No,7 治療
母様に頼まれて王都で買い物をしていると突然、女性の叫び声が街に響く。
そちらを見ると、膝を着き倒れる女性が居た。
「大丈夫ですか!?」
「え、えぇ。でも、皆の物が...」
成程。さしずめ、窃盗か。
念話テレパシーの応用で窃盗犯の心の声を探る。
《索敵》
(これで妹を...)
こいつ、妹が売られてるのか。
《移動》
移動魔法で正面に立つ。
「お前、妹が売られてんだな。」
「な...」
「だが、それで他人を落としちゃあだめだろ!」
《拘禁》
オリジナルの魔法で拘束する。
「ぐあ!」
「冷静になったか?」
「貴様に何がわかる!」
「僕にはお前の痛みは分からない。だが、お前とは違う痛みを知っている。これで足りるか?」
「ど...どういう事だ!」
――ドサ!――
「お前の盗んだ物、お前の妹を買う金額。その金貨30枚じゃ足りないか?」
僕は返事を待たず、盗まれた荷物を取り戻る。
「中の物は大丈夫ですか?」
そう言い、盗まれた荷物を持ち主に返す。
「えぇ、無事よ。ありがとう。」
見ると女性は怪我をしているようだった。
治しておこう。
《治癒》
「え...! 傷が...君がやったの?」
「え...はい。そうですけど...」
「君、うちで働く気ない!?」
いきなりの押しにびっくりする。
「働くも何もあなたの事を知らないんですけど。」
「あ! 失礼。私はギルド提携の診療所をやってる、ベルフォント・グレイシアス。貴方の固有魔法は治癒魔法ヒールなのね!」
「是非うちで働かない!?」
す...凄く熱心だなこの人。
然し、僕も今のうちに就職先候補を持っておけるのは嬉しい。
「こちらからもお受けしたいです!」
―――――
始めての診療所出勤日。
正直、凄く暇だ。くーは薬品の匂いで来れないし。
――カランカラン――
お、早速の仕事かな?
「医者は居るか?!!」
これは予想以上だ。足が吹き飛んだ患者と頭が欠けている患者は流石に...
「居ますよ! 取り敢えず2人とも横になって。」
急患用の病室に2人を運び、同時に処置を始める。
消毒代わりの神聖魔法で傷を滅菌し、輸血と同時に治癒魔法を行う。
「ふぅ。終わり。」
「す...凄い! 貴方何者ですか!?」
「ただの医者志望ですよ?」
「あ、大した事してないのでお代は銀貨3枚で良いですよ。」
「こんな凄い治療で銀貨3枚?! 王宮でも受けられない治療だぞ!」
え...まぁ、今回に関しては自分でも無茶したのは自覚してる。
なにせ、無くなった足を生やしたからな。
そんな事を考えていると、鎧を身にまとった足が生えた方の患者さんが起き上がった。
「は...生えている! 君か? 俺の足を生やしたのは。」
「そうですけど...って、動いちゃダメですよ! 無理やり足生やしたんですから!」
「そ、そうだったのか。是非、お礼をさせてくれ。」
そう言って1枚の巻かれた羊皮紙を渡された。
なになに?
〜〜〜〜〜
如何様な状態出会っても第2王子ユーズヴェリアを救命した。
それを国王自ら礼し、貴殿を王宮へ招待しよう。
〜〜〜〜〜
この人...王子だったの!?
...ま、まぁ病状を見る体で招待を受ければ自然ではあるか。一般人が招待されたら周りから何されるか分かったものじゃないし。
「取り敢えず王宮まで送りますよ。」
―――――
午後、学校も診療所のシフトも無いから自宅の庭でゆっくりしている。
そういえば、最近魔術研究できてなかったな。
紅茶を飲みながら直近のカルテを眺める。
臓器不全系の病気が多いな。
壁の向こうを見る魔法...
微量な魔力を全方位に放出し、反射時間で空間を測る。
「できた!」
この魔法は...透視魔法と名付けよう。
・解説
この国の通貨は「ギラ」と呼ばれている。
10ギラ=銅貨1枚 (10ギラ)
銅貨10枚=銀貨1枚 (100ギラ)
銀貨10枚=金貨1枚 (1000ギラ)




