【第44話】港町に向けて
<<今朝のニュース>>
先日の朝、時間は未明のナンテコッタイ近海にて冒険者男女3名の体の一部が見つかりました。
((女性アナウンサーが記事を淡々と読み上げている。))
目撃者かつ生存者の証言では3名の生存は極めて難しいとのことです。またその目撃者は正体不明の怪物を目撃しそこから単独で逃げた模様です。
警察によりますと、その事実確認を進めるとともに当面の間、商業及び旅行での航海を「控える」よう呼びかけております。
詳しい情報が入り次第、事件の詳細をお伝えしてまいります。
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広々としたリビングの一室にTVの音が鳴り響く。それを金髪の女性が聞いていた。
「あらやだわ 海ですって ・・・ うちは行かないからいいんだけど 「控える」より「禁止」にするのが普通よねぇ」
「こんな中行く人って 冒険者とかそういう少しおつむが弱い方達よねぇ いやだわぁ ・・・」
彼女はそうTVに話しかけていた。
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((ドナドナどーなーどぉなぁ ♪))
パインはまたトラックの荷台で揺られている。
…。
「あんたなんで今スパイク履いてるのよ ・・・・」
助手席から顔をこちらに突き出し、その女性はパインに冷たい視線を送った。
リンデルの服装は青生地のオーバーオールから白生地に変わっていた。黒い長そでのTシャツは腕にピッタリと張り付き、彼女の白い手と指先が映えて見えた。彼女の奥に座るアッシュは明らかに怒った表情をこちらに向けてきていた。彼の服装はいつもほぼ一緒のようで上下ともにジーンズをはいていた。2人とも色付きのメガネを付けており明らかにガラが悪い。
(ん しまった 今履くもんじゃないのか 寝ちゃったからなぁ)
あの深緑色で荷台のついたピックアップトラックはこれでもかと磨かれ輝いている。ここまでキレイに整備されていると乗っかるのですら気を使って嫌になってくるとパインは思った。トラックに乗る2人の自分を見る視線がさらにこの旅の出発を彼を不安にさせてきていた。
パインは部屋に戻り、靴を急いで履き替え、スパイクを鞄にしまい再度ドアに鍵をかけた。
そんな慌てた彼は荷台に銛を乗せた拍子に彼の愛車の側面を「ドン」と打撃を放ってしまっていた。
頭をポリポリと物凄い表情で掻くアッシュと、それを見て必死に笑いを抑える彼女の姿がパインの目に焼き付いた。
ピカピカの車のボディーに白い線が出来上がっていた。
パインは緊張とともによいしょと荷台に上がった。
「うっわっ!」
明らかにアッシュはわざと急アクセルをかました。その反動でパインは軽く頭を打ち、二日酔いの脳みそが「ぐるん」と揺れた。
昨日ならそんなアッシュの行動に怒っていたと思うが、何故か彼は今は怒るというより緊張や不安の感情が彼を包み込んでいる。しょんぼりと何も言わずに荷台に座っていた。
…。
雨は降っていなかった。湿った空気と薄暗い空がパインの脳内で鳴り響くドナドナと絶妙にマッチしていた。
「あいつ大丈夫か?」
「知らない」
車内ではそんなパインの事はお構いなしに、陽気なBGMが鳴っている。2人はドライブを満喫しているようだ。
…。
高速道路の料金所に入る。
「お兄さん気を付けなね」
いやいや、気を付けろじゃなくて止めるべきなんじゃないのか?パインは思いつつも「はぁ」と料金所のおじさんに返事をする。
さすがに荷台に座ったままでの高速はきつかった。
強い風が自分の両脇から入ってきて体が浮くような感覚すらあった。読もうと思っていたあの雑誌も風圧でページが破けてしまいそうになり、読むのを断念した。黄色いキャッキャと叫ぶ声が車の鉄板から伝わってきたが、横を向く気にすらなれなかった。
(ああ 腰がいたい ・・・・)
SAに着き、軽い食事を3人で取ったのだが。自分が食べた暖かいうどんは、中々胃に落ちていかなかった。
…。
冷たかった風は高速で揺られること数時間の内に暖かな風へと変わっていた。遠くから見下ろしていたはずの海はもう、すぐそこに広がっていた。
曇天の海は3人の到着を静かに待っていた。
この国は島国である。あのイボアを獲ったローカス山しかり、島の北にいくほど標高が高くなる。島というより火山島に近いようだ。火山活動はここ数百年は起こってないが、いつ噴火してもおかしくはないとは言われているものの噴火することなど誰も考えていない。
