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斬光 ―空を止めない艦隊―  作者: 縁側×野良猫
第三章 ハワイ救援へ
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第十六話 追返

夜。


ハワイ海域。


燃える海が、ようやく静まり始めていた。


だが。


戦いは終わっていない。


沖合。


後退するG群。


その数が多すぎた。


艦橋。


副長が報告する。


「敵後退確認。」


「ですが完全撤退ではありません。」


艦長が笑う。


「なら背中押してやるか。」


美鈴は少しだけ考えた。


追うべきか。


守るべきか。


その沈黙を破ったのは、通信だった。


米軍側。


『こちら真珠湾司令部。』


『港湾防衛線再構築中。』


『現時点で防衛維持可能。』


つまり。


今なら追える。


艦長がニヤリと笑う。


「どうする提督。」


美鈴は海を見る。


黒煙。


炎。


沈んだ艦。


それでも。


まだ海の向こうに敵はいる。


「……追い返します。」


静かな声だった。


だが。


艦橋全員が動く。


「前衛艦隊前進。」


「航空隊再編。」


「敵艦群押し返します。」


斬光甲板。


疲弊した整備員たちが、それでも走っていた。


整備班長が怒鳴る。


「止まるな!」


「ここで止めたら全部無駄だ!」


疲労は限界。


だが。


誰も止まらない。


風間も再出撃準備をしていた。


若手エース候補が隣へ座る。


「まだ飛ぶんですか。」


風間は笑う。


「空いてるだろ。」


少女も苦笑した。


「化け物ですね。」


「お互い様だ。」


その頃。


後方。


椿では負傷者搬送が続いていた。


椿艦長が静かに歩く。


疲弊した兵たち。


油と血の匂い。


それでも彼女は止まらない。


「次、医務区画へ。」


「まだ眠らないでくださいね。」


柔らかな声。


だが。


その声に救われる者がいた。


海上。


第88機動艦隊再前進。


今度は押し返す側だった。


航空隊先行。


重巡砲撃。


駆逐艦雷撃。


前衛戦艦突撃。


艦隊全体が巨大な槍になる。


そして。


G群。


後退。


さらに後退。


だが。


完全には消えない。


観測員が震えた声を出す。


「……また消えます!」


敵艦。


海霧のように。


黒い影のように。


次々と消失していく。


残骸は少ない。


沈没ではない。


まるで。


海そのものへ戻るようだった。


観測索敵士が小さく呟く。


「……帰ってる。」


副長が振り返る。


「どこへ。」


答えはなかった。


ただ。


南東海域。


その方向だけ。


海が異様に暗かった。


そして。


夜明け前。


真珠湾防衛線。


完全維持確認。


G群後退。


戦闘終了。


通信士が静かに言った。


「……ハワイ防衛成功です。」


艦橋が静かになる。


歓声はない。


皆、疲れ切っていた。


艦長が椅子へ深く座る。


「疲れたな。」


副長も珍しく小さく息を吐いた。


美鈴だけは、まだ海を見ていた。


その先。


南東。


黒い海域。


そこに何かがある。


そんな気がしていた。

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