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火をつけしばらくしていると、彼女の体に変化が起き始めた。
皮膚がさらに青みがかり、ますます血の気が引いていくようだった。
まるで火をつけていることが、彼女には毒になっているようにすら思える。
とはいっても、彼女の体は冷え切っていた。
脈はまだあるようで、死んではいない。
「おーい。死んだか?」
脈は確認したのにその呼びかけはいかがなものか。
「う……」
「お。どうやら無事――はっ!」
思い出してみればこの少女は土の中から出てきたのである。
まともではない。
見た目は普通の少女だが、中身まで普通とは限らないではないか。慌てて身を隠す。
「ん……ここは?」
ぼんやりとあたりを見渡す少女。
ばっちりと目が合う。
隠れているはずななのになぜ目が合うのか。
「ち、ちょっと! わたし裸じゃない! なんで? なんで!?」
「しゃ、しゃべった……」
少なくとも今気づくことではないなと、自分で思う。
「ちょっと! そこにいるボク!」
「僕のこと?」
「そう、君のことよ。子供のくせに大人に手をかけるなんて、なんて子かしら。親の顔が見てみたいものね」
見たところそこまで年は離れていないように思えるが、大人らしい。
「わたしには子供がいるの。こんな格好じゃ、なにかあったらだめじゃない。っていうかあっつい! 火の加減を考えなさいよ!」
「ひぃっ」
雪を抱えてきて火にかける。
すぐに火は収まった。
「ボク、自分がなにをしたかわかってる?」
火を消しました。
とでも言えば殴られてしまいそうだった。
「い、いえ。ただ人助けをしたつもりで……倒れてたし」
「わたしが倒れてたの? 裸で?」
「そうです」
何度も頷く。
断じて脱がしたわけではない。
「あのね、そんなわけないで……」
なにか思い当たることでもあるのか、彼女はそこで言葉を止めた。
ぶつぶつとなにかを言っている。
「わたしなにをしてたんだろう。子供がいた……そうよ。子供がいて、あと少しで産まれる頃だったわ」
彼女は自分の腹部を撫でる。
そこにはもちろん、彼女が望んでいるものはない。
「なんだか変よ。自分の体が自分のものじゃないみたいな――」
自分の体を改めてみて、彼女は言葉を失った。
「嘘よ……わたしもう30になるところだったのに……」
あたふたとする少女を見つめ、どう見ても30には見えない。
「僕には10代に見えますよ。同じ年くらいだと思ってたくらいです」
「ほ、ほほ。ほほほほほ、ほほ」
急に笑い声を上げ始める少女は、まるで悪魔のようだった。




