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【第73話】金木犀の香りの中で その2

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「「パイン 起きなさーい!! ご飯できたわよ」」

『むにゃ ・・・』

「「パイーン ! 朝ごはんできたわよー! 学校遅れるわよー!」」


(ああ そうだ 学校に行かないと えっとぉ ・・・)


 自分の部屋のドアを開け階段を降りる。


「もう時間ないわよ ・・・ はやく食べて ・・・ 支度しなさい」

 リビングで自分と似た顔の見慣れた女性が笑顔で待っていた。彼女はエプロン姿で自分を迎えてくれていた。


「う うん ・・・」

「宿題はちゃんとしたの!?」

「「あっ!!! 忘れてた!!」」


「はぁ ・・・ ? 寝ぼけてんじゃねぇぞ? とっととこれ食えよ」

 アッシュがにやりと笑い、丸太椅子の上に置かれたカブトガニに彼の短剣をグサと突き刺していた。


「「うわぁぁ!!! ・・・ 」」


--------------------------------------


「「おい!!! パイン起きろ!! おい!!」」

 目を覚ますとチャーギが焦った様子で自分を起こしにかかっていた。


「「うわぁあああああ!!! アチャ!」」

 あの甲殻類の獣がボートの周りに群がり、パイン達を襲いにかかってきていた。既に何体かチャーギが吹き飛ばしてくれたのだろう、自分のダイバースーツに細かい奴らの脚が自分を挟んだままぶら下がっていた。


「「アチャチャチャチャチャチャ!!!!」」

「「ホラホララホラ!!!!!」」


 寝起きドッキリよろしく。2人してなんとか捌いてやった。


…。


「で? このまま進んでいいのか? ・・・」

 少し元気になったチャーギがそう話しかけてくる。

「と 思います ・・・」


 辺りは次第に狭くなってきていた。

 天井には緑色に不気味に光る石のような物が点在し、このぬるっとした大地は次第にオレンジのそれが少なくなってきていた。


「ん~ お前を信用してこのまま進んでいいのやら ・・・」

 チャーギが濡れた髪をうざったそうに掻きむしっていた。

『大丈夫よ もう少し ・・・・』

「大丈夫 だそうですよ? ・・・」

 チャーギはパインのそれには答えずにフナオー付きのロープを引っ張っていた。


…。


「お前さ どうしてこんなことしてんだ? ・・・」

 いきなりそう聞くチャーギ。

「え? ・・・ っと」


 ここの所、そんなことまったくパインは考えていなかったのでその問いに間ができてしまう。


(なんだろう ・・・ 「なんとなく」とか言ってしまって良いのか ・・・)


「自分でもよくわからなくて ・・・ 気が付いたら こうなってしまってます ・・・」

 そう答えるしか今の彼にはできななかった。


「そんなもんか ・・・ いや ・・・・ うーん」

 チャーギも何故か考え込んでしまい、この会話は続かなかった。


…。


「行き止まり ・・・ のようだが ・・・ なんかいるぞ ・・・ 先があるのか? ・・・」

 チャーギが進む足を止め、そう口にする。


 辺りは自分のアパートの部屋ほどまで狭くなりいよいよフナオーの体をどうにかしないと、と思い始めた所だ。


 彼はロープを下に降ろし、行く先を指さした。

 自分もロープを降ろし、それを確認する。


…。


「通してくれそうに ・・・ ないですね ・・・」


『『ギャガァアアアアアーーー!』』


 そいつも自身らの存在に気が付き4足歩行で近づいてくる。

 3mいや、尻尾を含めると5mはありそうなトカゲのような魔獣だった。痩せていて少し貧弱そうな様子も見て取れた。


「あの鳴き声 ・・・ ヘルダイバーか? ・・・ 飲まれたのか ・・・」

 言われてみると、あの魔獣の毛を抜いたらこんな見た目になるのかもと腑に落ちた。


「「まぁそんなことどうでもいい! 行くぞ!」」

「「はい!!」」


--------------------------------------


 ヘルダイバー改が襲い掛かってきた!!


…。


 ヘルダイバー改が勢いよく近づき、前脚で引っ搔いてくる!

 パインは身を屈め避けた! チャーギは銛でいなして避けた!


 チャーギの攻撃! 銛を魔獣の首元めがけて突いた!

「「ガギッン!」」

 魔獣は口ばしで銛を弾いた!


 パインの攻撃! 魔獣の腹の下まで潜り込み、格好よくアッパーをする!

 魔獣にダメージ! 魔獣の体が少しだけ浮いた。


 魔獣の攻撃! 宙に浮いた腹でパインにのしかかる!

「「うぐっ しまっ ぁ ・・・」

 パインにダメージ!! 心にもダメージ!


「「何やってんだ! 早く出てこい!」」


 魔獣の攻撃! 口ばしと前脚がチャーギに襲い掛かる!

 ミス! チャーギは全て銛でいなした。


 チャーギの攻撃! 2段突き!

 魔獣にダメージ!


「「シャラアアアア!!!」」 

 パインは魔獣の腹の下から脱出した。

 パインの攻撃!スパイク靴で後ろ足を踏みつけた!

「「がぁぁああああ!」」

 魔獣にダメージ!


