【第85話】帰路 その1
「んで ・・・?」
…。
「んでじゃないわよ もう ・・・・ あんだけ期待されてこれかい!」」
「いたっ!」」
すぐそばを歩くリンデルが思いっきりパインの腰を殴っていた。
頭を悩ませたがとりあえず、振り込まれたお金を携帯で確認することとなる。
ぽちぽちとな。
「「ちょ ・・・ なんだこれ ・・・」」
振り込まれた金額はパインがいつも見てきた数字の桁が3つ上がっていた。
隣の彼女も相当額が振り込まれているのかニヤニヤを止めるのに必死な様子であった。
「ねぇ リンデル これ 家買えるんじゃない?」
あまりの額に彼女にそう尋ねてみた。
「はぁ? 馬鹿じゃないの? 見せてみなさいよ!」
…。
「「はぁああああ!?」」
「なんであんたこんなに入ってるのよ おかしいでしょ!」
とりあえず彼女のニヤニヤを止めるのには成功したらしい。
「ん~もう! これからは全部あんたの奢りね!」
「いいよ」
「だってそうでしょ アタシのが頑張ったのに ・・・・ え?」
「いいよ別に この金で買えるものだったら ・・・」
「そ そう ね ・・・・」
しばらく沈黙させるのにも成功していた。
そもそもこの金は準備させるためのものであろう、何か贅沢する暇さえ自分にないのはもう分かっていた。
(アッシュだもんな ・・・)
エゾマから聞かされた話が真実であれば、いやおそらく真実だ。自分とアッシュの出会いから、もうすでに別の選択肢はなかった。頭がずきずきと痛む。
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結局、車の販売店に赴くことになった。
(あれっ?)
店の受付のお姉さんにIDカードを渡すと、入ってきた時とは別の表情になっていたのに気が付いた。カードになにか仕掛けがなされているようだった。
「うちのお店ですと冒険者用のバイクはこれらですね ・・・・ どうぞ」
特に何がいいとか無かったのでリンデルに選んでもらった。
「これならあんたのその刀とあたしの銃も仕舞えるわね ・・・・ ダサいけど ・・・・」
バイクに荷台が付いている時点でそれは諦めるしかないだろと心の中でつっこんでみた。
「これでお願いします あと 今日使えます?」
そう言うとお姉さんは軽く慌てていたが、大丈夫ですと笑顔を示した。
「少々お時間いただけますか? ・・・・ ええと3時間ほど ・・・・」
そう言われリンデルにどうか聞くと彼女は首を縦に振っていた。
「では 用意ができましたら ご連絡差し上げます」
そう言われ店を後にした。
今までにあんな丁寧な接客を受けたことが無かったので、変に足が浮いてしまった。
販売員ほぼ全員に送り出され、店を後にする。
…。
「全然残るね ・・・」
「そりゃそうでしょ ・・・・」
「ご飯と あとあんたの服買いにいきましょ」
ああと思い、このアッシュに買ってもらったパーカーを見る。リンデルが放った弾で破れはしていたものの気に入っている。
「別に変えなくても ・・・」
「嫌なの あたしが ・・・・」
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バイクの待ち時間を利用して少し高めのショップに2人で足を運んだ。パインは厚手のジャケットとブーツを、そしてリンデルは。
「え ・・・」
彼女もパインの服とほぼ同じデザインのジャケットとパンツ、ブーツを買っていた。
「いいじゃないの 別に ・・・・」
どういう理由かは聞かなかったが、急に男っぽい服装を選んでいた。
牛の皮で出来たジャケットは着心地が非常によく、香りも何か施されているようでいい匂いであった。ジャケット、ブーツともに茶色。リンデルのは上下黒でブーツだけ白かった。
急に大人びた服装だが、鏡を見ると似合っているように思えた。
彼女もセンス良く履きこなしていたが少し近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
ただ、まだここナンテコッタイで着るには暑く、バイクに乗るまでパーカーも脱いでTシャツ姿でいた。
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その後ファミレスに足を運んだが、隣にいる近寄りがたい雰囲気のリンデルが周囲から目線を食らっていた。
「雰囲気変わり過ぎじゃない?」
そう口にするも「そぉ?」としか言わなかった。一体何があったのかパインにはわかるはずもない。
…。
「パイン様 大変お待たせいたしました いってらっしゃいませ!」
車の販売店まで戻り、購入手続きが済んだ。
2人でバイクにまたがる。少し暑かったが、買ったジャケットを着た。まだ肌に馴染んでいなかったが、陽射しを浴びよく輝いていた。
新車からは燃料の匂いが鼻に入ってくる。黒のボディーに小さく銀のラインが入った、中々にいかつい代物であった。
オーバーオール姿の女性が選ぶバイクとは到底思えない。
「あたしもあんたも変わったのよ ・・・・」
それにパインは空答えをし、目的地まで走らせることになった。




