【第71話】リンデルと鯨 花の香と獣
少し過激な描写が入ります。閲覧注意です。
『パチっ ・・・・』
(なんだろ 明るい ・・・・)
部屋の窓から妙な角度で柔らかい光が射している。リンデルはその光で目が覚めた。
(ああ ・・・・ そうだった)
時刻は深夜2時、誰もが寝ている時間帯。彼女は早く寝すぎてしまっていた。
窓の外の景色は昨日パインを飲み込んだ奴の不気味なほど大きな半身が見える。ぬるっとしたそいつに月の光が反射してここまで届いていた。
海は静かそのもの。起きた瞬間、これが何かを討伐する旅だったことを忘れかけていた。
(ミグーナさん ちょっとこれ 貸してね ・・・・)
すっかり目が覚め、パジャマ着のまま彼女のジャケットを拝借し羽織る。
せっかくだから奴の事をしっかりと見てやる。そう思い部屋のドアを開けた。
この廊下も静まり返り、あの男どものうるさく騒ぐ声がしない。
時々「グー」だか「ガァ」だかのいびきが部屋のドアを通して私の耳に入ってくるだけ。
ヒタヒタと甲板へ続く階段を上る。
…。
「ふぅ ・・・・」
(なんて気持ちのいい夜風なんだろう ・・・)
船首の手すりから見渡す夜の海の景色はとても心が落ち着いた。船の進む音も穏やかで、隣にいるこいつまで静かな泳ぐ音を奏でている。海やこいつの背中がほぼ丸い形になった月の光を受けキラキラと輝いている。
まじまじとこいつの背中をみると鱗のようなそれが花柄に彩られていることに気が付いた。
あまりの綺麗さに一瞬だけ彼女は心を奪われた。
(忘れさせてくれたらいいのに ・・・・)
(余計なこととか ・・・・)
少し手すりに肘をつき、この黄色い鯨の先まで見下ろしてみた。
(やっぱあるよね ・・・・)
そこにはきれいな黒い瞳があった。まるでこっちを下から覗き込んでいるようにキョロキョロと動いていた。
「ねぇ あいつ パインとチャーギさん 返してよ ・・・・」
(!!)
瞳が明らかにその問いに対して答えたかのように動いたのがリンデルの目に映った。
(聞こえてる!?)
「あなた き 聞こえてるのね?」
瞳が1回、確かに瞬きをした。※まばたき
「YESなら1回 NOなら2回でどう?」
『パチッ』
(すごい! 会話できる!)
「私は男だと思う?」
『パチパチッ』
(すごい ・・・・ ちゃんと見えてるし ・・・・ 性別まで分かるんだ!)
(なら ・・・・)
「パインは生きてる?」
『パチッ』
「チャーギさんは?」
『パチッ』
(よ よかった ・・・・ なら ・・・・)
「吐き出してくれない? お願い!」
『パチパチッ』
「なんでよ ・・・・」
『 ・・・・ 』
「あんたが飲み込んだんでしょ ・・・・」
『パチッ』
「なら ・・・・ 返してよ ・・・・」
『 ・・・・ 』
『『バゴッ!!』』「「んんっ!!!!」」
リンデルは突如として襲ってきた鈍い痛みにより一瞬だけ気を失ってしまった。
…。
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『ふぁぁ~ 寝みぃ ・・・』
見張り塔に男は居た。
『おろ ・・・?』
(下から足音が ・・・ こんな時間にか?)
時計を見ると2時過ぎであった。
(あれは ・・・ リンデルちゃんだっけか ・・・)
(う~ん ・・・ やばい)
やはり島で自分も遊んでおけばよかったと少し後悔しているタイミングであった。
サクラの作るご飯は問題ないどころか美味しすぎる。この夜勤とあいつらの騒動がなければおいしい仕事。
俺にとって一番の問題は。
(「こいつ」がやばいことに なる ・・・)
今回の仕事の金はありえないほど高かった。その訳なんて知ったこっちゃなかった。とにかく金が必要だから。だが、こんな事態っちゅうか、あれだよ。
「スリバーチ」行ったら、全然割りに合わねぇってのに気づいたんだよ。あんな所業、化物つっても限度がある。
この船乗ってるの先鋭達とか言ってたけど、なんか頼りないしよ。しかもこの船は「木製」ときた。下手したら全壊とかありうるんじゃないか。
(あは 死ぬかもしれねぇんだ ・・・ ちょっとくらいいいだろ ・・・)
…。
男は甲板に立ち、リンデルの後ろ姿を見つめる。
彼はほぼ自分が獣になっていることに気が付いていなかった。
…。
(なんかブツブツ言ってやがる あの女 おかしくなったんじゃねぇか?)
