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【第66話】黒い夢 螺旋

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「「 パン 」」

( ・・・・・・・・・・・・・ )


パインの夢……。


「「パン パン パ パン PAN PAN P PAN P 」」

 暗くて白い壁面が辺り一面に広がっている。所々に小窓のようなものが規則正しく並べられている。ぐるんと大きく壁面はカーブしており、巨大な建物の内側からパインはそれを見ている。見上げるとそれは果てしなく続いているようだ。


 1番上には空が1つ、グレー色に輝いていた。


 自分が立っているのはその建物の壁からつきでた階段。階段の幅は2、3人が横に並べられる程度。右手を伸ばすと建物のコンクリートを思わせる壁面に触れられる。反対側は手すりすらない。あるのはこの階段がぐるっと回った景色。筒状の建物の内側にいるようだ。空洞になったそこを見下ろすと、海のような景色があった。


「「パン パン パ パン PAN PAN P PAN P 」」

 その海はリズムよく不自然な波を打ち、暗い赤と青の不気味なグラデーションをしている。リズムに合わせ、階段を空に向け上っていく。


(おい なにしてんだ?)


 ふと気が付くと隣にリンデルがいて、少し厚手の服を着ていた。彼女は前を向き、こちらを気にする様子はない。


 上を見上げるとなにやらグレー色の空から黒い小さな塊が雨のようにシトシトと落ちてくる。右手でそれらを防ぐべく上げるもポタポタとそれらを被っていく。


 隣の彼女も同じようにそれらを被り、ダンスを踊っているようにそれを振るい落そうとしている。


(あはは ダンスダンス )


 黒い塊をよぉく見るとそれらに細長い脚が蜘蛛のように生えていた。


…。


( どこだここは ・・・)


 蛍光灯の灯がランランと輝き、目の前に鏡がある。リンデルと自分が上半身裸で肩を寄せ合い手を洗っている。


 腕から先の手は2人とも真っ黒であった。洗面台の蛇口を捻り透明な水を流す。お互いの指を交差し合いながら、何度も何度も握り合いながら水を浴びていく。


 ぬるとした感触にお互い顔を寄せ合い、静かに笑う。


 自分達の指から落ちる水は墨汁のようになり、排水溝を時計回りで回りながら流れていく。


「「ズルズル ズルズルzル」」


 一生懸命に洗ってもそれは重油に浸かった手のようで、ぬるぬるしており綺麗に流れない。擦るスピードを上げるも辺りに黒いシブきをあげるだけで一向に良くならない。次第にお互いの顔色は悪くなり、怒りのそれへと変わっていく。


(なんでだ なんでだ なんでだなんでだ)


 鏡に映った自分らの顔は目と口以外真っ黒になっていた。


…。


 パインは生暖かい地面に身を伏せていた。


 そこから無数に生える黒くて細長い草のようなもの。それらに手を伸ばし触る。無数にあるそれは手のなかでスルスルと滑っていた。起き上がると漆黒の景色が広がり、1点の照明だけが自分とこの大地を照らしていた。


(うわぁ!!!!!)


 不安定な生暖かい大地は人の頭の上にあった。


 腹ばいになり、下を覗き込む。


 女性を後ろから抱きついて下を見た景色。鎖骨と乳房の艶めかしい景色が伺える。


 女性の体表には無数の鱗がついており、青白く輝いていた。


 それらをジロジロとじっくり観察する。


(・・・・・・・・・)


 その女性の右腕は肘の先から付いていなかった。


(!!!)


 自分の「せい」で腕を失った彼女の顔が上を向いていた。


 その目だけが、静かな怒りを訴えかけていた。


『 MATOMO 』

 口の形が変わりそうに静かに言っていた。


 その彼女の映像は複眼から見たそれのように何分割にもなる。


『 matomo 』


(やめてくれ気持ち悪い ・・・)


 逃げるようにして、リンデルのひざ元に逃げ込む。


 彼女の両太ももの暖かい感触が顔に伝わる。


(助けてくれ ・・・)

 下から彼女を覗き込むと何かを自分に言っている。


「 MATOm ・・・・」

(何だ ・・・ わからない ・・・ )

「 MATOMO 」

(待って どこに行くんだ 待ってくれ ・・・)

 リンデルの寂しそうな後ろ姿が小さくなり闇へと入っていった。

(頼む ・・・ おい ・・・ 返事をしてくれ ・・・)

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