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Master Code  作者: 覇牙 暁
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第三十九話

第三十九話「ブレイクアウト」




 ゾンビ爆弾の一件から僅か一時間足らず。


 それは、歓楽街から始まった。



 「なん、なんだ、これは……っ!」


 「キャアアアアアア―――ッ!!」


 「何してる! 早く逃げろッ!」



 ―――アウトブレイク。


 ゾンビ映画や海外のゲームで良くあるアレだ。


 ただ、現実と創作物では色々と違う事もある。


 例えば、此処がスヴァルトアールヴヘイムで、民間人や兵士にもゾンビに対抗し得る力があったりする。



 「皆さん! 現在、城門が解放されています、警備の兵士達が安全を確保していますので、速やかにそちらへ避難を!」


 「無暗に火属性魔法を使うな、爆発するぞ!」


 「氷結魔法で動きを封じた後、頭部を粉砕しろ! それで被害を抑えられる!」



 と、まぁ予想外に被害は拡大せず。


 それでも、多くの犠牲者が出ている事は確かで、城内の兵舎も今は大騒ぎになってた。



 「―――状況は?」


 「おお、お姫さん! すまんなぁ、どうも先手を打たれてしもたらしいわ……っ」



 ミーティングルームに到着するや否や、激しく出入りする兵士達に指示を飛ばしているカガラに出くわした。



 「案の定、か……。感染者の治療は?」


 「感染? 何の話やねん」



 マズイ。カガラはコッチ側の人間だから、事態の重大性に気付いていないらしい。


 私はすぐ様カガラにゾンビの特性を説明する。



 「アイツらゾンビは、体内に強力な感染力を持つウィルスや細菌を持ってるの。噛み付かれたり、爪で引っ掻かれたりすると、そこから感染して数分後には怪我をした相手までゾンビに変わり果てるわ」


