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斬光 ―空を止めない艦隊―  作者: 縁側×野良猫
第四章 日本防衛戦

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第二十二話 壁

夜。


海は燃えていた。


だが。


第七機動艦隊は、まだ崩れていない。


その理由は明白だった。


壁がいた。


黒海前面。


特務戦艦二隻。


重厚な艦影が、

完全に敵正面へ出ている。


敵砲火。


直撃。


爆炎。


それでも。


退かない。


巨大砲塔旋回。


斉射。


轟音。


海そのものが震える。


その後方。


重巡群。


防衛線を裂かせないよう、

横へ広がりながら砲雷撃を継続していた。


さらに。


第七機動艦隊残存艦。


損傷艦。


炎上艦。


それらもなお戦列を離れない。


穴だらけだった。


煙を吹いている。


傾いている艦もある。


それでも。


砲だけは止まらない。


岳陵艦橋。


副官。


「第三防衛線、維持しています!」


「ですが押されています!」


岳陵艦長が低く答える。


「押されるだけならまだいい。」


「崩れるな。」


短い。


だが。


その言葉だけで、

誰も下を向かなかった。


その時だった。


後方。


巨大な艦影。


第一機動艦隊。


大狼型。


本土直衛艦隊。


その存在だけで、

防衛線後方空気が違った。


古い。


重い。


巨大。


だが。


誰もが知っている。


あれが沈めば、

本当に終わる。


第一機動艦隊旗艦。


重い通信が入る。


『第七、そのまま耐えろ。』


『前は第88が開ける。』


『後ろは俺たちが支える。』


親父の声だった。


長くない。


怒鳴りもしない。


だが。


それだけで十分だった。


第七艦隊通信士が小さく笑う。


「……まだ後ろにいる。」


その瞬間。


空気が少し変わる。


崩れかけていた心が、

踏み止まる。


その時。


左翼側。


森風。


損傷艦護衛継続中。


第六機動艦隊残存艦。


炎上。


航行不能寸前。


だが。


森風は離れない。


若い艦長が低く言う。


「見捨てるな。」


「まだ生きてる。」


後方。


椿。


補給。


修理。


医療。


傷ついた艦を次々飲み込みながら、

なお機能し続けている。


その周囲を。


紡。


水源。


護衛駆逐群が防衛。


完全に艦隊の命綱だった。


そして。


さらに前方。


第88重巡群。


敵中央突破を続ける駆逐群が開けた裂け目へ、

さらに食い込んでいく。


砲撃。


雷撃。


近接砲戦。


海面そのものが爆発していた。


特務戦艦艦橋。


重い声。


「受け止めろ。」


それだけだった。


城壁だった。


敵群が押し寄せる。


ならば。


押し返すのではない。


止める。


通さない。


そのための艦だった。


その時。


通信士。


「中国航空隊より入電!」


『右翼側敵群減速確認!』


さらに。


「台湾支援艦隊、戦域合流開始!」


世界側戦力が、

ようやく繋がり始めていた。


だが。


まだ足りない。


まだ押されている。


副長が静かに言う。


「米軍到達まで、あと十二時間。」


長かった。


果てしなく長い。


だが。


持たせるしかない。


その時だった。


後方海域。


巨大な航跡。


黒海を切り裂きながら、

斬光がさらに前へ出る。


第88艦隊。


前進。


その異形艦を中心に、

防衛線そのものが押し返し始めていた。


まだ勝ってはいない。


だが。


まだ終わってもいなかった。

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