【第75話】航海 9日目 降臨の儀
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ピーナツ号のボート発着所に着くと船員達が群がっていた。皆珍しそうな顔をして4人の顔色を窺っていた。
リンデルが靴を履き替えるよう促したのでパインはそれに倣った。
『おい 生きてるぞ ・・・ 信じられない ・・・』
変な噂が横行しているようであった。
(そりゃ ・・・ そうか)
あんな大きな鯨に飲み込まれて無事だったなんてね。。
「ミグーナさん もう歩けますので ・・・ その ・・・ 大丈夫です」
チャーギが船員達に見られているのが恥ずかしいのかそう言っていた。
「いいの いいから ・・・・」
チャーギよりもミグーナのほうが精神的にダメージを負っているように。そうパインには思えた。
(まぁ なんとかフラグは回避できたな ・・・)
「「邪魔よ! ナスども!」」
いつの間にかリンデルが自分ら3人の先頭に立ち、船員達の群れをかき分けて歩いて行った。
(なんか いつの間にか ・・・)
彼女に対して船員達はどこかビクついているような素振りさえ見せていた。
(何か ・・・ あったんだな ・・・)
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「うぅーん パイン君以外は全員疲労困憊です ・・・ しばらくこれ飲んで休んで 部屋で寝なさい!」
「チャーギさんもこの前のお腹の傷以外は平気そうだよ ・・・ はぁ ・・・」
4人で医務室に入り、サンベルの診察を受けていた。
彼は他にも何か言いたげだったが、それを口にはしなかった。
「パイン君はちょっと特殊だね ・・・ 元気でしょ?」
「ええ ・・・ まぁ ・・・」
彼がそんなことを言ってきた。まぁ確かに元気だし、それが事実なのは確かだが、少しだけ心寂しいのは気のせいじゃない。
「頭でエネルギー使ってない分だと思いますよ ・・・・」
リンデルが軽いジョークを言う。
(相変わらず ・・・ だなぁ)
というリンデルも目の下に大きなクマを作っていた。
「多分 そうなんだと思います ・・・ あは」
パインはポリポリと頭を掻きながらそうサンベルに言ってやった。
「ほんと不思議だよ ・・・ あんまり寝ていないだろうし ・・・ 一番怪我もしてるのに ・・・」
サンベルは真面目そうな顔をして自分にそう言ってきていた。
「まぁ とりあえず3人はよく休んで ・・・ まだ 朝だけど」
ハッと気が付いた。日時を確認すると今日はナンテコッタイから出航して9日目になっていた。
そして時刻は朝の8時。
こうして今甲板にフナオーが横たわっており、コーダンの言っていた日時に丁度間に合う形になっていた。
(良かった ・・・ ん?)
『『ガヤガヤガヤ ・・・ 』』
部屋の外から漁夫たちがなにやら騒いでいる声がここまで響いていた。
「では ありがとうございました!」
4人で医務室を後にした。
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「「おい! このフナオーなんか咥えてるぞ!!! すげぇ匂いだ!! おえぇぇ!!」」
(ん ・・・ ?)
「「おら 引っ張り出すぞ!!」」
「「ちょっ!!」」
『『『 ウオオオァオオオオオーーーーーー 』』』
船上に漁夫らの歓声が上がった。
4人でその集団の前に近寄った。
「「あっ 最後 出る時引き抜いたやつです ・・・」」
『『 ・・・・・・ 』』
『『 パイン お前まじかよーーー!!』』
漁夫らがパインに近寄り騒ぎ立てる。
(なんぞ? ・・・)
あの時必死になって引っこ抜いたのをたまたまこのフナオーが口に咥えていたようだ。
ただ、あの時は光輝いてキレイだったのに今はくすんだ緑白色をしていた。直径40センチで長さ1mほどの円柱型である。
それに加えて物凄い匂いがしていた。
「おい ・・・ パインこれ ・・・ でかすぎる ・・・ この船2つくらい買えるぞ 冗談じゃねぇ ・・・」
「「なになになになに!!!!」」
急に自分の隣に居たリンデルが、サクラのその言葉を聞いた後、目を輝かせて勢いよく前進していた。
(疲れているんじゃなかったのか ・・・)
リンデルの登場により漁夫達が一歩下がっていた。
「龍涎香 ・・・ じゃな」
いつの間にやらその場にいたエゾマがそう口にしていた。
「「ねぇ! これってパインが取ったってことよね!? ねぇ!」」
「後にしましょう ・・・・ リンデル ・・・・ 寝るのよ ・・・・」
