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ゴミとして捨てられた聖女、魔王と手を組み王国に復讐する  作者: ふりっぷ
第二章 王都決戦編

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決戦パタゴニア 中編

決戦中編です。

ノリスが暴れ

シュルツは、いなくなります。

【ジギスムント視点】


「……埒が明かないな」


決戦開始から、すでに二時間が経過していた。


王都軍は押している。

だが、崩せない。


魔王軍は一歩も退かない。


四百の魔法陣による砲撃。

重装歩兵による突撃。

弓兵の飽和射撃。


どれを叩き込んでも――


結界は削れるだけで、消えない。


そのうえ。


ノリスが動くたびに前線が崩される。


まるで――


「生き物のようだ……」


参謀が、静かに頷いた。


「魔王城と連動しています。

 城がある限り、あの結界は消えません」


「城を攻めればどうなる」


「迂回には三時間。

 その間、魔王を自由にすれば前線が持ちません」


ジギスムントは霧の向こうの魔王城を見た。


魔王と城。


両方を敵に回すと、これほど厄介か。


「……望むところだ。数で削る」


三万の兵は伊達ではない。


いずれ、疲弊する。


【ヒマリ視点】


戦線は、膠着していたが拮抗は崩れつつあった。


元々数が圧倒的に足りていない。

――押されている。


(クルス。このまま持つ?)


『魔力供給は問題ない』


一拍。


『ただし――』


(ただし?)


『フェルマーと結界術者が疲弊し始めている』


ヒマリは隣のフェルマーを見る。


額に汗が滲み、指先がわずかに震えていた。


「フェルマー」


「問題ない」


即答だった。


問題がある人間の顔だった。


「……あと、どれくらい?」


「一時間は保つ」


一時間。


ヒマリは戦況図を見下ろす。


(それまでに第四軍を引きずり出さないと……)


そのとき。


本陣の幕が乱暴に開いた。


「報告! 右翼、押されています!」


フェルマーの視線が戦況図へ落ちた。


右翼。


シュルツの担当区域。


防衛線が、ゆっくりと後退している。


統率が、乱れていた。


「シュルツはどこだ」


伝令が、息を飲む。


「……確認できません」


フェルマーの目が細くなった。


(このタイミングで消えるか)


シュルツにも策があるのだろう。


第二軍への働きかけは、自分も考えていた。


だが。


(聞いていない)


この戦場での離脱は、予定外だ。


フェルマーは静かに言った。


「ヒマリ」


「なに」


「シュルツが消えた」


ヒマリの表情が、一瞬だけ固まる。


「……消えた?」


「右翼の小隊を連れて、だ」


沈黙。


フェルマーは続けた。


「間者だった可能性もある」


ヒマリは答えなかった。


否定もしない。


ただ、戦況図の右翼を見つめた。


(違う、と思いたい)


上層の戦いで、何度も励ましてくれた男だ。


だが。


今は――


「ノリス」


ヒマリは顔を上げた。


「右翼へ急行して」


ノリスはすでに跳んでいた。


命令が終わるより早く、黒衣が空を裂く。


右翼の前線は崩壊寸前だった。


シュルツを失った部隊が、王都軍に押し込まれている。


「情けない」


ノリスは着地と同時に魔力を解放した。


衝撃波が円形に広がる。


王都軍の前列が宙に舞い、突撃が止まる。


だが、すぐに再編が始まる。


数が多い。


一箇所を止めても、次が来る。


(守るだけでは足りない)


ノリスの両手に魔力が集まり始めた。


黒い光が圧縮されていく。


これだけの魔力を一点に集めれば――


右翼どころか、中央まで吹き飛ばせる。


「ヒマリ」


魔力回線を通じて呼ぶ。


「供給を増やして。ここで大規模魔法を撃つ」


ヒマリは、即答しなかった。


(大規模魔法)


確かに、右翼は瞬時に片付く。


だが――


「フェルマー。ノリスに全供給したら?」


「結界が三十パーセント落ちる」


「持つ?」


「それを言うか……正面だけなら、ギリギリだ」


ギリギリ。


ヒマリは目を閉じる。


(クルス)


『推奨しない』


即答だった。


『城の防衛魔力をすべて右翼へ回すことになる。

 中央と左翼は持たない』


(わかってる)


右翼が崩れれば包囲。


中央が崩れれば突破。


どちらも負けだ。


ヒマリは決断した。


「ノリス。待って」


「何を待つの!」


苛立った声が返る。


「今なら押し返せるっ」


「大規模魔法は使わせられない」


沈黙。


ノリスの魔力収束が、ゆっくりと緩む。


不本意そうに。


それでも。


「……覚えてなさいよ」


「覚えてる」


ヒマリは息を吐いた。


そのとき。


フェルマーが言った。


「ノリスを囮にしよう」


ヒマリが振り向く。


「大規模魔法の予備動作だけ見せる。

 王都軍は必ず警戒して右翼に戦力を寄せる」


「その隙に中央を締め直す」


ヒマリは頷いた。


魔力回線を開く。


「ノリス」


「なに」


「さっきの話。大規模魔法の構えだけ見せて」


一拍。


「……撃たせてくれるの?」


「構えだけ」


ノリスは鼻で笑った。


「趣味が悪いわね、あなた」


それでも、魔力が再び収束し始める。


右翼の空が黒く染まり、王都軍の威圧する。


ノリスは上空へ跳ぶ。


眼下に、王都軍の密集陣形。


結界を維持するため、魔導士が固まっている。


(慎重ね)


だが――


慎重すぎる。


それが、隙になる。


「では」


ノリスは両手を掲げた。


火球が生まれる。


一つ。


二つ。


四つ。


八つ。


十六。


増えるたびに空気が熱を帯びていく。


「受け取りなさい」


火球が降り注ぐ。


結界に弾かれ直撃は殆どないが、爆発は恐怖を生む。


土煙が上がり、

悲鳴が連鎖する。


結界もいくつかは砕ける。


だが、重層結界だ。


次の結界が、すぐ展開される。


(しぶとい)


ノリスはゆっくり地上へ降りた。


黒衣が爆煙の中で揺れる。


そして、再び魔力を収束させる。


――大規模魔法の準備を次の段階まで進める。


戦場の視線が、ノリスに集まった。

ようやく、活躍し始めたノリス。

書いている方も楽しかったです。


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