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【第79話】ユーシルと謎の老人

「ずっと ・・・ 待っておったぞ ・・・」

 ユーシルが重い口を開く。睨みつけるようでいて、どこか怯えている物凄い表情を携えて。


「んっ ・・・ いてて ・・・」

 横たわっていたサメの中から出てきた老人が体を起こし口を開く。それを見て、反射的に持っていた銛をパインは再度強く握っていた。


「ダイジョウブ コイツハ ムカシノ オレノナカマ ・・・」

 それを横からコーダンが制した。はてと頭を傾げるが、その事について彼は続きを喋らなかった。


「そなたが ・・・ 使者か 鍵を ・・・ 鍵を渡しておくれ ・・・」

 ユーシルが老人に顔を近づけ、詰め寄る。


「な ・・・ 何を言ってるんだ ・・・ 私は何も ・・・」

「「知らぬはずはないっ! 私はずっと待っておったのだ! 貴様!」」


 ユーシルは老人の肩をゆすり何度もそう聞いていた。


「オイ ユーシル ハナシテヤレ ・・・」


 コーダンが間に入るとユーシルはゆっくり肩を震わせながら後ろに下がっていった。そして背を向け、何かボソボソと喋りながら自分の部屋まで戻っていった。


「オイ チト ハライタイ アトハマカセタ パイン」

「「えっ!?」」


 コーダンが腹を押さえながら階段を降りて行った。その場にこの謎の老人と2人きりになる。


(なんで俺だけ ・・・)


…。


「ずっと真っ暗な所にいたんだ ・・・」


 すると老人がいきなり1人言を話し始める。


「なんでそんなところに居たなんて とうの昔に忘れてしまった ・・・ ただ ・・・」

「俺をこんな目に合わせた「にんげん」に対する怒りと ・・・」

「空腹だけが残ってた ・・・」

「暗い所をその感情のまま永遠に彷徨い歩いていた」

「何年も 何年も もう人間でことであることすら忘れていた ・・・」

「そしたら急に海の中に投げ出された ・・・ ああ!」」

「私はサメのようになっていたのだと思う ・・・ 無我夢中で ・・・」


( ・・・ )


「「ああ! なんてことだ!!! 何人もの命をこのわたしが!!!」」

「「あああああああ!!」」

 老人が顔に手を当て、叫んでいる。


 すると老人の周りに白く輝く靄が現れだした。

 それが老人を吸い込むかのようにさらに光り輝く。


「あなたは 一体 何者なんですか?」

 そう彼に問いかけるも、返事をしないまま老人は月を見上げていた。彼の姿が薄く透明になる。


( ・・・ !!! ・・・)


「そうか ・・・ 思い出した ・・・ これをお前さんに ・・・」

 老人が顔をこちらに向け、手を差し伸べてきた。


「 んなっ! 」

 差し伸べられた手を掴もうとした瞬間、彼の体はパッと消えて跡形もなくなってしまった。残ったのは彼の片足のサンダルだけであった。


(なんだ ・・・)


「「っつぅ!」」

 すると胸の辺りに鋭い痛みがし、何かが体の中に入り込んだような気がした。


『なぁ おまえ マユミに ・・・ 伝えてくれないか ・・・』


 どこからか知らない男の人の声が体の内側から響いてきた。

 それを何をするでもなくパインは聞いていた。


(どうゆうこと ・・・ 俺もやっぱおかしくなってるのかな ・・・)


 ユーシルやコーダンを見ていたため、自分も謎の言動や行動が支配しているのではないのかと疑い始めてしまう。


(でもまぁ 一応聞いておこう ・・・ そうだよな ・・・ うん)

 自分で自分を納得させた。すると今度は別の声が入ってくる。


『確かに ・・・・ 届けたわよ ・・・・ ありがとう ・・・・ また会いましょう』

 またあの鯨の女性の声だ。


(ううぅ ・・・ もう ・・・ 訳わかんないな)

 謎の現象が重なり、頭が重くなってくる。


「あっ ・・・」

 遠くの海でクジラの背びれが海をバシャと叩いているのが分かった。

「またね ・・・ か ・・・」

 空を見上げると風が止み、穏やかな海と星空に戻っていた。

(もういい とりあえず 疲れたわ ・・・)

 今日はここで朝を迎えよう。そう思い背を甲板に当て、海を進む船の振動を感じていた。

(心地いいな ・・・)

(はぁ ・・・ zzz)


…。

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