【第62話】マユミとアッシュ その3
サンサンと太陽が照っている。ナンテコッタイとは大きく気候が異なり、肌寒い都内の公園にいる。一緒にいるのが偶然か運命なのかはさておき、この不愛想な男の言動は少し度を越しているように思えた。
「いいぞ ・・・」
なにが「いいぞ」だよと、内心イラつきながらマユミはシオナのあの箱の中の書物の写真を見ていく。
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シオナの部屋を出て、今度はその足で都内の研究施設のビルにまで連れて行かれた。
すぐ済むと言われ、居心地の良い車の中で彼の帰りを待っていた。
彼が持って帰ってきたものは白い粉の入った頑丈そうな瓶と「突起のついた幾何学模様のアクセサリー」とでも言おうか、そんな感じの代物を大事そうに胸に抱えて帰ってきた。
「悪い 待たせたな」
本心からそう言っているのかはわからないが、その後はもうすでに暗くなっていたためビジネスホテルで1泊することになった。
あたしはそのまま彼が取ってくれた部屋に直行したが、彼は受付を済ませるとまたどこかへ行ってしまった。
おそらく今こうして手渡された写真を作るためだろう。
その日は色んな事を考え、ほとんど寝れなかった。
「明日の朝 おめえの親友の本見せてやるよ」
別れ際にそう言われたが。見せてやるよって、なんでもうすでに自分の物みたいな事言うのよ。
(私が一番最初に見るべきなんじゃないの?)
そう思いつつも反論すら聞くつもりもない彼に気おされて言わずじまいであった。
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そんな流れでここで今、男と一緒にマユミはベンチに座っている。彼にプリントアウトされたそれらを手渡され、おずおずとそのページをめくっていった。
----------------シオナの手記----------------
この世は偽り、誠の世を迎える為。 我々は彼らに捧げるのだ。
ーーー 第1章 抜粋 この世は偽り ーーー
我々が住むこの大地は我々が作り上げてしまったものだ。本来あるべき姿を成してはいない。
我らが神、ウガカンダ様は本来あるべき世界からやって来なすった。
彼の神々しいお姿、太く長い毛髪、大きく見開いたその目、この世の全てを知るため長い首をお持ちである。
うんぬん……。
(ちょっと嘘でしょ ・・・・ こんな胡散臭い ・・・・)
ーーー 第3章 抜粋 異形の物達 ーーー
彼らは私たちが科学で知る外の存在である。それらは誰もが認めていること。
それすなわち「使者」である。
ウガカンダ様は彼らの存在を認めている。彼らを本来あるべき場所に返すためにウガカンダ様に献上しなくてはならない。
(・・・・)
ーーー ○○年△月××日 ーーー
今日は初めて使者様を献上することができます。私も父様に倣ってウガカンダ様に認めてもらえるようこれからも頑張りたいです。
超自然的性質を持つこの鳥はかなり大きく攻撃的。でも私たち2人でもどうにか捕獲することができました。
マユミは頼りになる存在です。あまり体力に自信がない私でもこうして「献上」を手伝ってくれました。
マユミは一生懸命に尾羽をむしっていましたが、ウガカンダ様はそこにはあまりご興味がないようですので彼女にそこは全てお譲り致しました。かなり重量はありましたが、マユミと別れたあと別の場所で献上の儀式を行いました。
ここから、せっかくですので使者様のご様子を写させていただきます。
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(うぷっ ・・・・)
解剖されたピークックの手書きの模写がその次の頁に挟まれていた。
グロテスクなその白黒の模写に軽く吐き気を催してしまった。
蝋燭とピークックの血で描かれた円模様が不気味さをさらに演出していた。
シオナは確か美術の成績がダントツで良かったのを思い出した。
ページをめくると、自分と一緒に冒険者業をしてきた経験談と「献上の儀式」のイラストがつらつらと描かれていた。
一体どこでそんなことをする暇があったのだろう。。
「こんなことする時間なんてなかったはず ・・・・」
ついぼそっとそう漏らす。
「おまえら寝た後だろ ・・・」
そう言われ軽く思い出してみる。
(・・・ !っ)
「思い当たる節があるようだな ・・・」
たしかにどこでキャンプしたのかは思い出せないが、深夜に目が覚めた時にシオナの姿が無かったのを思い出した。うっすらとした記憶だが、帰ってきた彼女から血の匂いがしたのを思い出す。そういう日であったとその時は思ったが、もしこれを描いていたとするとそっちの方が納得がつく。
そして彼女はいつも寝不足気味だった。
さらにページをめくっていくと自分達が今まで狩ってきた獣の様子やイラストが細かく描かれていた。
ーーー △△年×月〇×日 ーーー
今日は初めて4人で使者様を捕まえ、「献上」をさせていただきました。
ヒトカマキリと呼ばれる彼は非常に手ごわくマユミと2人ではとても捕獲することは難しかったと思います。
