【第82話】2章 おまけ
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深夜2時。
この時間は誰も起きていない事を私は知っている。
(あの男以外は ・・・・)
討伐の後、騒ぐだけ騒いだ後のこの船は静かそのものだった。リンデルは服を着替え、冒険者用の装備をきちんと準備する。ミグーナも寝息をかいていた。
部屋のドアを静かに開け、暗い廊下を足音を立てずに通っていく。階段を上がり、甲板に着く。
(あの後も ・・・・ あいつは1倍働いていた ・・・・)
甲板はもうすでにキレイになっていた。所々修理する箇所は残しているとはいえ、ペースが異常に早い。
(あんたの仕事はもう終わってるのよ ・・・・ ?)
思わずため息が口から出てしまった。
もちろん私も見張りは続けたけど、正直気が抜けていたわ。
(何発か外しちゃったもんな ・・・・)
大事には至らなかったものの、彼の働きと比べたら見劣りしている。そうも思っていた。ただ、私には大事な「仕事」が1つ残っている。
( ・・・・ )
足音を殺して見張り塔に上っていく。最上部には男がいた。彼は頭を丸めてキャップ帽をかぶっていた。私を襲った罰だ。だがそれだけで済ませるほど私は安くない。
(最初は全てを奪うつもりだったけど ・・・・)
男はこの静かな海を眺めタバコをふかしていた。
何かを考えているようだったけど、そんなことあたしには何ら関係ない。
「ねぇ」
男は振り向き、大げさにジャンプをして咥えていた物を落としてしまっていた。
「それ ・・・・ あんた吸うのね」
男は「ああ」と言いそれを拾うと火を消していた。
こちらに顔を向けていたが明らかに強張らしているのが分かった。
(それで ・・・・ いいのよ)
「準備はできてるのよね?」
その問いにも男は「ああ」とだけ静かに返してきた。
…。
2人して甲板を降り、食堂へと向かう。
男だけの食堂なのにも関わらずキレイに後片付けがされている。
ミグーナさんもそういった事には無頓着なようだった。こうして生活をすればなんとなくそれは分かる。
もちろん私も自分以外の事にわざわざ労力を使おうとは思わない。
コツコツと暗い食堂を抜け、観音開きのドアに潜る。
厨房は食堂以上に整理がされていた。
ステンレスの棚、キレイに拭かれて並べられた食器。ゴミ箱ですら中身が入っていない袋がそこに用意されていた。
(なんで ・・・・)
何かが心の中で動いているのが分かった。
男を先頭にし、食材庫まで足を運ぶ。
「これね ・・・・」
「ああ ・・・ 一応は候補を調べたつもりだ」
男はメモを取り出し、この食材庫に掛かった南京錠を開けようとする。
…。
何度か私はこうしてこの男と接触を図っていた。
正直あんな襲われ方をして、関わりたくない気持ちも勿論あったのだが。
か弱い乙女以外の部分が男を「こう」させずにはいられない。むしろそれが私が自我を保っている事なのかもしれない。
…。
「大変だったんだぞ これ調べるの ・・・」
「知らないわよ 早くして ・・・・」
何度か男がメモに書かれた数字をダイヤルに入れるが開かない。
「大丈夫なの? 今日しか時間ないわよ ・・・・」
「そうだな ・・・ 待ってくれ これが一番有力 ・・・」
男がその数字を回すとパキと南京錠が開くのが分かった。
「最初の数字とほぼ変わらないじゃないか ・・・」
男がそう独り言をいった。
どうやらその番号はサクラのレシピの基本となるソースができた日だったようだ。サクラは酔った時によく喋るのだろう。
「行くわよ ・・・・」
食材庫には漁夫やあいつらが獲った魚やらがキレイに冷蔵庫などに入っていた。
(この匂いはでも ・・・・ 隠せない様ね)
食材の匂いに、あのパインが持ち帰ってきた「龍涎香」の香りが強く交じっていた。
「あっ ・・・・」
一番奥に、みるからにこの食材庫に置くには意味をなさないクーラーボックスが置いてあるのが分かった。
腰ベルトからナイフを、ポケットからそれの一部を持ち出すために用意したジップロックを取り出す。
「それよ ・・・・ 開けてみて」
男はめんどくさそうにそれを実行に移す。
「やったぞ ・・・ うわっ すげぇ匂いだ」
「どいて!」
男を押しのけ、その中身を確認する。
「なっ ・・・・ どうゆうことよ ・・・・」
「知らねぇよ ・・・ これは俺のせいじゃねぇぞ?」
持っていたナイフとジップロックをわざと荒く仕舞った。
そこには紙きれが入っていた。
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外れ。残念でした。
これをこうして読んでいる奴は俺は居ないと信じているが。
まぁ俺の遊び心がそうさせてるんだ。気持ちがわからんでもないからな。
この中身はとっとと海に返した。
俺は止めたんだぜ?冗談じゃないよ、一生かかっても稼げない額だよこいつは。返すって言った奴は俺の半分の年の奴だ。頭の中身入ってるかと疑ったが、どうやら俺らとは違うもんが入っているらしい。
取った本人がそう言ったもんだから、そうせざるを得ないだろ。
という事です。
まぁ俺も彼を見習って、地道にやっていこうと思うよ。
お前もそのほうがもしかするといいのかもしれんぞ?
