表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
斬光 ―空を止めない艦隊―  作者: 縁側×野良猫
第二章 模倣体
10/20

第九話 初戦 ――遭遇戦

「全航空隊、発艦。」


美鈴の命令と同時に。


巨大循環甲板が唸りを上げた。


斬光。


第三世代航空循環艦。


その真価が、初めて戦場で解放される。


飛行甲板。


第一航空隊。


第二航空隊。


第三航空隊。


第四航空隊。


戦闘機。


艦爆。


雷撃機。


全機が循環甲板上を流れるように移動していく。


整備班長が怒鳴る。


「止めるな!」


「回せ!」


「空を止めんじゃねぇ!」


整備員たちが走る。


給油。


装弾。


最終確認。


通常空母ではあり得ない速度で発艦準備が進んでいく。


風間は着艦直後、そのまま別機へ乗り換えていた。


「休憩なしかよ。」


笑う。


だがその目は鋭い。


「……いいねぇ。」


敵艦隊。


模倣体艦隊。


数、およそ十五から二十。


こちらの倍以上。


しかも。


空母型まで存在する。


艦橋。


艦長は敵方位を睨みながら笑った。


「さすがに、ちょいと厳しいですねぇ。」


その声は。


どこか楽しそうだった。


「だが。」


「燃える。」


豪放な笑み。


海の男だった。


美鈴は即座に命令を飛ばす。


「全随伴艦へ。」


「斬光防衛を最優先。」


「敵近接時、雷撃および艦砲戦へ移行。」


「各艦長判断による防御機動許可。」


通信士が即座に復唱する。


各艦へ命令が飛ぶ。


巡洋艦。


駆逐艦群。


七隻の随伴艦隊が即座に陣形を変えていく。


通常艦隊とは違う。


斬光を中心に。


流れるように左右へ散開する。


敵艦隊直線接近を避けるための流動防御陣形。


止まらない。


固定しない。


動き続ける。


副長は即座に補足命令を展開していた。


「右舷駆逐群、第二防空線形成。」


「巡洋艦は斬光前方三千維持。」


「艦隊速度同期。」


「回避運動時、斬光進路優先。」


淡々としていた。


だが速い。


各部署へ細密命令が飛んでいく。


対空防御区画。


対空防御長が静かに言う。


「全機銃群。」


「格員配置。」


低い声。


だが艦内全体へ響く。


「……近づけさせるな。」


機銃座が旋回する。


対空砲群が空を向く。


装填音。


金属音。


斬光全体が巨大要塞へ変わっていく。


機関区。


整備班長が怒鳴っていた。


「回せ回せ回せ!」


「速度落とすな!」


「ボイラー止めたらぶん殴るぞ!」


機関員たちが汗まみれで応える。


「圧力安定!」


「回転軸異常なし!」


整備班長はさらに別方向へ怒鳴る。


「お前ら!」


「航空機上がってきたら即整備だ!」


「戻した瞬間、次飛ばすぞ!」


医務室。


医務長は静かだった。


医療班員へ淡々と指示を出す。


「輸血準備。」


「止血器材展開。」


「手術区画確保。」


静かな声。


だが。


最悪を前提にしている声だった。


その頃。


外洋上空。


風間隊が敵艦隊へ向かっていた。


遠方。


模倣体艦隊。


その異様な艦影群が海上を滑っている。


波を殺しながら。


空母型。


戦艦型。


巡洋型。


全てが似ている。


だが。


どれも違う。


「……気味悪ぃな。」


風間が呟く。


その瞬間。


敵艦隊側から、再び黒い機影群が飛び出した。


迎撃機。


いや。


あれはもう、生物に近い。


滑る。


歪む。


通常航空機ではあり得ない軌道。


風間は即座に叫ぶ。


「全機散開!」


「正面取るな!」


次の瞬間。


両軍機が交錯した。


空が裂ける。


機銃火線。


爆音。


炎。


そして。


第88機動艦隊側も、ついに敵艦隊視認圏へ到達する。


観測索敵士が叫ぶ。


「敵艦隊視認!」


「距離、接近中!」


艦橋。


美鈴は前方海域を睨み続けていた。


静かな目だった。


だが。


その奥では、全てを高速で計算している。


敵数。


接近速度。


航空機数。


防空線。


被害予測。


そして。


生還率。


艦長が笑う。


「提督。」


「いよいよですな。」


美鈴は静かに答える。


「はい。」


その瞬間。


遠方海域。


最初の爆炎が上がった。


第88機動艦隊。


そして模倣体艦隊。


人類と神々の模倣体による、最初の遭遇戦が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