海風に吹かれること1、2時間か、なんとかパインは調子を戻してきた。雑誌を読む術を見出しそれを行っている。高速を降りることでさらに読みやすくなった。もう彼は料金所で一々人に気を使わない事にした。
(この人らは危険行為に鈍感なんだ)
スパイク靴はフナオーに跨る時に履くようであった。スパイクが彼の背中の肉に食い込み、着地や銛を刺すうえで踏ん張るのに最適だそうだ。
(そういうことか ・・・・・・ つか跨るって)※またがる
フナオーの大きさはかなり個体差があるようで小さいもので3m、大きいもので10mを超えるものもいるそう。リンデルと一緒に行った武器屋では詳しく見れなかったのでそれが知れて良かった。
それを狩る事はベテラン冒険者の登竜門のようなものであるそうだ。
彼の討伐証明は浮袋で、大きいほど報酬が良いそうだ。最大級の浮袋を獲ることができれば、まる一年働かずにいられるくらいのお金になるそうだ。しかし、まだ駆け出しの彼がそれをやるのはどう考えても早すぎる。まぁアッシュが居ればなんとかなるはずだと勝手にそう思っているパインがいた。
そんな彼の甘い考えを察したのか、街中の車が居ないところで車のブレーキとアクセルを繰り返すアッシュ。
『ズガッ』『ドンッ』
最初は雑誌を読みながらアッシュの嫌がらせに対してパインは笑っていたが、最終的に車を止めた急ブレーキに彼の煮えくり返ったものが口から出ていた。
「「いい加減にしてください!!」」
リンデルの笑い声とアッシュの声が白い街に響いていた。
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ここ「ナンテコッタイ」という港町。
白を基調とした街並みの観光地とでも言おうか。肌寒い自身の町とは打って変わり、気を抜くと汗が目に入るほどに暑かった。標高が1000メートル以上のパインの町とは違う。それにしたってこの気温差は中々慣れることはない。あまり旅行などしない家族だったため、これらがさらに違和感をパインは感じてそう思っていた。
最終的に車が止まったのは、すぐそこに様々な船が見える港の近くの箱型のホテルであった。外見に合うようにそのホテルも白を基調としていたが、豪華な見た目はしていなかった。
車を止め、荷物を降ろしホテルに入りチェックインをアッシュが先導し済ませる。
アッシュが待ち合わせがあると言い3人でロビーにてそれを待つことになる。空調の荒々しい音と共に涼しい風が全身に当たる。汗がしだいに引いていった。
昨日の事が気になっていたパインはリンデルに話しかけようと思っていた。だが彼女はアッシュとべったりくっついているためそのタイミングが彼には無かった。白い服になった彼女の外見が先日よりも女性らしさを彼に感じさせ、胸の鼓動が高まっていた。
待つこと30分ほどだろうか、1人の男がホテルの玄関から自分達めがけて走ってくるのが分かった。
「どうも アッシュさん お待たせしてしまってすいまっせん はぁはぁ」
男は汗ばんだ顔の額の汗をタオルで拭きながらアッシュに話しかけていた。
センター分けの黒髪でパインより少し年上だろうか、身長は彼と同じくらいで太い眉毛にたれ目が特徴的な男だった。
「チャーギと申します コーダンはここから少し行った所で待ってますのでご案内いたします」
この男と軽い挨拶を済ませ、他の方の待つ場所まで徒歩で移動することになる。
…。
アッシュとリンデルは暑い中歩くのが嫌なのか、軽く文句を垂れていた。しかしそれとは逆にパインはこの暑い気候でも嫌な感じはしなかった。見るもの全てが新鮮で彼はキョロキョロとあたりを見回す。
植物なども今まで彼が育ってきて見てきたそれとは違い、葉が大きく緑が深いのが印象的だった。木は高く曲がりながらも一直線に伸び、太陽の光をその頂上でふんだんに浴びようと元気そう。生垣に咲く花々はピンクや赤が多く、背景の白とマッチしてとてもキレイであった。彼自身なぜかわからないが、原色の花の放つ匂いなのか、それとも葉や木の匂いなのか。それらがどことなく懐かしいと思えるような気分に彼をさせた。
(来た事が あるのか?)
4人揃ってズカズカとこの港周辺を歩き、その足で広い遊具などが置かれていない所々に木や広い花壇がある簡素な公園に入っていった。
その中で2人がこちらに手を振っている。
男女1人ずつ。その中の男はこうして遠くからでも分かるほど異様な見た目をしていた。
「大きいですね ・・・」
「色々とあいつは規格外だぞ」
歩くペースが自然に落ち、横で並んで歩いていたのが次第にアッシュの背中を見てそうするようになる。ふと横を見るとリンデルも顔が少し引きつっていた。