靴を脱ぎ、音を隠す。
タオルとバンダナを左手に持ち、ここに来る途中で拾った木の棒を右手に持つ。
(・・・)
(ああ たまんねぇ なんだよその恰好 ・・・)
ピンク色の髪を一つ縛りで肩の下まで束ねて降ろし、寝間着のゆったりとしたパンツの下から太ももが露わになっている。
(はぁはぁ ・・・)
(すまんな ・・・)
肩まで上げたこの棒を振り下ろす。
こちらを振り向いたが、タオルとバンダナで彼女の口を押さえ縛る。
(そんな強く打っちゃいねぇ ・・・ 殺すつもりはないんよ ・・・)
女が鋭い眼光をこちらに向けているが、知ったこっちゃねぇ。彼女の両手を自分のTシャツを脱いで後ろ手にして縛ってやる。
甲板に押し倒し女に跨る。
(たまんねぇ ・・・)
「「ん~~~~~! ん!ん!」」
『大丈夫だ すぐ済む』
耳元でそう話しかけてやる。首元から女の甘い匂いがしやがった。もうどう考えても抑えられそうにない。彼女の寝間着を上にグイと押しやる。ジャケットが邪魔だったがそんなこと構ってられない。
(こんな格好で外で歩く奴も悪い ・・・)
下着から彼女の瑞々しいのが少しだけ見える。月に照らされ、洗練された女の肉体が目に映る。
そいつを上に引き上げる。
「「ん~~~~~!!!!」」
お月さん、、俺にとっちゃこっちの方がキレイだわ。張りのある若い女のそれに舌鼓を打つ。
「ガ」とそれを掴み揉んでやる。
(あああ ・・・)
顔を彼女の体に寄せ、丘になったそれの頂点の実を一口啄んでやるとする。
『『ブシャーーーーーーーーーー』』
あの鯨が潮を吹きやがった。あはは。
(・・・・・・)
暴れまわる脚の中に手を滑りこませる。鍛えられた尻の触感とそれを締める布の感触がたまらない。
『『ガッ!!!!!!』』
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(迂闊だった ・・・・ 誰もいないと思ってた ・・・・)
なんなのよこいつ……。
(背後に気が付かないなんて ・・・ これで2度目)
むかつくむかつく、ガンを飛ばしてもこの獣が怯む気配はまったくない。
ここんとこずっと男に対してイラついていたのにも関わらず、こうして自分から迎え入れてしまうなんて思ってもいなかった。
ちょっと、嫌よ絶対嫌。
「「ん~~~~~~~~!」」
(・・・・ 頼みの綱は ・・・・)
(ねぇ鯨さん聞いてる? お願い! 助けて!)
そんなリンデルの願い。叶うはずもない。
『『ブシャーーーーーーーーーー』』
だが、リンデルの問いに反応してくれたかとも思える潮の音が彼女の耳に入る。
(ちょっとどこ触って もう あああ ・・・・)
『『ズガッ』』 『バタッ』
パンツの中にまで男の手が入ってきたタイミングで男がいきなり倒れた。
(助かった ・・・・ けど ・・・・)
男は目を白くして倒れていた。
後ろ手に縛っているこの男のバンダナを解く。
(こ これは ・・・・ !)
男の後頭部にパインと一緒に買ったあの「スパイク靴」がキレイに刺さっていた。
胸の下着を引き下げ、鯨の目と向き合う。
「「あなたが 助けてくれたの?」」
『パチッ』
「「 ・・・・ ありがとう!」」
気絶した男を医務室のドアの付近まで引きずった。ロッカーからロープを取り出し、これでもかとグルグル巻きに巻いてやった。まだ虫が収まらないのでパインのスパイク靴はそのまま刺したままにしてやった。
…。
(まぁ私も こんな格好見せたのが悪いもんね ・・・・)
部屋に戻りそそくさと作業着に着替え、髪を団子に縛った。
…。
「あんた 起きたのね ・・・・」
「・・・ ヴぁい ・・・」
「黙っといてやるから ・・・・ 逆にお前がこのことを言ったら殺す ・・・・」
そう言い、持っていたナイフを男にちらつかせる。
「その頭の靴は甲板歩いていたら 落ちてきた いいわね?」
「ヴぁい ・・・ ?」
よくわかってないようなので靴を引っこ抜く。
「「ヴぁあああああああああ!!!!」」
失神しかける男をビンタで起こし、それを見せる。
『ジワワ ・・・』
自身の血を見て男は漏らしてしまったようだ。
「情けない ・・・ いいわね? このことはアタシとあんただけの秘密よ ・・・」
男はコクンと静かに頷いた。
「いつでもあんたなんか ヤレル からね ・・・」
「見張りは私が今からやるから あんたは ・・・・ 日が上って医務室開くまでそこにいなさい」
「はい ・・・」
「そういえば アタシ ・・・ 車 欲しいのよね ・・・」
リンデルは男のロープを解いてやった。
…。
見張り塔からの日の出がリンデルの目に飛び込んでくる。
この航海で一番気分がいいのではないかと自分で思ってしまう。潮風の匂いまで花の香に感じてしまうほどだ。
(パインが生きてる ・・・・)
『鯨さん ・・・・ ありがとう!』
『『ブシューーーーーー』』
大きなクジラは朝日とリンデルに向って潮を吹いた。
…。
「「なんだ! どうしたんですか!!」」
下からサンベルの驚いた声が響く。
「甲板を歩いていたら ・・・」
リンデルは男のその声にクスと鼻で笑ってみた。




