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Ice A GE(アイスエイジ)  作者: 重山ローマ
5章 嘘つきの火傷
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 火をつけしばらくしていると、彼女の体に変化が起き始めた。

 皮膚がさらに青みがかり、ますます血の気が引いていくようだった。

 まるで火をつけていることが、彼女には毒になっているようにすら思える。

 とはいっても、彼女の体は冷え切っていた。

 脈はまだあるようで、死んではいない。


「おーい。死んだか?」


 脈は確認したのにその呼びかけはいかがなものか。


「う……」

「お。どうやら無事――はっ!」


 思い出してみればこの少女は土の中から出てきたのである。

 まともではない。

 見た目は普通の少女だが、中身まで普通とは限らないではないか。慌てて身を隠す。


「ん……ここは?」


 ぼんやりとあたりを見渡す少女。

 ばっちりと目が合う。

 隠れているはずななのになぜ目が合うのか。


「ち、ちょっと! わたし裸じゃない! なんで? なんで!?」

「しゃ、しゃべった……」


 少なくとも今気づくことではないなと、自分で思う。


「ちょっと! そこにいるボク!」

「僕のこと?」

「そう、君のことよ。子供のくせに大人に手をかけるなんて、なんて子かしら。親の顔が見てみたいものね」


 見たところそこまで年は離れていないように思えるが、大人らしい。


「わたしには子供がいるの。こんな格好じゃ、なにかあったらだめじゃない。っていうかあっつい! 火の加減を考えなさいよ!」

「ひぃっ」


 雪を抱えてきて火にかける。

 すぐに火は収まった。


「ボク、自分がなにをしたかわかってる?」


 火を消しました。

 とでも言えば殴られてしまいそうだった。


「い、いえ。ただ人助けをしたつもりで……倒れてたし」

「わたしが倒れてたの? 裸で?」

「そうです」


 何度も頷く。

 断じて脱がしたわけではない。


「あのね、そんなわけないで……」


 なにか思い当たることでもあるのか、彼女はそこで言葉を止めた。

 ぶつぶつとなにかを言っている。


「わたしなにをしてたんだろう。子供がいた……そうよ。子供がいて、あと少しで産まれる頃だったわ」


 彼女は自分の腹部を撫でる。

 そこにはもちろん、彼女が望んでいるものはない。


「なんだか変よ。自分の体が自分のものじゃないみたいな――」


 自分の体を改めてみて、彼女は言葉を失った。


「嘘よ……わたしもう30になるところだったのに……」


 あたふたとする少女を見つめ、どう見ても30には見えない。


「僕には10代に見えますよ。同じ年くらいだと思ってたくらいです」

「ほ、ほほ。ほほほほほ、ほほ」


 急に笑い声を上げ始める少女は、まるで悪魔のようだった。


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