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「夢ね」
散々笑った後に、彼女はそう言った。
「お腹にいた子供が消えるし、若返ってるし――夢じゃなかったらおかしいわよ、ね」
「……」
母を殺したことが夢なのであれば、自分にとっては幸せなことだがそれはないだろう。
彼女にとってそれでいいのなら、僕からなにか言うことはない。
「で、ボクの名前は?」
「ノゾムです」
「わたしは琴子。そうね、琴子お姉ちゃんって呼んで」
見た目は下手をすれば僕より年下だというのに、それは妙に抵抗のあることだった。
「中身は30歳? つまり中身は老けている」
「見た目も中身もいまはぴちぴちなの!」
「ならお姉ちゃんと呼ぶのは変な話だと思うんですよ」
「それもそうね。特別に琴子ちゃんでいいわ」
妥協点としてはそんなところか。
と、彼女の身なりを思い出す。
寒くはないのだろうか。
「僕の服がいくつかあるけど、着ます?」
「はやく寄越して」
服を奪われ、毛布を顔にぶつけられて視界を奪われているうちに、彼女は着替えを終えていた。
少し大きいようだが、どうやら動きにくいほどではないようである。
「僕はこれからいくところがあるけれど、琴子ちゃんはどうします?」
「ついていくわ。どうせ夢なんだし、すぐ覚めるでしょう」
「そ、そうですか」
このまま置いていきたかったところである。
予備のスーツも渡して、外に出る。
ちょっとした寄り道をしてしまったが、目的地は変わらない。
「さあ、いくわよ。案内しなさい」
「う、うん」
一人旅の方がよかったと、やはりそんなことを思うのだった。