ブラナンがどうしても手伝いたいと言ってきたのですが、普段から彼には丁寧にお断りしていました。2人ですとどうしても難しいものですからお受けすることとなりました。
彼のお連れの「モチモア」という方が少し不器用そうでして、案の定使者様の鎌によって負傷しておりました。ですが、彼の陽気な心持ちが私の彼と相性が良いようでなんとか捕獲に達することができました。
せっかくですので彼の「血」も少し頂戴して、儀式を行いました。
なんとも言えない達成感でしょうか。いずれ私もウガカンダ様に会えるよう、これからも精進していきたい所存です。
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「うそ ・・・・ でしょ ・・・・」
隣で灰色髪の男はあんぱんとブラックのコーヒー缶を嗜んでいる。
それらを不味そうな顔を作りながら口に流し込んでいた。
「あいつの両親見たことあるのか?」
それに「ない」と軽く返事をした。
「あのマンションみて怪しいとか普通思わないのかねぇ ・・・」
ぼそっと刺のある言葉を言ってきた。
「国を渡り歩いていて 滅多に帰ってこないって ・・・・ そう言ってた」
そう言い訳を返すも、たしかにもう少し、いくらずっと一緒であったとはいえ彼女を疑うべきであった。
再度ページをめくりあの日の事が描かれた手記を発見する。
ーーー △〇年×〇月△〇日 ーーー
ついにウガカンダ様に会えるお日にちが決まりました。そうです、私たちが大事にしているあの日です。それをマユミ達にも手伝ってもらって、ちゃんとした儀式が行えそうです。
楽しみすぎて、どうしよう、ちょっと筆が荒くなっちゃうかもしれませんね。でも本当にこの日のために、うん、そうこの日のために頑張ってきました。
経典の中にあります、シラザメ様の降臨の儀式を父様と父様のお知り合いの方に、この私にお役目が廻ってきました!
うちのメンバーがきちんと実力をつけてきたことをきちんとお見えなさってのことでしょう。とても嬉しい。
ブラナンもきっと喜ぶはずです。彼を選んだのは彼の優秀さと、そしてこういった荒事に長けていると小さい頃から分かった上でお付き合いさせていただきました。
こんな荒んだ世でわざわざ手をつなぐなんて未だに気持ちがいいものではありませんが、それもしょうがないと割り切りました。
早くそちらの世界に行きたい!お父様ですらまだ行けてないのに、私にこんな大事な儀式をさせていただけるなんて。
幸せすぎます。
私たちの赤く染まった
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『ぐしゃっ!』
「「おいっ!!!」」
マユミは後半の文章に親友であった彼女に対しての物凄い怒りが突如として湧いてきてしまっていた。ついその紙を汗ばんだこの手で握ってしまっていた。
「それ大事な資料なんだからな!!」
自然と耳栓を付けたような感覚になっていた。
(分からなかった ・・・・ なんでなの ・・・・)
頬に涙が伝う。
…。
「本当は見せるべきではない物なんだが ・・・ これからこの国はこんな内容のニュースでいっぱいになっちまうはずだ」
アッシュは深くため息をつく。
「だからっていってはなんだが ・・・ 少し手伝うか?」
もうすでに雑用うんぬん手伝っているのだが、彼の少しきまずそうな声にほんの少しの同情の気持ちを見出した。
コクンと声が出せないので、首を縦に振ってマユミは「YES」と伝える。
「この経典が本当だとしたら まぁ 本当に起きちまってるからな 次の満月にそいつを仕留めるチャンスがくる」
「本当は俺は ・・・ 別件があるんだが ・・・ 来るか?」
アッシュはしまったと思ったもののつい、彼女にそう言ってしまう。
「はい ・・・」
都内の公園に眩しすぎるほどの日が注ぎ、人々がぞろぞろと歓談やらスポーツやらを楽しみに集まってきた。
マユミと対称的なその様子は今の彼女の目には映っていなかった。
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その頃テレビでは臨時のニュースが速報で流れていた。
ニュース速報です。
今朝、マタンレー近海を渡航中の大型の貨物船が同マタンレー港に着きました。貨物船は何物かにより襲撃を受けた模様で、死傷者多数との情報が入ってきております。この件につきまして、こちらからも現地と連絡を取っております。
現場のAさんお願いします。
「はい A です今この大型貨物船「スリバーチ」に多数の死傷者が出た模様です」
「現在 現地警察が船内に入り現場を検証しているものと思われます」
先日ナンテコッタイで起きた事件との関連性はあるのでしょうか?
「はい 詳しい内容はわからないとのことですが その可能性があると生存者の証言で分かっております」
生存者の方は何を他におっしゃっていたかわかる範囲でお伝え願います。
「はい 歩行するサメ サメのようなものを見たとおっしゃっていたそうです」
どのようにしてその方は身を安全にしたのでしょうか?
「はい そちらはまだ情報が入っておりません」
「「テレビジャマー ダメダよー 今だめー」」
はい、失礼致しました。中継は以上となりますが情報が入りましたらまたお伝えしてまいります。