 「はぁっ!? なんやて工d……て、ネタ挟んどる場合とちゃうな。どなししたらええねん?」


 「対処は簡単。治療系の魔法で抵抗力を上げてやれば、傷の回復と同時にウィルスも死滅する。ただし、必ず回復は完全にまで行う事。コレ徹底させて」


 「体内にウィルスが残らんようにせぇっちゅう事やな。判った!」



 コレが、現実とゲームの違い。


 まぁ、ノーマルだらけのアッチの世界じゃこうは行かないんだろうけど、私達には関係ない。


 勿論、それを見越して、爆弾能力を持ったゾンビなんて物を作って暴れさせてるんだろうけどね。



 「つか、そっちのオークは何やねん?」



 と、カガラが指差したのは、私の後ろに立っていた一人のオーク。



 「あ゛ぁん? 誰に口きいてやがる。手前ェアレだな? アーダル子飼いの傭兵、カガラとかいったか」


 「お? そういうお前は……アレや、“双剣のロディア”。強姦容疑でとっ捕まったとか聞いたが……」


 「だっ、やってねぇ! オレぁんなことやってねぇっ!」



 と、二人で勝手に騒ぎ出したので。



 「はいそこ、お座り」


 「わんっ! ―――じゃねぇよ! オレぁ犬かっ!?」


 「静かにしてなきゃダーメ。お話しが進まないでしょ?」


 「お、おぅ……、オマエが、そこまで言うなら……」



 指先でチョンっと鼻先を撫でながら言い聞かせて上げると、あら不思議。こんなに従順に♪



 「ど、どういうこっちゃねん??」


 「その話しは後。今は一先ず私を信用して」


 「おぅ、……分かった。せやけど、この後はどないしたらええねん? 街中アッチコッチでその“ゾンビ”いうんが暴れとってやな、正直手ぇが付けられへんねん」



 言いつつ、ガシガシ頭を掻くカガラに、私は。



 「一番簡単なのは頭を潰す事。―――ってのは別に、ゾンビの頭を潰せっていうんじゃなくて」



 調印式を明日に控えるこのタイミングで、突然ゾンビが街中に溢れ返って、最初の一人に私を狙って来た。


 コレが自然に発生したなんて事、先ず考えられない。


 だとすれば、可能性は一つ。


 件のもう一人のアバターラ。スカしたメガネのあの男、アレックス・ターラント……アイツだ。


 やっぱり、コイツも自分のクラスを偽ってたって事だろう。


 魔道士なんてのは真っ赤な嘘。

 コイツは多分。



 「ネクロマンサー。不死者使いがどっかに潜んでる筈」


 「不死者使い……。呪術師みたいなもんやな?」


 「そ。で、ソイツをイライザやリヴァルトと協力して探して欲しいんだけど……。時にカガラさんや」


 「おう?」


 「悪いんだけど、ちょーっとアンタのタブレット貸してくんない?」


 「そら構わんけど?」



 カガラが懐から取り出したそれをサッと掠め取り。



 「あ、ちょっ、何処行くねん!?」


 「私には別の用事があんの! ほらロディー、アンタは一緒に来なさい!」


 「オ、オレ様の事かっ!?」


 「他に誰がいんの。hurry up!」



 走り出す私と、後を追うロディー。


 兵舎を出て廊下を走り、外へ。


 そのまま道伝いに王城の内門を抜け、一気に城内専用ワープポータルへ。



 「あーもう! ロディー足遅い!」


 「む、無茶、いうな……っ! おまえが……っ、速過ぎん、だっ!」



 ううん、きっと短足の所為。


 あ、でも猪って結構足早いのよね。あんまカンケーないけど。



 「っと、謁見の間は……」


 「謁見!? お前、何しようってんだ……?」



 ポータルの転送先一覧から謁見の間がある一階北口を選択。


 例によって祭壇みたいな装置の上に乗った私とロディーの身体は光に包まれ。


 到着した先で、私はロディーの口に人差し指をピッと当てた。



 「―――っ!?」


 「……黙って。気配を探ってるの」



 小声で告げると、ロディーは首をコクコクと縦に振った。


 城内も外の緊急事態で随分と騒がしい様子だ。

 けど、今の所、私が想定した最悪の状態には至って居ないらしい。


 私なら、この状況を利用しない手は無い。


 折角外でゾンビ達が暴れ、人目を引いてくれているのだ。


 だったら、“殺る”のは今をおいて他にない、と考えるだろう。


 つまりは、要人暗殺。此処では、勿論“アーダル王”が標的。


 そして、動くのは当然―――。



 (―――見付けた……ッ!)



 兵士達にすら見付からないよう城内をコッソリと移動し、謁見の間の二階にあるテラスまで辿り着いた所。


 玉座にはアーダルさんの姿があって、次々とやってくる兵士達の報告に耳を傾け、指示を出しているようだった。


 そこに、周囲の騎士と同じく騎士鎧を身に着けたアバターラが一人。


 ダークエルフ達からは見分けも付かないだろうけど、アバターラ同士なら話しは別だ。


 なんせ、UI上にはソイツの名前がハッキリと浮かび上がっているのだから。


 “リターナー”。デューイ・アドコックのアバター名だ。



 「……ロディー、アンタが釈放されるかどうかの大一番よ。私の役に立ちなさい」


 「ど、どういう事だよ?」



 私はテラスからデューイを指差し、小声で告げる。



 「見える?」


 「おぅ、アイツが何だってんだ?」


 「アイツは今、アーダル王の命を狙ってる」


 「はっ!?」


 「バカっ、声が大きいっ」



 慌ててロディーの口を押さえ、ジェスチャーで“シーッ!”ってする。


 再び、首をコクコクと縦に振る彼に、私は更に続けて。



 「アイツが動いた瞬間、私がそれを止める。その隙に、アンタはアーダル王を保護。きっと、直ぐに激しい戦闘になるわ。だから、アンタが身体張って王様を守るの。いい?」


 「な、なんでオレが―――」


 「アンタが自由の身になる為よ。それと、私に好印象。ポイント高いわよー?」


 「よし、わかった」


 「うん、素直なイイ子ね♪」



 頭をナデナデ。


 なんかこう、見た目はアレなクセに、単純でカワイイのよね、コイツ……。



 「っと、でも丸腰だとマズイか……」



 私は自分のインベントリを開き、その中から普段は使う事のない武器を一つ取り出した。



 「うおっ、んだこりゃ!?」



 あ、そういえばコイツ、三年も牢屋に入ってたから、アバターラの事知らないんだ?


