【第38話】海の都 ナンテコッタイ とある冒険者の慰安旅行 その3
大きな月がランランと輝き、海に光る影を落とす。星々は月のせいで本来目立つはずのその身を小さくさせ、自分の出番を伺っている。
さざ波は上空のそれらの様子をしょうがなしに映しているといったところか。
ナンテコッタイの港はこの4人を乗せた船のすぐそこにある。だが彼らは人目につかない岩場にこの豪華なクルージングを横付けした。月夜はそれを華々しく照らし、海の波がゆりかごのように船を揺らした。
彼らが好きなバンドの曲がステレオから流れ、男女それぞれ2人がなにやら楽しそうに夜の宴を楽しんでいる。
「いやぁ こんな上手くいったことあったっけ?」
マユミがおちょくるような顔をモチモアに向ける。
「俺らの日頃の行いがいいからだろ?」
モチモアはカッコつけてた。
「あんたは違うと思うよ」
2人は静かに笑った。
ブラナンとシオナは舳先から海の夜景を眺め、話し込んでいた。こうして2人ずつに別れるのもマユミの作戦の1つだ。もうそろそろその時がくるだろうと、モチモアとマユミはそわそわと2人の様子を伺いながら話をしていた。
しかしブラナンよ。これからのブラナンの事を思うと少し気の毒にもモチモアは思っていた。見栄ではない。本当にそう思っている。俺が言うのもなんだが、ブラナンは他の女性と付き合った事はないと思う。それが悪いとか良いとかそういう話ではない。
フナオーの解体作業中の出来事だ。
『濡れ手に粟 濡れ手に粟』
そうシオナが呟いたかと思うと突如として立ち上がり、フナオーの内蔵を両手に抱え空に捧げていた。他の2人はそんなことお構いなしに作業を進めていたが俺はその光景を見ていたんだ。
するとシオナの両手めがけてカモメやらが群がってきやがって、あっという間にその両手の物をかっ攫っていったんだ。
なんだなんだとシオナの手を見るとさっきのカモメを1匹捕まえてるじゃないか。
それを捕まえた彼女の目の色とか表情がすげぇことになってたんだ。目は闇に近い真っ黒、表情は無表情を通り越して凍り付いているとでも言おうか。それを見ると俺はもう、おっかなかくってよ。
俺がそれにびびってると気が付いたのか彼女は平然とカモメを掴む手を緩めて逃がし、そして物凄い笑顔で「なぁに モッチー」って聞いてくるんだ。その笑顔も怖かったなぁ、血が所々に飛び散ってたもんだからよ。
「なんでもないよ」と適当にシラを切って作業に戻ったんだ。
正直このメンバーでシオナだけは少し苦手だったんだ。それが何なのか今になって初めて分かった気がする。今までの彼女の様子を振り返ると、なぜか解体とかそういう時にやけにはしゃいでいたように思えてきたんだ。普段あんなにクールなのにさ。キレイな花には刺があるっつーけど、ほんとそうだよなぁ。悪意とかはなさそうだけどよぉ。今まではなんだかんだ羨ましいとか、そういう嫉妬みたいな感覚をブラナンに対して持っていたが。
今回の件でなんかやっぱ彼が気の毒に思えてきたなぁ。こんな事。。後で、言えたらマユミに言ってみようとモチモアは心に決めた。
「あっ 見てモチモア キャアアア」
「うんっ?」
舳先の2人を見ると丁度ブラナンが膝をつき指輪をシオナに差し出している所だった。それを彼女は受諾しそのキレイな手に指輪がはめ込まれる。そして抱き合う2人をしばらくモチモアはボーっと見ている。
「もういいでしょっ! いこっ!」
「お おうっ!」
「「おめでとぉーーーーーー!!」」
モチモアはシャンパン片手にこの旅の主人公とヒロインの元に突撃する。
「「きゃーーーー ありがとうー」」
シオナの嬉しい悲鳴がクルージングと岩場に反響した。
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4人はシャンパンを開けた。
彼らは船の揺れる足場で踊ったり騒いだりしていた。
その光景を祝うかのように、沖で小さなクジラが迫力のあるジャンプを披露していた。
「「おぉークジラクジラ!!」」
全てが順調に終わろうとしていた……。