 魔獣の攻撃! 尻尾でパインを薙ぎ払う!

「「ガシッ!」」

 ミス!!パインは尻尾を受け止めた。


 パインの攻撃! 尻尾をもったままジャイアントスイングをお見舞する!

 ミス! 場所が狭くできない。


「「なぁにやってんだぁ!」」


 チャーギの攻撃! チャーギは閃いた!! 回転強撃!!

 回転の遠心力を付けた銛の攻撃がさく裂する!

 魔獣に大ダメージ! 前脚が2本まるっと吹っ飛ぶ!


「「ギャーーーーーーー!!!」」


 魔獣は激高した!後ろ足で立った!


 魔獣の攻撃!いきおいよく首で薙ぎ払う!

 チャーギに大ダメージ!壁に突き飛ばされる!

「「チャーギさん!」」


 パインの会心の一撃! 再び4足歩行になった魔獣の背中によじ登り、両手で拳を作り強く振り下ろす!

『『バギィ!』』

 魔獣に大ダメージ! 

 背骨を粉砕された魔獣はその場で動きを止めた。


…。


 パイン達はヘルダイバー改との闘いに勝利した!

 チャーギは回転強撃の極意をマスターした。


--------------------------------------


「なんとか ・・・ なったな ・・・」

「「チャーギさん! 大丈夫ですか?」」

「大丈夫だ 歩ける ・・・ 」

 辛そうなチャーギに肩を貸し、この魔獣が居た先を確認する。

「これは ・・・ 」

 そこには直径2m程度の穴が壁に出来ており、その先は緑色の蛍光色でほのかに明るくなっていた。穴の先から水が染みだし、ウォータースライダーのように滑って降りれそうであった。


「ここに ・・・ 入るのか ・・・?」

 チャーギが嫌そうにそう聞いてきた。

「でも ・・・ そうするしか ・・・」

「あれを ・・・ あいつにまた世話になろう ・・・」


…。


「うし ・・・ すまん助かる」

 パインは負傷したチャーギの指示に従い、フナオーを穴に半身だけ突っ込んでいる。

「先頭をそいつにして ・・・」


『『『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオゴゴゴ』』』

 突如としてこの大地を揺るがすほどの轟音が2人の耳に入る。


『ごめん そろそろ限界 ・・・・ 急いで ・・・・』

 彼女の声もそれに続いてパインの頭の中に入ってくる。


「急がないとみたいです ・・・」

「そのようだな ・・・」

 チャーギも音で何かが起きている事に気が付いたようだ。


「「行きましょう!!」」

「「行け!!」」

 チャーギに背中を押され、フナオーとともにこの穴の中に身を投げ込んだ!


『『ジュルルルルル!!』』

 中の粘液により体が良く滑る。勢いよくその中を滑り降りていった。


 チャーギも自分のすぐ後ろに付き、滑り降りていた。


『『ゴゴゴゴゴゴゴ』』


 音の主が後ろから迫ってきた。


(ん~~~~~!!!!)

 濁った水に骨やら先ほどの魔獣の亡骸などがすぐ真上に流れ込んできていた。音の主、よくわからない液体が目につく。


『『ドン!』』

 フナオーから鈍い衝撃がパインに伝わる。先にある何かですぐそこのフナオーは詰まってしまったようだ。


 これ以上先に滑らなかった。


(まじかよっ!!! ゴッポオオオ)

 そしてついに濁った水に追いつかれてしまう。パインは息を止め、状況を把握しようとする。

(まずいまずい!)

 フナオーの先に何かあるはずだとパインは思った。


「ごぽっ よっこら ごっぽぉ!」

 パインはどうにかフナオーとこの穴の壁の間を広げながら前に進む。

(ん~~~~!!)

 息が続かない、苦しい。

 フナオーの先までどうにか這っていった。

(こいつが邪魔で〜〜〜!)

 そこに大きな緑色の石とそれに絡まった木があるのに気が付いた。


「「ぶっはーーーーーーー!」」

 息継ぎをし、急いでそれらを取り除いていく!抜けた先には空気があった。


「「こなくそーーーーーーー!!」」


『『シュポン』』 

 最後にこの緑色の石を引っこ抜いた。


『あぁん ・・・・』


『『グググ』』

 フナオーが動き出す。


『『ジュルルルルル!!』』

 勢いそのままパインは後ろ向きにこの穴の中を滑っていった。


(あっちは ・・・ まずい チャーギさん 息できてるかな ・・・)

『『チュポン! ブリブリブリ! ・・・ チュッポン!』』


--------------------------------------


 薄暗い、けれどさっきまでいた場所ではない。


(ん~~~~~!!!! 海中だ!!! 出れた!!!!)


 自分が出た穴からフナオーが勢いよく飛び出してきた。それに続いてチャーギも。しかし彼は手足をだらんと垂らし、海水になびかせていた。


(まずい! 意識がない!)

 パインは急いで泳いでチャーギを脇に抱える。


「ごぽぽっ ごぽっ ・・・ ごぽぽ!」

 2人は幸いなことにフナオーが浮きになって浮上することに成功していた。


(チャーギさん! ・・・)

 パインはフナオーから出るロープを握り、光射す海面まで登っていった。


…。

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