 そりゃ、いきなり目の前に武器が飛び出してきたらビックリするわ。



 「これ、私が前に使ってた剣なんだけど。アンタ双剣使いなのよね? だったら、使えるでしょ」


 「お、おう……ってかこりゃ、とんでもねぇ業物じゃねぇか……っ」


 「気に入ったんならあげるわ。私もう使わないし」


 「マジかよ!? っし、やってやんぜ……ッ!」



 ま、多分魔法かなんかで出した程度に認識してくれてるでしょ。って事で。


 それを腰のベルトに差し、固定したロディーが親指を立てた。



 「ん、準備完了ね。後は―――」



 目の前の“アイツ”が動くのを待つ。


 現行犯じゃないと、裁けないからね。


 そうして、息を殺す事僅か……。


 報告待ちの騎士達が次々とアーダル王に跪き、報告を済ませ、立ち去って行き。―――遂に。



 (―――動く)



 出番が回って来た所で、本来なら跪く筈のタイミング。


 でも、デューイは跪かず、その右手で虚空をなぞった。



 「今ッ!!」


 「おうッ!!」



 テラスから飛び降りる私とロディー。


 その眼下では、今まさにデューイの姿が騎士鎧から道衣に変化し、同時に腰の鞘から短剣を抜き出そうとしていた。


 そこへ!



 「やらせるかってのッ!」


 「―――なんだぁっ!?」



 私も空中でスキンを変え、人型バーゲストに変身。


 降下と同時に右手の甲に“黒龍剣”を装着して振り下ろした。


 ―――ガギンッ!


 激しい金属音を鳴らし、デューイの短剣と私の黒龍剣の刃が打ち合う。



 「なっ、手前ェは……ッ!」


 「初めまして、よね? それとも、ずーっと見てたのかしら? ストーカーさん」


 「チィッ!!」



 素早くバックステップし、私から距離を取るデューイ。


 身のこなしは流石。でも、戦士としては二流。


 距離を取る。そして魔術師系クラス。


 そこから、近接戦は苦手であるという推論が一撃目にして成り立つ。



 「―――これは! そういう事なんだな? カスミ姫」



 私の背で事態を把握したアーダル王が声を上げた。


 それに私は首肯し。



 「心配すんな、アンタはオレが守ってやる」


 「オマエは……、たしか」


 「イロイロあってな。今はあのネェちゃんに従ってんだ。話しなら後にしな!」


 「―――分った、信じよう」



 どうやら、向こうも上手くいったみたい。


 後は、これ以上被害を広げない為に。



 「聞け! スヴァルトアールヴヘイムの騎士達よ! 我が名はカスミ・バーゲスト、未だ盟約は成されていないが、アーダル王の危機と聞き、アールヴヘイムより義によって馳せ参じた者也!」



