【第32話】毛むくじゃらの大男
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「すまんな ・・・」
どこからともなく声がした。
全身黒い長い羽根で覆われた大きな男が浮かび上がる。顔はカラスそのもの。
パインは深い眠りについていた。これは彼が意識できない心の奥の広く深い領域でのやりとり…。
大男があの3人がかりで引っ剥がした巨大な角に手を置いている。
ボーっと景色が霞み、今度は角の主の姿が浮かび上がる。
丘のように大きな巨体をサラサラとした白い毛が覆い、体の先についた巨大な顔、長く伸びた鼻とそれに沿うように蓋をする口。そこから天を向く牙。
ただのイノシシ、イボアでもない。巨大でいて、神秘的な姿。
「急になにやら騒がしいから見に行ったんじゃ そしたら あなたでしたか ・・・」
大きな目がギョロと動き、大男を差す。
「力を 借りるぞ」
大男は角を触る手を降ろし、巨獣の視線から逃れるように背を向ける。
「ああ 我が子らは ・・・」
巨獣は男が離れていく様を悲しく、そして恨めく見つめる。
「しばらくは大丈夫だ だが奴らも動き出した ・・・ いずれ対処しよう」
男は背を向けたままポツリと言う。
「ああ なんという事だ」
白い巨獣の口が、がばと開き口からヨダレを垂れ流す。
その顔の周りに茶色い毛に覆われた長い腕が突如として無数に湧きあがり、巨獣の牙を折り、持ち去る。
さらに手を止める事なくその体全身を腕が覆い、肉を剝いでいく。
「ああ ・・・ ああ ・・・・」
巨獣の姿はその腕らによって跡形もなく消失する。
「すまん ・・・」
大男はそれを見ることなく、どこかへ消えていった。