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(はぁ ・・・・? 何言ってんの この人 ・・・・)
正直腹が立った、この坊主の男に八つ当たりでもかましてやろうかとも思ったけど。
「戻るわよ ・・・・」
「へいへいお嬢さん ・・・」
見張り塔の下まで戻ってきた。どうにも腹の虫が収まらない。
「あんたの携帯 ・・・・ 電波届いてる?」
「ん? ああ さっき丁度届くようなったぞ」
「じゃあこの電話番号に連絡して 着く時間と場所教えちゃって」
「はぁ!? いいのかよそんなことして ・・・」
「むしろ ・・・・ もう ・・・・ それでいいわ」
それを聞くと男はニヤと笑っていた。
「なんだ お嬢ちゃん おめぇも反省したのか?」
「そんなんじゃないわ いいわね?」
男は「おうよ」と言い電話をかけていた。
(はぁ ・・・・)
男と別れ、こうして部屋に戻ってきた。
…。
「あんたさ ・・・・ その金どうしようってのさ」
ミグーナのその声に全身の毛が逆立った。
「え ・・・・ いや ・・・・ 外れでし」
「zzz ・・・・ zzz」
(なによ ・・・・ 焦ったじゃないの ・・・・)
おずおずと着替えて、ベッドに入った。
(どうするって ・・・・ )
不安定な心の中で彼のまっすぐ見つめる瞳だけが頭に残っていた。
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「ここが 操舵室 ・・・」
そこには私物は何も置かれていなかった。普段エゾマがその場所で仕事をしている。よく分からない計器などが置かれていた。部屋の1画に仕切りで小部屋が作られていた。
「パイン君 話があるって?」
そうエゾマが切り出す。
「わざわざすいません あのフナオーの中に入っていた物の件です」
「そう エゾマさんこいつが訳分からん事いうから俺もついてきましたよ」
サクラもこうして操舵室に足を運んでいた。
「あれをどうしたいって?」
「海に 返して欲しいです ・・・」
そう言った後数秒の間があった。
「わしは構わんぞ ・・・ だが本当にいいのか?」
…。
「はい ・・・」
「あれがあればみんな幸せになるんだぞ?冗談じゃない」
そう2人に言われる。
「自分でもよく分からないのですが ・・・ 知り合いの人の物を売るって ・・・」
またしても数秒の沈黙が訪れた。
「その知り合いはなぜおぬしに渡したんじゃ?」
「それは ・・・ 分かりません」
「エゾマさん何か言ってやってくださいよぉ ・・・」
「分かった ・・・ いいだろう しかし ・・・」
エゾマが真剣な表情になる。サクラは言葉を失って棒立ちになっていた。
「わしが捨てたことにする もうみんな見てしまったんだ ・・・ 」
「わしが責任を取る ・・・ いいな?」
皆からエゾマが集中してバッシングを食らう事を意味している。
「すいません ・・・ ありがとうございます」
「今夜 ・・・ 3人で海に帰そう ・・・ いいな?サクラ」
「じょ ・・・ 冗談じゃ ・・・ 分かりました ・・・」
その後サクラは元気を無くしたようにして操舵室を後にした。
「パイン君 君にもらったあのお茶は美味かったよ ・・・」
エゾマは前を向きながらそう自分に話しかけていた。
…。
「まだ 何かあるのか? ・・・」
エゾマの後ろ姿を見ているだけで、なんだか心が落ち着く。
「えっと ・・・ 空の時代の生き残りについて教えてくれませんか?」
彼は「ああ」と言いこの部屋の一画の部屋に案内してくれた。そこは机とベットと本棚が置かれており、人が通る隙間ほどしか空いていなかった。
「ユーシルは俺の7代前の父だ つまり先祖だよ ・・・」
なんとなくそんな気がしていたが、その先の内容はもっと「シゲキテキ」な内容であった。