 混乱するスヴァルトアールヴヘイムの騎士達が私の声に傾注し、そして。



 「黒炎の戦姫……!」


 「あの噂は、本当だったのか……っ」



 彼等の目は僅か一瞬で敵味方をキッパリと判別した。


 そこへ、更に。



 「総員、門の守備を固めよ! その曲者、此処から一歩たりとも外へ出してはならんッ!」


 「「ハッ!」」



 アーダル王の指示で謁見の間が完全に封鎖された。


 直後、あの大きな扉やテラスの窓、更には奥の間へ続く小さな扉までが淡い光を放ち。



 「なっ、マジックロックだぁっ!?」



 それは、私が事前に王に頼んで用意させた物だった。


 犯行に使われそうな目ぼしい場所には、全て同じ細工が施してある。


 コレで、コイツはもう逃げられない。



 「さぁて、リターナー。デューイ・アドコック。リムニルグでは良くもやってくれたわね……」


 「カッ、ヴァーレスの野郎……話しが違ぇぞッ」



 その台詞を聞き、私は得心した。


 コイツ、馬鹿だ。

 それも、相当な馬鹿。


 さっきの一撃目で弱点を晒しただけじゃなく、仲間の名前までアッサリ自白してるし。


 しかも、マジックロックで部屋ごと封じられてるのに、その上で笑い出した。



 「まぁいいぜ。今日はあのキモヲタは一緒じゃねぇのか? 泣き虫お姫様」


 「キモ、ヲタ……?」


 「おう、あのブタ野郎だよ。アイツが居なくていいのかよ? また泣かされちまうぞ? カハッハッハ」


 「ブタ……や、ろう……?」



 あーヤバイ、血管はち切れそう。



 「あん? どーしたよ? 挑発されてブチギレそうってか? いいぜー、キレてみろよ。キマイラに手も足も出なかった獣姦趣味のビッチお姫様よぉ! ぎゃーっはっはっはっはっはっ!!」



 あぁ、うん。私の事は別にいいや。


 実際? 私ドMだし? 獣姦とかも……まぁ、ね?


 あ、でも、ビッチではない。

 そこだけは否定する。カズの為に。



 「あのさぁ、こう……恥ずかしくない? 生きてて」


 「あ゛ぁっ!?」



 うわ、沸点低っ!



 「んだ手前ェ、煽ってんのかあ゛ぁんッ!?」


 「煽る前にキレないでよ……。なんかもう、馬鹿と話してると疲れてくるわ……」


 「ブッコロッ!!」



 どんだけ沸点低いんだよ、だから……。


 手の中の奇妙な形をした短剣を弄び、挙句にブレードをそのピアス付きの下でベロリと舐め上げ。



 「あのキモヲタの前で拘束レイプしてやろうと思ってたんだけどよぉ……、もういいわ。手前ェはココで犯すッ!」


 「発言がイチイチ頭悪いわね、アンタ……。もういいから、さっさとキマイラ出しなよ、コッチも暇じゃないんだってば」


 「おこだわー。マジ激おこだわー。……死ねや雌豚ぁああああああああッ!!」



 激昂し、ナイフを一振り。


 その瞬間、発光したナイフのブレードに私は目を惹かれた。


 アレだ。あのナイフで、キマイラを使役してるんだ。


 で、予想通り。―――それは、虚空から翼を広げて現れた。



 「―――は? 翼??」



 しかも、なにコレ。


 前に出て来た時とは姿形がまるで違う。っていうか―――臭ッ!!!