変にテンションが上がったリンデルをどうにかミグーナが取り押さえていた。
『『パインが取ったのよ ねぇ?!!』』
ミグーナはこっちを向いたまま血相を変えたリンデルを牽引して階段を降りて行った。
「「 ゴホンッ とりあえず それは厨房にしまっておいてくれサクラ ・・・ 頼む」」
「「よろしいかな? パイン君」」
エゾマがそう自分に言ってくる。
「あっ はい よろしくお願いします!」
なぜかエゾマが少しめんどくさそうな表情を作っていた。
…。
その後サクラと一緒にあの石を厨房まで持っていき、大きなクーラーボックスにしまった。それを食料庫の一画の鍵がかかった部屋に押し込んだ。
「悪いが企業秘密だからこの先は俺1人で持って行かせてくれ ・・・」
(こんなところに扉なんてあったのか ・・・)
それを見届けた後に着替えを済ませる。
厨房から出た後のこの船の廊下が、あの鯨の中に居た時と同じような香りになっていることに気が付いた。
(ふぅ ・・・ 行くか ・・・)
一息つき、甲板に向かうことにした。
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「「そうじゃ それを取り出せ! ! 」」
階段を上がりきるとどうやらユーシルらしき人の声が耳に入ってきた。
甲板では漁夫らが彼の指示を仰いでフナオーを解体しているようであった。
ユーシルの後ろにコーダンが立ち、腕を組んで仁王立ちを披露している。
ユーシルは血相を変えてフナオーを見つめていた。
(サクラさんがああ言うのも ・・・ 分かるかも ・・・)
変てこな光景に思わずパインは首を傾げてしまった。空を見上げると白い鳥が円を描いて飛んでいるのが分かった。
(なんか ・・・ 変だな ・・・)
遠くの空だからよく見えていないのかもしれないが、翼をはためかせていないような気がした。まるで人工物のようにただ浮いて流れているようにも見えてしまった。その中に魔獣の姿は確認できなかった。
ユーシルの傍にバケツが用意されており、その中に赤黒い液体が入っていた。何かと近くの漁夫に聞くとどうやらこのフナオーから出た血だと話してくれた。自分を助けてくれた彼は体を大きく引き裂かれ、様々な色の臓器を大衆に広げていた。そしてその中の中央に位置する大きく膨らんだ白く輝く臓器が目に飛び込んできた。
(あれが ・・・)
どうやらそれは浮袋のようであった。アッシュのいう玉とはこれのことを指しているのだと思う事にした。
コーダンとユーシルがおずおずと大き目の刷毛を手にし、あのバケツの中の血を浸している。そして、フナオーを中心にして大きな円を描き始めた。
…。
『『グルルル ギギ グルルル グルルルル』』
上空から不気味な鳴き声がしてくる。
『『『グルルル ギギ グルルル グルルルル』』』
次第にその声が大きくなっていく。
この光景を前にして大部分の漁夫らが顔を下にして退散していった。
円と謎の模様を描き終えた2人は、今度はフナオーに近づき彼の臓器を手でまさぐりだした。
『ベチュチュ ビチャチャ』
嫌な音を上げ、彼の浮袋をコーダンとユーシルで空に掲げていた。
『『『グルルル! ギギ グルルル グルルルル!』』』
空から物凄い勢いで鳥たちが掲げている浮袋を啄みだした。
『『ガッ ガサササッ ガサガサガサ!! ッ!』』
顔の前に手を当てずにはいられないほどの鳥の大群がそれに群がっている。
(ん~~~っ ・・・)
1分ほどだろうか。
その光景が次第に止んでいく。
鳥たちが去るとコーダンとユーシルの手に白いそれは跡形も無くなっていた。
羽毛と血に覆われた彼らの顔は無表情でいてとにかく不気味であった。
(あれ ・・・)
鳥たちはどこへ行ったのやら、空を見上げてもそれらしき存在は確認できなかった。
雲1つない青空がこの儀式をさらに不気味に仕立て上げていた。
…。
「ふぅ 終わったな ・・・ すまんねパイン」
儀式の跡片付けを漁夫らと一緒に行った。漁夫は妙にパインに対して優しくなっていた。
そんな声の中、パインはあのフナオーに感謝の念を伝えるべく精一杯彼をきれいにしてやった。
…。
「「おーーーーーい!! なんか船がこっち来てるぞー!!」」
見張り塔の上から1人の漁夫がそう叫んでいた。
彼の指さす方角を見ると、あのボートの2周りほど大きなクルージングが確かにここにやってきているようであった。
(あ ・・・)
パインはしばらくそれを見ていると、どうやら知っている長身の男と見知らぬ女性がそこに居るようであった。




