。少しゃあ、自分の身分やら立場やらを利用する事も考えてみな」


 「あぁ……、そっか……」



 世界に名立たる英雄の傍には、常にそういった存在が付き従っていた。


 劉備玄徳には、諸葛孔明が居たように。

 織田・豊臣には、両兵衛が居たように。


 別に、何も恥ずかしい事なんてない。


 他人に頼るのを拒否する理由なんて、これっぽっちもないじゃない。



 「そうね……、試してみようか」



 私はこの時、ある決断をした。


 それは嘗て、知性として唯一、私以上の物を見せて、私を楽しませてくれた“あの相手”。


 その“彼女”を、探し出す事だった……。

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