 「ちょっ、臭っ!! なにそれっ!?」



 目の前に降り立ち、床の大理石を砕いて爪を立てているのは、確かにキマイラ。


 ただし、その外見は以前の物には程遠く、皮膚は腐ってボロボロ。


 肉まで腐ってドロドロで、獅子顔や山羊顔の眼球は抜け落ちて居て、割れた頭蓋から脳が食み出てる。


 翼が増えたけど、アレは多分飛べるような代物じゃないだろう。

 だって破れてるし。


 まぁ、魔力を使って飛ぶ事は有り得るだろうけどさ……。


 にしても、酷い。

 コレ多分、キマイラゾンビってヤツだ。



 「なーる……。ヴァーレスとかいうネクロマンサーとの合作ってワケね……」


 「―――□□□□□□□□ッ!!」



 おぞましい声を張り上げ、威嚇するキマイラ。


 それを自慢げにデューイは。



 「覚悟しやがれ……、触手で犯してやるッ!」


 「あぁ、触手もあんのね。了解」



 どうしてこう、コイツって……。


 あんなに腹立ててた相手なのに、実際会ってみて幻滅した。


 なんかもう、馬鹿過ぎてお話しにならない。



 「やれっ、キマイラゾンビッ!!」



 その命令が飛んだ瞬間、キマイラゾンビが背を丸め。


 表皮がムクムクと波打つのが見えた。



 「あ、早速ですか」



 私はその場を一歩も動かず、黒鎖の形状を変化させる。



 「―――ヴァリアブルデコード。モード“黒蛇拘”」



 その瞬間、全身に絡み付いた黒鎖が激しくのたうち、背で一つの大きな塊を作り出した。


 一見盾か船の舵のようにも見えるが、まるで別物だ。


 それを示すように、そのオブジェクトから無数の黒鎖が伸び、鎌首を擡げた。



 「な、なん、だ、そりゃあ……ッ!?」



 キマイラの背から飛び出した数十本の触手。


 それを、黒蛇が尽く迎撃し、絡め捕り、縛り上げて引き千切った。



 「ざーんねん。触手趣味ってのも悪くないとは思うんだけどさ、ちょっとお粗末過ぎよ、これ」


 「ぬ、ぐっ」



 が、キマイラは懲りない。


 直ぐに千切られた触手を再生し、再びそれを指し向けて来る。の、だが。



 「無駄だって。……てか、飽きてきた」



 再び全て迎撃。


 が、私には一切油断などない。


 だから、見えている物だけでなく、“地下を進んでアーダル王を狙った触手”も轢き潰した。



 「な、コイツ……なんでっ」


 「あのねぇ、太過ぎんのよ。あんなん地面の下潜らせたら、表面が盛り上がって一目瞭然でしょうが」


 「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」



 こんな奴を相手に、私は一度負けを喫したのか。


 なんて情けない……。


 再生力に誤魔化されて、見えている物をちゃんと見る事が出来ていなかった。

 それが、あの時の私の敗因。


 オーバードライブなんて能力まで用意したけど、コレじゃ使うまでもない。



 「ナメやがって……ッ! けどなぁ、どう足掻いた所で、キマイラは殺せねぇ! 見ろ、手前ェが与えた傷なんぞ、一瞬で―――」


 「本物の馬鹿だな、アンタ」


 「……は?」



 私はキマイラをガン無視し、その直ぐ傍で騒ぐだけのデューイへと一気に迫っていた。



 「アバターラは、死なない。そう思ってるんだろ?」


 「な、にを……」



 顔を至近に近付け、真顔で私は尋ねる。



 「だから、平気。死なないから。だから、何をやっても恐くない。そうだろ?」


 「なん、なんだ……っ、なんなんだ、手前ェッ!!」



 圧倒的な身体能力の差。


 そうやってビビってる今の内に、私は決着を付けたかった。


 “逃がす”ワケには行かないから。


 だから、何の躊躇いも、迷いも無く、デューイの顔を鷲掴む。



 「―――むぐっ!!?」


 「ねぇ、死なない奴は無敵、とか思ってたでしょ? でもさ、世の中そういう話しって結構ゴロゴロしてるのよ。例えば、ヴァンパイアとか、幽霊とかさ」



 そして、背から伸ばした黒蛇を彼の四肢に巻き付かせ。


 ゆっくりと締め上げて行く。



 「ん、んぐ―――っ! ん―――ッッ!!」



 メキメキと鈍い音が響き渡り、周りの騎士達がその光景に怯えていた。


 けど、今はどうだっていい。


 先ずは、借りを返さないとね。



 「ヴァンパイアなんかはさ、超簡単。水に沈めればいいだけ。窒息して生死の境を彷徨いながら、永遠におやすみなさい」



 で、私は更に顔を近付け、その耳元で囁いた。



 「―――アンタはさ、どうやったら死ぬのかな……?」


 「んんん―――ッッッ!!! ンンンッッッ!!!!」



 暴れる。暴れる。暴れる。


 でも、無駄。逃がさない。


 絶対に。



 「燃え盛る黒い炎の中で焼かれ続けろ、永遠にね」



 私は、黒蛇にデューイの四肢を引き千切らせ、その上で傷口を焼いて止血。



 「□□□□□□□□□□□□ッッッ!!!!」



 そして、その全身に黒鎖を巻き付けて完全に拘束。


 口すらも動かせないように、だ。


 最後は、折角だからオーバードライブによる技能を使った。


 私の意思が無くとも、私が死んでも尚、絶対に消える事の無い、この男だけを永劫焼き続け、絶対に殺し切る事の無い黒炎。



 「―――アンタには、地獄すら生温い」



 手を離せば、ボトリ。


 もう既に、痙攣するだけの置物が焼き上がっていた……。

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